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しおりを挟む母と美穂は猫が好きだが、由美は猫どころか動物が嫌いなため、家では動物を飼うことができずにいた。姉がいると動物の話もできないほどだ。我が家の主導権を握っているのは、母親ではなくて、由美が大きくなっていた。
それこそ、美穂がわがままを言って嫌がってるだとか。美穂が、こっちがいいと言っていると母に言うのだが、美穂はそんなことを言ってもいないことばかりを姉は熱弁してばかりいた。
言いたいことがあるのなら、美穂は姉に何か言わずに母に直接言っている。姉にそんな話をしたことがそもそもなかったのに代弁しているかのようにするのだ。それどころか、由美に聞かれてもいないことを美穂の言い分で決めているかのようにしたがるのだから、たまったものではない。
(本当に嫌になるわ。母さんは、とっくに姉さんが私にかけつけて好き勝手に言ってるのに気づいてるのに姉さんは全く気づいていないのよね)
そんな由美に母は、とやかく言うことはなかったのは、忙しくて仕方がなかったからだと思う。それと美穂がそれに文句を言わないのが大きかった気がする。それと姉に色々言っても、会話にならないと諦めているのもあったようだ。
何でも妹よりもできることを美穂にも、周りにもあの調子で自慢していた由美は、周りに自慢しているほどではないとバレているのも何のそので、相変わらず吹聴し続けていたようだ。
そんなことをして、余裕あるように見せていた姉の思っていた通りにはならなかった。大学受験に失敗したのだ。
それこそ、散々なまでに美穂の邪魔をしていたのだ。美穂の前でそんなことを頑張るくらいなら、由美の方こそ勉強を頑張るべきだったのだが、本人は余裕があると美穂に思わせたかったようなのだ。
いや、美穂だけというか。あの調子で、周りにも自分にはかなり余裕があると見せたかったようだ。クラスメイトや同学年の人たちに自分は、大学受験ごときでは、そんなに必死になることはないと見せたかったようだ。それが、余裕ぶっている間に周りの大学受験生たちと由美の間に差が開いたようだ。
必死に毎日頑張っている人とそんな人の邪魔をするのに躍起になっている人とでは差が開かないわけがない。そんなこと、美穂でなくとも簡単に想像がつくが、由美にはできなかったようだ。
(普通は、余裕だと見せて部屋で必死に勉強しているところだろうけど、由美は勉強する気がそもそもなかったみたいね。それでも、受かるって余裕はどこから来たんだか)
それか、元々高望みしすぎていたのかも知れない。由美としては、落ちたことを知られる前に家の都合で、思っていたところではないランクの低い大学に行くしかないと言いたかったのかも知れない。滑り止めにはちゃんと受かってはいた。
(確かにそっちに通う気だったら、余裕はあったかも知れないわね)
母子家庭で、妹がいるのだ。妹のためにそれなりの大学しか選べなかったことにしたかったのかも知れないが、散々に受かると言っていたところに落ちたことが由美がアクションを起こす前になぜか先に知れ渡ってしまったのだ。
それにより、滑り止めの方に通うには実家からは難しいからと家を出ることになったことに美穂は心底ホッとしていた。
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