姉の厄介さは叔母譲りでしたが、嘘のようにあっさりと私の人生からいなくなりました

珠宮さくら

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【マドレーヌ視点】

私はというと両親も、兄も、イヴォンヌの味方ばかりするのにうんざりしていた。ちょっと失敗したくらいで、謝罪しているのに部屋に閉じ込めて、外出禁止にするなんてやりすぎだ。

そんな両親より、叔母のところの養子になった方
がマシだとばかりに叔母といそいそと叔母が住んでいる隣国に行った。

叔母のお喋りに付き合うのは疲れたが、今後のためだと付き合って楽しくお喋りした。性もない自慢話ばかりだったが、適当に褒めて煽てておけば、機嫌が悪くなることはなかった。

それよりも、私はこれからのことを考えていた。叔母の夫は、王弟なのだ。それもあり、実の両親よりも、贅沢な暮らしができるとうきうきしていた。

叔母のセンスはいい。そこだけは、私も勝てないと思うくらいだ。いつかそんなセンスに勝ちたいものだ。そうこうしていると今日から、住むことになる屋敷が見えてきた。

凄く立派で、あの嫌味な従姉たちが、羨ましくて仕方がなかったが、それもおしまいだ。今日から、ここに住むのだ。養子になったのだから、義姉たちの嫌味くらい、我慢するしかない。

そんなことをあれこれ考えて、この家の養子になったのだからとそれなりに見えるように振る舞った。

だが、それはマドレーヌが思い描いていた始まり方をしなかった。

叔父がわざわざ、2人を玄関先で出迎えたのだ。それにマドレーヌは鼻を高くした。養子になったのを喜んで、出迎えてくれているものと思っていた。

何なら叔母も、そうだ。普段は絶対にしないことを夫がしていることに驚きつつ、自分に似た養子を喜んでいるものと思っていたに違いない。


「帰って来たか。お前たちは、別宅で暮らせ」
「え?」
「お前の荷物は、あっちに移してある」


叔母の夫であり、養父となったはずなのに玄関先でそう告げた。

まるで、2人を本宅に入れたくなくて、そこにいたようにしていた。


「な、何で、そわなことをなさるんですか!?」
「次に何の相談もなく問題を起こしたら、そうすると言っていたはずだ」
「そんな、問題なんて何も起こしてないのに」
「起こしていないだと? 勝手に私のサインを偽造して、お前の姪を養子にしたのにか? 離婚しても良かったんだが、養子が路頭に迷うのが可哀想だから別宅に住まわせてやるが、次に問題を起こせば、お前とは離婚するし、養子にしたのも取り消す」


そんなことを言い、よく考えて行動するように言った。

そんな約束など、マドレーヌは知らないし、関係ない。なのにどうして、こんなことをするんだとばかりに養父を見た。


「お前は実家からも絶縁されているし、そっちも戻る場所はないことを忘れるな」
「っ、」


私は養父に睨みつけられ、その威圧感に言葉が何も出て来なかった。

あれが、王弟というものなのだろう。……なんて、傲慢なんだろうか。


「マドレーヌ」
「養母様、どういうことなんですか?」
「わ、わからないわ」


わからないわけがない。先程、サインを偽造して養子にしたと言っていたのだが、私はそこをスルーした。

養子にしたが、世間体でも気にして一時的に仕方なく養子にして徐々に馴染ませるつもりなのではないかと思うことにした。

そうでなければ、養子になれはしない。


「とりあえず、別宅に入りましょう」
「養母様。こちらで、何でも買ってくれるって言ったから、着の身着のままで来たのだけど」
「それなら、大丈夫よ。流石にこの家の養子になったのに変な格好をさせるわけがないわ」
「そう、よね」


だが、部屋にはろくなものがなかった。


「何、これだけなの!?」


使用人に何を言っても、学園とこの別宅で過ごす程度になるからと新しいものを買うことも許されなかった。


「どうなっているのよ! こんなんじゃ、あの家にいた時の方が、好きなものを買ってもらえたわ!!」


養母は必死に本宅に入ろうとするが、止められて入ることは許されなかった。

そのせいで、しばらく不貞腐れて、こちらに来てから学園に行かずにいたが……。


「旦那様からの伝言をお伝えします。学園に行く気がないなら、速攻出て行け。留年することになった場合も、すぐに家から追い出すので、そのつもりで過ごせ」
「はぁ!?」
「ちなみにマドレーヌ様は、あと数回休んだだけで、出席日数が足りなくなって、自動的に留年になります」
「な、何、それ!?」
「この国の学園は、これまでのところより厳しいところです」


それを聞いて、不貞腐れながら学園に仕方なく行くことにした。


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