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「え? 私が王子と婚約ですか?」
「そうよ」
「ジョヴァンナ嬢は、王太子殿下と婚約する話が決まりかけているそうだ」
「そうですか。2人なら、お似合いでしょうね」


ルクレツィアは、自分の婚約のことより、幼なじみの婚約の話を聞いて笑顔になった。本当にお似合いだと思えた。今度こそ、幸せになる組み合わせだとも思っていた。


「ルクレツィアと第2王子も、お似合いだと思うわよ」
「っ、そ、そうでしょうか」


幼なじみのことをあれこれ考えていたルクレツィアは、母の言葉に頬を赤らめた。


「そうよ。学園でも、4人でよくいるそうじゃない」
「それは、色々あって私がよくジョヴァンナといたので」
「あちらも、4人で話す方が楽しくて仕方がなくなったようだ。あのお2人は、周りが仲違いさせようとしても、仲の良さが全く変わらないご兄弟だからな。血の繋がりはなくとも、ルクレツィアたちは姉妹のように仲がいいから、そこも気に入ったようだ。義理でも姉妹になるのだ。婚約者同士が、仲良くするのを望んでいるのだろう」
「……」


それなら、ルクレツィアは得意だ。そう思った時の娘の輝かんばかりの目の輝きと笑顔を見ていた両親が、吹き出しそうになっていたことにルクレツィア気づいていなかった。

その顔は、いくつになっても変わっていなかったようだが、ルクレツィアは自分がそんなにわかりやすい顔をしているなんて知る由もなく、両親がにこにことしていたり、使用人たちが微笑ましそうにしているのも、婚約者が決まったことに安堵してのことだと思っていた。


「ルクレツィア」
「ジョヴァンナ」
「「婚約おめでとう!」」


まだ本決まりではなかったが、息ぴったりに幼なじみは出会うなり、そう言ってよかった、よかったと抱きついてお互いがいい人と婚約したことを泣いて喜んでいた。

それを見ていた王太子と王子は……。


「私たちより仲良しだな」
「本当にそうですね」
「私の最大のライバルになりそうだ」
「兄上?」
「考えてみろ。婚約者の大事な幼なじみだぞ。そっちも、気づくと幼なじみに婚約者を取られていそうだとは思わないか?」
「確かに。ですが、あの2人を引き剥がそうとする方が酷なのでは?」
「独り占めするのが、お互い先になりそうだな」


そんな会話がなされているとは知らずにルクレツィアたちは嬉し泣きをして婚約者となったばかりの王族たちを慌てさせたのは、この後すぐだった。

まさか、嬉し泣きで目を腫らしてしまうとは思わなかったようだが、自分のためより相手が幸せになるとわかって喜んでいるのに本当に仲が良いと思ったようだ。

それこそ、王太子と第2王子も、大人の事情で仲違いさせようとする者が多かったが、そんなの蹴散らしたのは王太子が最初だった。

実の弟だ。命すら預けられると豪語するほど、第2王子を信用して、信頼していた。

それに応えるように第2王子も、兄のためなら自分の命は惜しくないと言えるほどだった。

そんな2人を仲違いさせることなど不可能だった。

そんな2人が見初めたのが、ルクレツィアとジョヴァンナだ。まるで正反対のような性格をしているが、色々とあった後で何かできないかと悩んでいるルクレツィアを第2王子は、ずっと見ていた。

ジョヴァンナのことを気にしていたのは王太子だ。王太子は、彼女の婚約が決まる前から眺めていたが、婚約したと知って最初は諦めようとしていたが、その婚約者が最悪だったことを知ったのは、しばらくしてからだった。

それがなければ、王太子は別の令嬢と婚約することを本気で考え始めて、第2王子もルクレツィアとの婚約を諦めていたところだった。

それをルクレツィアたちが知ることはなかった。


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