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しおりを挟むそんなことが由美には合ったことを知らない美穂は、機嫌悪く帰って来た姉にまたもや怒鳴り散らされて大変だった。
「あんたのせいよ! あんたにお弁当なんて作らせるんじゃなかったわ!」
「……」
(別にこっちから頼んで作ったわけではないんだけど。何で怒られなきゃならないのよ)
そんなことを思っても言葉にすることはなかった。結局は、由美は全部食べて帰って来た姉に散々なことを言われた。
「明日からは、自分で作るわ」
「え?」
「頼まれたって、あんたの作ったお弁当なんて持って行かないわ」
「……」
(それは、死んでもこっちからは絶対に頼まない。頼む日なんて、そもそも来ないわよ。何で、そんな日が来ると思ってるんだか)
美穂は、言葉にしないようにしながら全力で、それはないと心の中で思っていた。
こうして、美穂がお弁当を姉のためではなくて、母のために作ったついでに姉の分を作ったのは1日で終了することになった。それは、非常にありがたいことだった。
「騒がしいわね。今度はどうしたの?」
そこに母が帰宅して、由美が怒鳴り散らすのを聞きつけて眉を顰めていた。
「美穂のせいで、散々な目に合ったのよ! 明日からは、自分でお弁当を作るわ!!」
「そう。その方がいいでしょうね」
母は、何があったかを具体的に聞くことなく、どちらが悪いのかを把握したようだ。大概いつも由美が悪いのだが、今回も詳しく聞く必要もないと思われたようだ。それこそ、激怒している時に根ほり葉ほり聞いたところで、当たり散らされるだけなのだから、会話をしようと思うはずもない。
美穂をちらっと見た母は、そんなことを言って全くその通りだと言わんばかりの由美が、ギャンギャンと騒いで、美穂と母がスルーしていると怒鳴り散らすのに疲れたのか、部屋に行ってしまった。
「美穂。大丈夫?」
「いつものことだから、平気」
「それに慣れてほしくないけど。美穂が、平気ならいいわ。それより、お弁当美味しかったわ。ありがとう」
「それは、よかった」
「お弁当作りが、1日で終わるとは思わなかったわ」
「母さんのは、作ろうか?」
「それ、とっても魅力的な提案だけど、いいわ。由美が、それを知ったら、自分の作る方のお弁当が美味しいからって、作る気になられたら困るから」
「そうだね。じゃあ、今日限定ってことでやめるわ」
「残念だけど、仕方がないわ。それより、夕食を作っちゃいましょ」
姉は、それからしばらく怒っていた。別のグループの友達と仲良くすることに躍起になり、そこでも懲りずに同じようなことをして、美穂が姉のためにお弁当を作るはめになったりもした。その都度、由美は理不尽に美穂を怒鳴りつけていたし、母からは美味しかったとお礼を言われた。
(いい加減にしてほしいわ。上手くいかないこと全部が私のせいみたいに当たられても困る。全部自分でやってるのに私にどうしろって言うのよ)
美穂は、そんなことを何度も思うことになるとは、思わなかった。姉のことで欠片も期待はしていないが、同じことを繰り返して以前のことをまるでなかったことにできる姉に何とも言えないものを感じた。
この後もそんなことが続いたが、毎日お弁当を作ることになることはなかった。何一つ学習しない人が、美穂の姉だった。
そして、そのお弁当のことで母が喜ぶのを見るのだけが、美穂の嬉しいことになっていたはずだが、ストレスがなくなることはなかった。
ストレスは全て姉がもたらしているものと思っていたが、そうではなかったことに美穂は気づいていなかった。
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