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しおりを挟むそんなことがあった後で、ジョヴァンナがルクレツィアのお見舞いにわざわざ来てくれた。
それこそ、目覚めた知らせはジョヴァンナの家にもしてくれていたが、医者がよいと言うまでは面会も駄目と言われていたらしい。ルクレツィアが、医者にそうしてくれと言ったからではない。
それは、ルクレツィアの部屋が花で溢れかえったのを見ていたからのようだ。それこそ、今も花屋ができそうなくらい届いている。
「ルクレツィア嬢は、たくさんの方に好かれているようですね」
「えぇ、そのようです。私たちもびっくりしています。でも、幼なじみの婚約者のことで、今回のように倒れるくらい悩むくらいですもの。きっと、そういう人柄があってなのでしょうね」
母は、しみじみと医者と話していたが、ルクレツィアははてなマークを頭に浮かべていた。そんな大層なことをしてきた覚えはないのだ。
だが、そのお見舞いの量も考慮されて、ちゃんと休んでから面会を受け付ける方向で動いてくれることになって、幼なじみに会うまでも長く感じてならなかった。
そもそも、お見舞いの品はルクレツィアとジョヴァンナの父親の部下や上司もちらほらいるらしく、お返しに苦労しそうだと思っていたが、上司やらは子供たちがジョヴァンナの弟妹たちから教えてもらったとかで、ルクレツィアのおかげで仕事が捗るようになったらしい。みんな子供たちが作ってくれたお菓子にやる気が増したようで、そのお礼も兼ねて心配してくれたようだ。
そして、なぜか家のシェフが作ると同じような味にならないらしく、誰もがシェフ泣かせのレシピだと言っているようで、そこもルクレツィアは首を傾げるばかりだった。
そのため、子供たちでも簡単に作れて、日持ちのするお菓子のレシピを教えてほしいと言われていて、今回の見舞いの品々のお返しは、ルクレツィアの考えたレシピで、どうにかなりそうになっていたが、それで本当にいいのだろうかと思っているところにジョヴァンナが来てくれた。
「ルクレツィア!」
「ジョヴァンナ」
「心配したのよ」
母の時のように抱きつかれた。それはジョヴァンナには珍しいことで勢いが押し殺ろせずに2人でベッドに転がって、ごん!とルクレツィアは頭を思いっきりぶつけて、再び医者に呼ばれることになった。
「面会も程々にと言ったはずですが?」
「それは……」
「ごめんなさい。私が抱きついてしまって、そのまま倒れこんで頭をぶつけてしまったんです。ルクレツィアは、悪くありません」
ジョヴァンナが申し訳なさそうに説明したからか。医者も、それなら仕方がないかのようにしたが
頭にたんこぶができているのもあり、もうしばらくはゆっくり休むように念押しされてしまった。
念押しをされて程々にするように言われたが、ルクレツィアは……。
「気になることを聞くまで、ゆっくり休んでいられません」
「なら、それが済んだら休んでくださいね。頭が痛くなったり、吐き気がしたりしたら、すぐに呼んでください」
こうして、医者が安静にするように念押しをしながら帰って行った。
そこから、ジョヴァンナは婚約を破棄したと教えてくれた。
「破棄?」
「そう。まぁ、慰謝料もかなり貰えたから、傷物扱いになっても私は気にしていないわ。それにあの子息、勘当されたし」
「え? もう、勘当されたの?!」
どうやら、ジョヴァンナはルクレツィアに教えてもらってすぐに動いたようだ。
調べれば、あの店だけでも、出るわ、出るわ。
他の店でも、ジョヴァンナへの贈り物として買っていたのが、全て尊敬する子息のようになりたいからと同じように無理やり女性との約束を取り付けていたヴァレリオは、その暴露によって両親に知られることになったらしい。
それはルクレツィアが寝込んでいる間に全て終わってしまっていたようだ。それに一番ルクレツィアは驚いてしまった。
ジョヴァンナの言っていた証拠とは、このことを言っていたようだ。
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