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すっかり、この世界に馴染んだ頃についにその日が来てしまった。
第一線で、対処すべく立っていたネリネは、この世界を脅かす亀裂から飛び出して来たのに我が目を疑った。
なんと、スカリ王子とあの聖女だったのだ。相変わらず、際どいドレスでを着て飛び出して来たので、思わず聖女の力で2人を拘束してしまった。
(は? え……? ここと繋がってたの??)
どうやら、スカリ王子が選んだのは、あの国の令嬢で、聖女くらい自分にも出来るだろうと王子の婚約者となりたいがために嘘をついたようだ。王子も自分の好みの女性を婚約者にしたくて、邪魔でしかないネリネを追い出したくて、国王に何の許可ももらわずに自分勝手に破棄したのだとか。
ネリネが居なくなり、国王に意気揚々とスカリ王子が報告したら、しこたま怒られ、出来るという自称聖女の令嬢にやらせてみたところ、穴を塞いでいた結界に見事な風穴を開けてしまったらしく、スカリ王子たちはそれにいの一番に呑み込まれて、ここに来たのだとわかった。
(私が、心血を注いで塞いでいたのにこんな呆気なく穴を開けるなんて……。そんなことより、塞がなきゃ!)
偽物の聖女とスカリ王子をこの世界に残して置いては邪魔になる。
「どうにかしろ!」
「あなたが、聖女なら、私たちを元の世界に戻しなさいよ!」
喚き散らす2人に慣れていない者たちは、聖女であるネリネに対して不敬だと殺気をとばしていたほどだが、彼らはそんなことお構いなしだった。
どうやら、身なりもきちんとして身の回りのこともよくしてもらっているネリネが、自分たちが追い出した聖女だと気づいてすらいないようだった。
謝罪もなく、上から目線な物言いに疲弊し続けたネリネだが、今はこの世界の唯一の聖女だ。負ければ、この世界が滅びてしまう。それだけは何としても回避しなくてはならない。
(もしかしたら、ここから召喚された聖女が死の間際に故郷に帰りたかった想いが、ブラックホールのように見えていたのかもしれない)
それをよくないものだと思ってしまったのは、その上にあるあの国の考え方や堕落しきった人たちの行いにあったのかも知れない。
(完全に塞ぐには、決定打に欠けていたけど、あの国が亀裂の向こうにあるのなら、容赦することはないわね)
「わかりました。あなたたちを送り返して、私が塞ぎます」
「聖女様!?」
「出来るなら、さっさとしろ!」
「そうよ!」
スカリ王子と偽物聖女を送り返しつつ、あの国で亀裂に蓋をして塞ぐという荒業をネリネはやることにした。いざとなったら、あの国ごと自分を人柱にして塞げるようにして置いたのだ。その準備が無駄にならなくて済んだ。
(人柱は、腐っても王族の端くれの王子と偽物聖女になってもらうわ。ちゃんと言葉通りに送り帰すのだから、嘘ではない。あとは、あの国がやってきた償いをさせるだけ)
ネリネの聖女としての力とそれまでの鬱憤を晴らすべく、亀裂を塞ぐ戦いは3日3晩続いたが、完全に塞ぐことが出来た。
あそこでこき使われていた時には当たり前のようなことだったが、この世界では聖女が不眠不休で祈り続けている姿は、まさに語り継がれる聖女像に映って見えていて、この世界の住人たちは全員で祈りを捧げてくれて、それが支援となり、思っていたより早く塞がった。
(今まで散々好き勝手してきたんだもの。世界のかなめとして、最期は役に立ってもらうわ)
そんなことなど知らない住人たちにネリネは、世界を救った聖女として歴史に名を残すことになる。
必要なくなったと婚約破棄された聖女は、異世界に召喚されて元婚約者たちに仕返しただけなのだが、そのことを知っていたのはネリネだけだった。
あちらの世界では、ネリネが人柱になり、国ごと使って穴を塞いだと思われていて、まさか、どちらの世界でも名を残していたとは知らないままだったが、どちらの世界も人々の笑顔がたえることはなくなった。
第一線で、対処すべく立っていたネリネは、この世界を脅かす亀裂から飛び出して来たのに我が目を疑った。
なんと、スカリ王子とあの聖女だったのだ。相変わらず、際どいドレスでを着て飛び出して来たので、思わず聖女の力で2人を拘束してしまった。
(は? え……? ここと繋がってたの??)
どうやら、スカリ王子が選んだのは、あの国の令嬢で、聖女くらい自分にも出来るだろうと王子の婚約者となりたいがために嘘をついたようだ。王子も自分の好みの女性を婚約者にしたくて、邪魔でしかないネリネを追い出したくて、国王に何の許可ももらわずに自分勝手に破棄したのだとか。
ネリネが居なくなり、国王に意気揚々とスカリ王子が報告したら、しこたま怒られ、出来るという自称聖女の令嬢にやらせてみたところ、穴を塞いでいた結界に見事な風穴を開けてしまったらしく、スカリ王子たちはそれにいの一番に呑み込まれて、ここに来たのだとわかった。
(私が、心血を注いで塞いでいたのにこんな呆気なく穴を開けるなんて……。そんなことより、塞がなきゃ!)
偽物の聖女とスカリ王子をこの世界に残して置いては邪魔になる。
「どうにかしろ!」
「あなたが、聖女なら、私たちを元の世界に戻しなさいよ!」
喚き散らす2人に慣れていない者たちは、聖女であるネリネに対して不敬だと殺気をとばしていたほどだが、彼らはそんなことお構いなしだった。
どうやら、身なりもきちんとして身の回りのこともよくしてもらっているネリネが、自分たちが追い出した聖女だと気づいてすらいないようだった。
謝罪もなく、上から目線な物言いに疲弊し続けたネリネだが、今はこの世界の唯一の聖女だ。負ければ、この世界が滅びてしまう。それだけは何としても回避しなくてはならない。
(もしかしたら、ここから召喚された聖女が死の間際に故郷に帰りたかった想いが、ブラックホールのように見えていたのかもしれない)
それをよくないものだと思ってしまったのは、その上にあるあの国の考え方や堕落しきった人たちの行いにあったのかも知れない。
(完全に塞ぐには、決定打に欠けていたけど、あの国が亀裂の向こうにあるのなら、容赦することはないわね)
「わかりました。あなたたちを送り返して、私が塞ぎます」
「聖女様!?」
「出来るなら、さっさとしろ!」
「そうよ!」
スカリ王子と偽物聖女を送り返しつつ、あの国で亀裂に蓋をして塞ぐという荒業をネリネはやることにした。いざとなったら、あの国ごと自分を人柱にして塞げるようにして置いたのだ。その準備が無駄にならなくて済んだ。
(人柱は、腐っても王族の端くれの王子と偽物聖女になってもらうわ。ちゃんと言葉通りに送り帰すのだから、嘘ではない。あとは、あの国がやってきた償いをさせるだけ)
ネリネの聖女としての力とそれまでの鬱憤を晴らすべく、亀裂を塞ぐ戦いは3日3晩続いたが、完全に塞ぐことが出来た。
あそこでこき使われていた時には当たり前のようなことだったが、この世界では聖女が不眠不休で祈り続けている姿は、まさに語り継がれる聖女像に映って見えていて、この世界の住人たちは全員で祈りを捧げてくれて、それが支援となり、思っていたより早く塞がった。
(今まで散々好き勝手してきたんだもの。世界のかなめとして、最期は役に立ってもらうわ)
そんなことなど知らない住人たちにネリネは、世界を救った聖女として歴史に名を残すことになる。
必要なくなったと婚約破棄された聖女は、異世界に召喚されて元婚約者たちに仕返しただけなのだが、そのことを知っていたのはネリネだけだった。
あちらの世界では、ネリネが人柱になり、国ごと使って穴を塞いだと思われていて、まさか、どちらの世界でも名を残していたとは知らないままだったが、どちらの世界も人々の笑顔がたえることはなくなった。
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