必要なくなったと婚約破棄された聖女は、召喚されて元婚約者たちに仕返ししました

珠宮さくら

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ネリネは、各国の聖女たちとジャンケンをして負けてしまい仕方なく派遣されることになった。気分は、ドナドナだ。



「ごめんね。私、派遣聖女に選ばれちゃった。お墓参りには、もう、来れないかもしれないや」



ネリネは、決まったことを神殿や国王に報告し終えてから、両親の眠っているお墓の前にいた。



「まぁ、なりたくはなかったけど。よく考えたら、他の聖女たちには家族がいるんだよね。きっと、私がなるのが正解だったんだよ」



病気がちな母を癒せる聖女になりたくて、ずっと頑張ってきた。なのに風邪一つ引いたことのない父が事故で呆気なく他界してしまい、それを聞いた母はショックで後を追うように亡くなってしまった。その日にネリネは聖女に選ばれた。



「お母さん! 聖女に選ばれたよ!」

「……ネリネちゃん」

「おばさん? どうしたの?」



母は、大事な日だからとネリネを呼ぶことなく、隣のおばさんが看取ってくれていた。


あの日、一生分、泣いた。あれから一度も泣いてはいない。



「私も、逞しくなったなぁー」



言いながら、母が好きだった花の種をお墓の周りに蒔いていた。



(花が咲くのをいつか見れたらいいな)



もう、心残りはないとその日のうちにネリネは、派遣先へと向かった。


国境までは国王が騎士を護衛をつけてくれたが、日時を知らせていたにも関わらず、迎えはなくネリネは自力で王宮まで行かねばならなかった。王宮までの街並みも、朝から浴びるように酒を飲んで暴れていたり、仕事を真面目にしているのは、他所からの行商人たちだけのようだった。



(これが、歴史をもみ消して築きあげた国か。本当にこの国が、世界のかなめだと思ってるのね)



王宮に近づくにつれて、ネリネにはどす黒いモノが増えていく気がして、それだけでも気分が悪くなっていた。


なんとか王宮に着いたが、遅いだのグチグチ言われて、国王に謁見するまでに待たされまくるも、早々に逃げ出さないように王族の婚約者を先に紹介されたのだが。


「これが、婚約者……?」



スカリ王子とは同い年だったのだが、ずんぐりむっくりな体格で運動は普段しないのだろう。むちむちの手足が、半袖半ズボンから出ていた。


(バカだとしか聞いてなかったけど、これは……ないわ)



ネリネが内心で、ドン引きしていたが、彼の方も気に召さなかったのはわかった。



「田舎くさい女だな。なんだ。その、服装。他所から来る聖女なら、美人だと思ってたのにがっかりだ」



言い返したいのをネリネは、グッと我慢した。これから、ネリネは味方が1人も居ないまま、聖女として仕事をしていくことになる。
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