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しおりを挟む「それなのに龍の玉を持って生まれたとは、奇妙じゃ」
「父方の祖父母は、龍族に縁が深いと常々言っていました」
「ふむ」
婆と色んな話をしながら、日菜子は可愛らしい着物を着せてもらっていた。
「さて、準備ができた。若様のご両親に挨拶に行くといい」
「え? あ、そ、そうですよね」
「緊張することはないぞ。若様も一緒じゃ。何より若様が、花嫁を連れて帰って来たことに浮かれて、奥方様にボコボコにされとった」
「……」
日菜子は、どんな反応をしていいのかがわからなかった。
「奥よ! 義娘が、こんなに可愛いぞ!」
「見ればわかる。一々、騒ぐな」
「ぐっ」
「……」
日菜子は、挨拶の仕方を婆の聞いていたが、それより先に騒がれることになって固まってしまった。
「すまんな。見なかったことにして続けておくれ」
「えっと、初めまして、轡田日菜子と申します」
「っ」
長であるはずの晟の父親が、何か言おうとするのを隣にいる彼の妻が締め上げて黙らせていた。
「気にするな」
日菜子は、チラッと晟を見たが、素知らぬ顔をしていて、周りに集まる強面の面々も慣れたことのように平然としていることに普通のことなのだなと思って、挨拶を続けた。
そのことで、鬼族たちに肝の座った嫁だと思われるとは思いもしなかった。
「流石は、若様が見初められた花嫁様だ」
「あぁ、あれを見ても動じぬとはな」
「人間の嫁は、どのくらいぶりかわからんが、肝の座ったところは気に入った」
だが、日菜子はただ緊張をしていて、挨拶をやりきることに必死になっていたことに気づいてはいなかったようだ。
更には、折れた角を持って生まれ、それを返すべく、川に身を挺して探して危うく死にかけたと思われたのだ。
「そこまで、息子を思っていたのか」
「えっと」
「母上。彼女は、俺より角がなくなることを何より心配しておりました」
「そうか、そうか。鬼の角が、どれほど大事なものかをよぅわかってくれているのだな。日菜子! 今日より、そなたは我の娘だ。皆の者! 聞いていたな!」
「「「「「おぅ!!」」」」」
「日菜子ちゃん、ぐすっ、息子を頼むよ」
「は、はい」
鬼の長より、嫁である妻が強いようだ。
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