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しおりを挟む美穂の中では、普通ではなくて父親としては最悪な分類に亡くなってから父は属していた。
そんな人が夫として優秀だったとは思えない。むしろ、父方の祖父母を見ていて、美穂の想像は間違えてはいないはずだと思っていた。
(どこで、どう出会って結婚したんだか。それこそ、母さんなら、他にもっと素敵な人がいただろうに。……まぁ、結婚してくれなきゃ、私が生まれてないわけだから、どうして結婚したんだと問いつめると自分の首が絞まりそうだから聞いたことないけど)
美穂は小学校あたりから、そこが気になってしまっていた。聞きたいようで聞きたくないことが、その辺のことだった。
父方の祖父母は、物凄くわかりやすく母のことを嫌っていて、特に姑が酷かった。父の葬儀の時も、妻が出来損ないだから早死にしたんだとギャンギャンと騒ぎ立てて泣いていたのを美穂は、未だに覚えている。葬儀に来ていた人たちが、みんなドン引きしていたのも覚えている。
(思い返せば、ドン引きたくなるのも無理はないのよね)
父の死因は、過労死ではない。そんなに必死になって仕事をしているような人では、そもそもなかった。いや、本人は必死にしていた気ではいたようだが、していたのは職場の人を苛つかせて、余計な口出しをして任されている仕事を台無しにしようとしたくらいだったようだ。
やたらと出張をして家にいなかったが、それも仕事で出張ばかりだったわけではなかった。父は不倫をしていて、不倫相手の女性と旅行に行って事故にあった。
それが、不倫相手は面倒に巻き込まれたくないと事故に合った父を置いて現地解散をしたせいで、父が出張先に伝えていたところとは全然違うところで見つかることになり、連絡が来た時には息を引き取った後だった。
そこから、葬儀まで大変だったが、葬儀の最中も大変だったのは、父方の祖父母のせいだ。自分たちの息子の不倫は、妻がきちんと支えていなかったからだと言いたかったようだ。
だが、葬儀でもそんな調子でギャンギャンと騒いでいたせいで、何があったかを葬儀に来た人や来れなかった人にも知られることになったのだ。
ある意味、父がどんな人かを想像するのに父方の祖母を見ていれば、変な期待なんてできるわけがないような状態を美穂は見ることになったわけだ。
破天荒な家族は亡くなった父だけで十分だったが、父方の祖父母からしっかりと血を受け継いでいるのが、美穂の側に1人いた。
父が、将来有望だと言っていた上の娘だ。そこまで本人が実際に言っていたようだから、美穂と違って生まれた時からやたらと甘やかしていたようだ。
もっとも、甘やかしていた父のせいなのか。父方の祖父母が甘やかしたせいなのかはわからないが、上の娘、つまり美穂の姉の由美は妹がついていけない性格をしていた。できるなら関わりたくない人間が美穂にとっては由美だった。姉でなければ、程よい距離を保っていて、友達にすらならない。知り合いでもいたくない存在だ。彼女も、美穂にとっては大事な家族ではないのは確かだ。
そして、母が美穂に常々言っていた。自慢できない娘が由美だったが、姉は言われたことはないようだ。いつも、美穂だけの時に母は……。
「やっぱり自慢できるのは美穂だけね」
決して、由美が駄目だとか。娘として失格だとはっきりと言ったのを聞いたことはないが、美穂のことは自慢できると言い続けるのは絵本の読み聞かせがなくなってからも続いていた。
「美穂が、色々お手伝いしてくれるから助かるわ」
チラッとと母は由美を見た。お手伝いなんて言われてもやらないし、やれと言われてもやらないのが姉だ。言葉にしなくとも、あちらは駄目だと言わんばかりの顔をしていた。
(お母さんに色々してあげられるのは、私だけなんだ)
段々とそう思うようになるのも、その頃からだった。この頃から強く母に何かしてあげなきゃと思うようになっていた。
母に言われたからではなくて、自分からやるようになった。家事も、友達と遊びに出かけることより、家のことを率先してやるようになった。
そのたび、流石自分の娘だと褒めてくれるのが嬉しかった。疲れが隠しきれていない母にできることは、そのくらいしかないと美穂は必死になっていた。
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