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「日菜子。もうほっとけ」
「晟様」
「日菜子は、どうしたい?」
「父さんと父方の祖父母の謝罪を受け入れたいです。ここが、私の実家になってくださるのが、私の望みです」
「そうか。日菜子が、望むなら異論はない。だが、二度目はない」


篤史たちは、晟の言葉に心底、ほっとしていた。


「ちょっと、私だって謝罪したじゃない」
「……あなたを産みの母として感謝はしていますが、それだけです。陽芽子も、母方の祖父母も、私を気味の悪い娘と散々言っていた。何より、あやかしに対する最大の侮辱を口にした。謝罪しても、許すことはできません」


日菜子の言葉に陽芽子や母親が何か言う前に晟が、ギロッと睨みつける方が早かった。


「不愉快だ。二度とその顔を見たくない」
「っ、何よ! こんな物!」


陽芽子は、日菜子に龍の玉を投げつけて、母たちと一緒に出て行った。


「晟様……?」


咄嗟に日菜子に当たるのを阻止した晟が、それを手にして嫌そうな顔をしていた。


「あの、晟様。それを父さんたちが処分することは難しいかと思うのですが……」
「……癪だが、龍族には宝だ。日菜子、お前が本当の持ち主なら、しばらく持って大事にしてやったのを祝いの返礼にでもしてやればいい」
「返礼」
「そうすれば、ここの龍族との縁も完全には切れることはなくなるはずだ。……あいつが言ったことを許す気にはなれないが、人間にとってあやかしとの折角結んだ縁が切れたら、災いとなりかねないからな」


それを聞いて日菜子は、笑顔となった。篤史と祖父母も、ホッとしていた。







「とてつもなく残念だ」
「……」
「そのくらいにしろ。日菜子嬢、最高の返礼品だ。あれだけ穢れていたというのに……ずっと、持っていたらと思うと残念でならないよ」
「……」
「叔父貴」
「おっと、失礼」


日菜子は、何も言えずに笑顔が引き攣りそうになるのをやり過ごすのが大変だった。

何とか、多種多様なあやかしたちの祝いの品への返礼品が無事に済んだ頃には、日菜子は草臥れていた。


「疲れたか?」
「ちょっとだけ。でも、皆さんに喜んでいただけてよかったです」


晟は、そんな日菜子をいつまでも溺愛してやまず、義両親からも日菜子は愛され、実家の面々からも大切にされ、幸せいっぱいの日々を送ることができたのだった。



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