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しおりを挟むマドレーヌがいなくなったことで、婚約を急いだリリアン。
彼女はランベールを自分のものにしようとして、まずはイヴォンヌの兄と婚約をした。
なぜ、そんなことを?と思うところだが、兄の婚約者となったら、イヴォンヌそっちのけで自分のみ利用で迫れば、ランベールはイヴォンヌより自分に夢中になると思っていた。
その間、婚約した方をどうするつもりなのかと思うだろう。彼女は、そのことを計算にいれていなかった。
更にリリアンは、従姉兄たちの恐ろしさを知らなかった。
なにせ、ずっと頭の中で婚約さえすれば、ランベールと婚約することになれると思っていたのだ。そんな妄想をマドレーヌが養子になってから、好き勝手に考えていたリリアンは、マドレーヌがどうなったかを知りもしなかった。
何なら、従姉兄たちが留学していることも知らなかった。自己紹介された時に気づけば良かったが、特にちゃんと聞いてはいなかったのは、ランベールと婚約しているイヴォンヌの言葉なんて大したことないと思っていたせいに他ならない。
「ちょっと、あなたの婚約者は、あっちよ」
「……知っているわ。でも、彼に話したいことがあるのよ。割って入って来ないで。あなたには、関係ないでしょ」
「っ、」
従姉は、イラッとして声をかけた。
「妹の婚約者なんだ。距離感に気をつけてくれ」
「ですが」
「それと私の従姉にそんな風に話すな」
「何か、問題でも?」
「問題しかない。従姉は、隣国の王弟殿下の息子だ」
「……え?」
「まさか、知らないなんてことないよな? 君の兄君は隣国の王女と婚約している。私の従姉は、その王女と物凄く仲がいいんだ」
「っ、」
リリアンは、そこで兄の婚約者のことを思い出した。隣国の王女で、従姉が大好きらしく、その従姉にリリアンの兄が似ているという理由で婚約したのだ。
おかしな王女がいると思っていたが、よくよく見ればリリアンの兄に雰囲気やら顔立ちが似ている。
その上、リリアンの婚約者が重度のシスコンなのも、ランベールはイヴォンヌにぞっこんなのもわかっていなかった彼女は、目も当てられないことをやらかして、自分の婚約のみならず、兄の婚約も見事ぶち壊して勘当されることになった。
王女は、従姉がお気に入りだと常々言っているイヴォンヌをライバル視してはいなかった。そんなことをしたら、従姉に嫌われるのを知っていてすることはなかった。
何なら、ランベールとイヴォンヌこそ理想だと言うので、王女はランベールのような子息を探して婚約したら、溺愛されることになり、幸せになれて流石は従姉だと思って助言の素晴らしさに勝手に感動していた。
兄の新しい婚約者は、厄介さとは無縁の令嬢が選ばれた。
従姉兄たちも、無難な相手を選んだ。
そして、イヴォンヌはというと……。
「イヴォンヌ」
「ランベール様」
結婚しても、子供が生まれても、孫が生まれても、何も変わらず相思相愛の仲だった。
そこには、絵に描いたかのように理想の詰まった2人がいた。いつ見かけても仲睦まじくしていて、この国どころか。この世界で、この2人以上の夫婦はいないかのように言われるほど、有名だった。
イヴォンヌたちの周りは、常に笑顔の人たちがいて、イヴォンヌは誰よりも幸せそうな笑顔で人生を謳歌していた。
その笑顔を見てランベールは、穏やかな顔をしていた。
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