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しおりを挟むそれから、しばらくして、両親が帰って来た。
夜おそくに帰って来ていて、朝になって両親が帰って来ているのに姉妹は喜んだ。帰ってきたら色々と話そうとしたが、イヴォンヌは選択授業をたくさん取ったため、早く帰りたくても難しかった。
そわそわしているイヴォンヌに何があったかとランベールに聞くと両親が帰って来たと嬉しそうに話すのに久しぶりだから、挨拶したいとなり、イヴォンヌも両親がいるから大丈夫だろうとランベールと一緒に帰ることにした。
それにランベールが、ガッツポーズをしているのをイヴォンヌは見ていなかった。
できれば勉強なんてしたくないマドレーヌは、さっさと帰っていた。
そして、いつものように届いた荷物を開けていた。
「ちょっと、何をしているの!」
「え? 何って、中身を確認しているだけよ?」
母が駆け寄ってマドレーヌに怒った。使用人が、呼びに行ったようだ。
「マドレーヌ! それは、イヴォンヌに来たものじゃない。しかも、婚約者からの贈り物を先に開けるなんて、姉妹でもやっては駄目なことよ!!」
使用人たちは、うんうんと頷いていた。これで、イヴォンヌが悲しむのを見ることはないと思っていたのだが、この後が問題だった。
「は? これは、私宛てよ」
「何を言ってるのよ。ここを見なさい。名前があるじゃない」
「え? 名前??」
マドレーヌは、母の言葉にわけがわからない顔をして、名前を見た。
宛名があることすら知らなかったようだ。
「イヴォンヌ……?」
「そうだと言っているでしょ! ほら、戻しなさい。それとイヴォンヌにはちゃんと謝るのよ」
「ま、待って! ランベール様と婚約したのは、私よね?」
「……なぜ、そんなことをわざわざ聞くのよ」
「そうよね。なら、これは……」
宛名を間違えているだけだとマドレーヌは言おうとしていたようだが、母親は……。
「イヴォンヌの婚約者じゃない」
「っ、で、でも、婚約の話が来ていると言ってたわよね?」
「えぇ、イヴォンヌに来ていると話していたけど、あなたにはしていないでしょう?」
どうやら、マドレーヌは立ち聞きして自分の婚約者だと思い込んでしまっていたようだ。
それに使用人たちは、とんでもない勘違いが起こっているなと思っていた。
同時にどっかの誰かさんにそっくりだなと思っていたが、言葉にすることはなかった。
「でも、私の方が姉なのに」
「姉が、妹宛ての物を確認せずに開けるの? 子供でもしないわ。いつも、そう言っていたはずだけど?」
「っ、」
そんなことを母に言われた姉は、そこに帰って来たイヴォンヌの顔を見るなり……。
「よくも、私を騙したわね!!」
「っ、」
怒鳴り散らしてきて、イヴォンヌは大変だった。しかも、騙したと言われたのだから、わけがわからない。
母親は、イヴォンヌに贈られた物を開けた詫びをしろと言い、そんな風に言い争う家族がいるのに父親が驚いていた。
「どうしたんだ? 土産が気に入らないのか?」
「あ! そうだ。お土産は、どれなの?!」
現金な姉は、父の言葉に怒鳴っていたのをやめて、キョロキョロした。
だが、そんなマドレーヌをそのままにすることはなかった。
「マドレーヌ。謝罪しなさい。それまで、あなたにお土産は渡さないわ」
「なんだ。そっちか。マドレーヌ、また何かしたんだな。正直に話して謝るんだ」
「っ、大したことじゃないわ。ちょっと間違えただけよ」
「何が、ちょっとよ。さっきの言い方だと、ずっと勘違いしていたってことじゃない。これまで、届いたイヴォンヌ宛ての贈り物を開けてたんでしょ!」
どうやら、母はこれまでの姉のやらかしを鑑みて、そこに行き着いたようだ。
それか、使用人が話したのかもしれない、
「盗み聞きしていた挙げ句、そこから勘違いしていたのか。そもそも、お前に関係しているなら、直接言うと思うがな」
「でも、私の方が年上なのに」
「こんなことをしているのが、姉だという方が恥ずかしいと思うがな」
「っ!?」
母と同じようなことを言われたようで、マドレーヌは身体を縮ませつつ、イヴォンヌを睨んで来た。全くこりてない気がする。
まぁ、いつもこうだ。イヴォンヌのせいで、怒られたと後で怒鳴られて怒られるパターンだ。
「……いつも、そんなことを?」
「ランベール様!?」
「イヴォンヌ宛てときちんと印してあったはずだが?」
「っ、う、うっかりしていて」
「うっかり? 一度なら、まだしも、それを繰り返しているのが、うっかりで済むと?」
「っ、それは……、その、婚約者は私だと思っていたから」
ゴニョゴニョと言い、ランベールには悪かったと謝った。ついでにサラッとイヴォンヌには……。
「ったく、あなたのせいで怒られたじゃない。こんなのが着こなせるのは、あなたくらいよ」
「……」
「そうだろうな」
「そうよね!」
父親が、ぽつりとそう言うとマドレーヌは顔を輝かせた。
「この国の最新の流行りは、我が家の次女が生み出しているとあちらでは、褒められた」
「は?」
「えぇ、隣国でも、あなたの着たものを真似ているのよ。びっくりしたわ。あなたが着ていたことのあるのを着ている令嬢が多いんだもの」
「なっ、そんなわけないわ! こんなのが、流行るわけないじゃない!!」
マドレーヌは、妹の着たものが流行るなんて思っていないため、散々に言っていた。それにランベールが激怒するより、両親が激怒するでもなく、怒ったのはイヴォンヌだった。
「ランベール様に謝ってください」
「いや、そこは、イヴォンヌに先謝るべきだ」
「は? 何でよ」
2人には謝ったとマドレーヌは言い、そんなマドレーヌに両親は激怒して、しばらく外出禁止を言い渡した。
「ちょっ、お土産は?!」
「お前にやるものなんてない!」
「酷い!!」
ギャーギャー言いながら、部屋で大人しくしていると言われて、イヴォンヌのことを睨みつけいなくなった。
「ランベール。すまなかった。とんでもないところを見せた」
「いえ」
「ごめんなさい」
「イヴォンヌ。君が謝ることは何もない」
「でも」
ランベールは、イヴォンヌが泣きそうになるどころか。泣いているのを見て、おろおろした。
「イヴォンヌ。ずっと、マドレーヌは婚約者からの贈り物をあんなふ風に開けられていたのね」
「お母様」
「全く。いつも、叱っていたのに何も直ってなかったんだな」
母親はイヴォンヌを抱きしめ、ぐすぐすっと泣き、ランベールはいたたまれない顔をした。
「そうだ。2人にお土産があるんだ」
「私にも?」
「そうだ。娘の大事な婚約者だからな」
「イヴォンヌ。ほら、受け取って、開けてみて」
「……」
そこには、お揃いになる置物があった。
「あちらで、人気のお土産らしいわ」
「可愛い」
「でしょ? でも、この2体、寄り添ってくっつくのよ」
「ふふっ、もっと可愛いですね」
「あぁ、そうだな」
イヴォンヌは、目を輝かせて見ていた。
それに両親も、ランベールも微笑ましそうに見た。
「ありがとうございます」
「大事にします」
「あぁ。さて、ランベールを見送ろう。これ以上、遅くなっては大変だ」
そう言って、この日はランベールを見送り、イヴォンヌは久々に両親と食事をして笑顔となった。
マドレーヌは、部屋で食事をすると言い張り、外出禁止だからと学園にも行かないと言っていて、両親はげんなりしていた。
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