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しおりを挟む「……」
龍族の佑は、花嫁候補に会えることに珍しく浮かれて、数日の間、周りにからかわれるほど、わかりやすくそわそわしていた。
だが、実際に候補に会ってみたら、思っていたのと違っていたのだ。
「これは……」
佑と一緒に来た保護者代わりの男も、陽芽子が見せた龍の玉を見て、何とも言えない顔をしたのは、すぐのことだった。
陽芽子だけでなく、彼女の母親や祖父母が、色々と言っていたが、龍族は何一つ聞いていなかった。
思ったことといえば、時間を無駄にしたと龍族たちが思っているとも知らず、陽芽子は見目麗しい佑に何かとアピールしようと必死になっていた。
そこでチャイムが鳴ったのだ。
「あら、誰かしら」
「待たせておけばいい」
「でも」
「この気配は……」
「鬼の従者のようだ」
「え?」
「ごめんくださいませ」
龍族は、気配に敏感に反応していた。
「おや? 龍族の若様と熙様でしたか」
「お前だけか?」
「我が主の伝言をお伝えにあがりました。日菜子様のご家族様でしょうか?」
「え? えぇ、あの、どちら様ですか?」
「これは、失礼いたしました。鬼族の長のご子息であられる晟様の従者が一人、黒曜と申します」
従者は淡々と日菜子が川で溺れていたのを助けたこととこの度、若君の花嫁に選ばれたと告げたのだ。
「は?」
「鬼族の花嫁……?」
「それは、めでたい!」
熙は、すぐさま祝辞をのべていた。佑は、晟の方が花嫁を見つけたことにムッとしていたが、熙がすぐに戻ってめでたいことを一族に伝えて、祝いの品を準備しなくてはと言い出したことにのっかることにした。
「日菜子様は、若君様とご一緒ですので、心配なさいませんように」
そう言うと従者は、用は済んだと消えた。
龍族も、この機を逃せられないと挨拶もそこそこに帰って行くのを陽芽子たち家族は、呆然と見送ることしかできなかった。
「……は? え? どうなってるの??」
陽芽子は、龍の花嫁に自分がなるのだと学校で触れ回っていたが、花嫁になったのが姉で、それも鬼族に見初められたことに頭が混乱していた。
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