姉に問題があると思ったら、母や私にも駄目なところがあったようです。世話になった野良猫に恩返しがてら貢いだら、さらなる幸せを得られました

珠宮さくら

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美穂は、高校生活を満喫しようとしていたが、友達ができる前にあの由美の妹と言うので、先生方から色眼鏡で見られていた。


(早速、姉さん絡みか。一体、どんな高校生活送ってたんだか。ここまでだとは思わなかった。私や母さんだけでなくて、他所でも迷惑かけまくっていたってことよね。……というか、迷惑かけないで過ごせない人みたいね。どうしたら、ここまでになるの?)


在校生の先輩たちにも色々と言われたが、美穂が全く似ていないとわかってもらえるまで、あっという間のことだった。


「全然、似てないな」
「よく言われます」


(というか。あんな性格の姉妹だったら、母さんの胃に穴があきまくってるんじゃないかな。……あれ? これは、見た目のこと言ってる??)


他にも、先輩に似ていないと同じように言われて、拍子抜けな顔をされたりもした。


(やっぱり、見た目のこと……? 性格のことよね?? 見た目だとしたら、どう見られてるのかな? ちょっと、いや、かなりそれは気になるかも)


美穂は、その辺のことがわからなかったが、とりあえず性格のことと捉えることにした。姉妹なのだ。姿形で、とやかく言われても困る。そんなことで、呼び出されても美穂は何もしてはいない。


(あの性格なんだもの。人の彼氏をとったとかなら、自慢してるはず。彼氏ができても、私に自慢していたはず)


そこまで、頭を過ったが性格のことのはずと内心、違っていたらどうしようかと思っても性格の話をした。


「あの性格は、父に似たみたいです」
「お父さん? それじゃ、大変でしょうね」
「まぁ、父は私が小さい頃に亡くなってるんで、一緒に住んでる姉だけで済んでますけど。2人揃ってたら、大変だったでしょうね」
「それ、コメントしづらいわ」
「そうですね。すみません。聞かなかったことにしてください。その、姉のことで先生たちからも色々と言われたので」
「そうなの。ごめんね。苦労したんでしょうね。何かあったら、遠慮なく頼って。何もなくても、話しかけてくれていいわよ」
「ありがとうございます」


ついつい、美穂は余計なことを言ってしまったが、先輩たちには可愛がられることになったのは言うまでもない。やはり見た目もあったのかも知れないが、性格の方が全く違うことでホッとされたようだ。


(とりあえず、クラスメイトに友達がほしいかな。先生たちや先輩たちに呼ばれてるってだけで色眼鏡で見られてるみたいだし。このまま、ボッチになるのは避けたいところなんだけど)


美穂は、そんなことを内心で思いつつ、意外に姉の影響力が大きかったことに頭を抱えたくなった。妹として、付き合わされてきて嫌というほど姉の酷さは身にしみている分、それを高校でもしていただけなのだろうが、ここまでとは思っていなかった美穂は、姉がそんなことをし続けて何が楽しいのかと思って首を傾げたくなっていた。

美穂に色々していた以上に学校でやらかしていたとしたら、呼び出しが続くのも無理はないかも知れない。


(まぁ、いくら考えても理解なんてできないから考えるだけ無駄かな。やっと家から出てくれたんだから、姉さんのことなんて考えないでおこう。とりあえずは、高校に慣れてお弁当のレパートリー増やして、余裕が出たらバイトでもしよう)


そんなことがあっても、美穂は図書館へ通うことは続けていた。そこに通う理由は勉強のためではない。


「なぁ~」
「姉さんもいなくなったから、我が家に来ないかって誘いたいけど、長期休暇には戻って来るだろうし、何を言われるか想像しただけでも酷いのはわかってるから。君を悪く言われるのは許せないし、ごめんね」
「なぁぅ」


返事しながら、美穂の靴に前足を置いた。まるで、そんなの気にするなと言っているようだ。美穂は、その野良猫にだけは本音で話せていた。

美穂が本音で家族に話したことは一度もない。姉はあの調子だし、母にも本音では話していない。無意識に自慢の娘だと言ってくれる通りになろうとしているようだ。本人としては、無理しているつもりはないのだが、高校生になったとしてもまだ子供だ。これまで、ずっとしてきたこともあって、美穂は年齢を重ねるごとに母のために行動することが当たり前になりすぎていた。

小中学の時も、そうだった。友達と遊びに行くよりも家のことをやって母に喜んでほしかった。褒めてもらいたかった。それをしてもらえるなら、友達と遊べなくとも、構わないほどだった。

だから、親しい友達ができなかった。誘っても、遊べないと断る美穂と仲良くしてくれる子なんているわけがない。

そんな美穂が、野良猫に会いたくなってしまうのは、本音を気軽に話せるからに他ならなかったが、そんなことをしている自覚も美穂にはなかった。


「まぁ、君としては野良猫のままがいいって言うかもだけど。私としては、何かとこうして世話になってるからお返ししたいんだよね。君が癒してくれてなかったら、絶対に爆発してた。そんなことしてたら、母さんを困らせてた。役に立ちたいのに逆に困らせるようなことしてたらと思うと……耐えられない」


美穂は、その野良猫にそんなことを話していた。いつも、すぐに何かと返事をしてくれていたが、その時はじっと美穂の目を見つめるばかりだった。


(こんなこと話しても、やっぱり伝わってないのかな。この野良さんには、何かある気がするけど。でも、立派なアニマルセラピーだわ。セラピー料をいつか払いたいな)


それが一体何を意味しているのかが美穂にはわからなかった。ただ、まっすぐに見上げる野良さんの目は何か言いたげに見えたが、その意味がわかるのはだいぶ経ってからだった。


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