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姉の思惑とは違う方向に進むことになったせいで、地元の友達にあまり会わないようにしたかったのだろうと美穂は最初は思っていた。


(流石にあれだけ私に言っていたんだもの。高校でも、周りに言っていたに違いないわ。お弁当のことで懲りてはなかったってことよね。懲りてたら、同じことなんて繰り返してなかったはずだし)


でも、元より由美としては、合格した方の大学に通うつもりだったようだ。住む場所の検討を前もってしていたようで、あっという間に住むところを決めたのだ。


「あら、住むところ、もう決まったのね」
「母さんまで、嫌味言わないでよ」
「あんまり早いから、準備してたのかと思っただけよ」
「っ、」


滑り止めに補欠合格したと知らせが来て、1日しか経っていない。大学受験に失敗したと思っていた由美の暴れっぷりは酷かったが、補欠合格したとわかってからの巻き返しが、母や美穂が思っていたより、かなり早かったのは確かだ。


「っ、そんなことあるわけないでしょ! 私が、滑り止めに通うつもりだったわけがあるわけないじゃない! 仕方なくよ!!」
「そう。そうよね」


母が珍しく由美に嫌味なことを言っていたのをたまたま美穂は聞いていた。大学に落ちたとわかって、美穂はこれからも姉が我が家にいたままになるのかとそのことで気落ちしていたのが、補欠合格した知らせを聞いて、そっちに行くことにしてくれることをひたすら願っていた。


(補欠合格でも、合格したとこに元々行く気でいたっぽいな。姉さんのことで必死に願うなんて、するんじゃなかったかな。でも、補欠合格したってことは、合格した人たちが取りやめてくれたからよね。そっちに感謝した方が気分的にはいいかも)


その手際の良すぎる由美らしくないところから、美穂は姉がどういうつもりだったかを推理してはいたが、大体あたっているはずだ。それに母も美穂と同じことを思っていたようだ。

そのことを本人に確認する気はなかった。聞いたところで、怒鳴り散らされるだけだ。そんなことをわざわざする美穂ではない。

でも、母と姉の会話で苦笑するしかなかった。母は、姉の受験が終わった辺りから仕事が、落ち着いたのか。美穂の一般入試が近いからと家事分担を一手に引き受けてくれたことで、美穂はだいぶ余裕をもって入試ができた。

受験勉強と家事全般を1人でやっていたから、それが分担されることになって助かった。それこそ、母が全部引き受けてくれればよかったのだが、そんなことをする余裕がどうしてもないからと分担になった。

受験勉強しながら1人でこなしていたことを母は知っているはずなのに、それを軽くお礼を言いつつ、自分も忙しいのが少し緩和したけど、全部は無理だと美穂に言って家事分担をしたのだ。

普通なら、こんな時くらい半分にしないでもっと家事をこなしてほしいと言うところかも知れないが、美穂はそれを母に言うことはなかった。

その辺のことで疑問を美穂が持つことはなかった。


(姉さんがいないとゆっくりできるのは間違いないわ。滑り止めだろうとも、ギリギリでも大学に受かってくれて本当によかったわ)


姉のことが、どこでバレたのかはわからないが、思っていた方向とは違うことになった由美はまたも友達と距離を取ることにしたのは、そんなことがあったからだと思っていた。

だが、あの性格のせいで元々友達が少なかったようだ。少ないというか、一緒にいるグループと喧嘩しては、別のグループに勝手に割り込んで友達面していたため、大学に受かってよかったと心から祝福してくれる人はいなかったようだ。


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