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しおりを挟むエステファンアは、カルメンシータが年下なのに一緒に卒業することを凄いとしか思えなかった。
一緒に卒業できることをカルメンシータは、大喜びしていた。エステファンアと一緒なら、何をしても嬉しいようだ。
そんな喜びように年相応より、幼く見える姿にファラムンドは……。
「エステファンア嬢は、凄いな」
「え?」
いきなり、ファラムンドからそんなことを言われて、きょとんとした。何が凄いというのだろうか?
(これは、どういう意味合いだろう……?)
「カルメンシータが、あんなにはしゃぐのを初めて見た。いつも、あなたからの手紙や話で、コロコロと表情が変わったが。本当にあなたのことが好きなのがよくわかる」
「……」
「少しというか。かなり、羨ましい」
羨ましいと言われて、エステファンアは何とも言えない顔をしてしまった。
「でも、私のどこが、そんなに気に入ってくれているのかが未だにわからないんです」
「……知らないのか?」
「? ご存じなのですか?」
「……」
エステファンアは、ついに答えがわかるとばかりにファラムンドを見上げて期待に満ちた目を向けた。
(やっと知りたいことの1つを知れる!)
「エステファンア!」
「はい?」
そんなことを思っているとパトリシオに腕を引かれていた。距離が近くなりすぎていたようだ。でも、そこまで慌てるほどではなかったはずだが。
「何をしていた?」
「え? 何って、カルメンシータ様のお話をしていました」
「カルメンシータ……?」
「え? お義姉様が、私のことを?! ファラムンド様!
変なことは言ってませんよね?」
「言っていたいよ。ほら、一方的にエステファンア嬢のことを君から聞いていたから、彼女だって、あちらでの君を知りたいと思うのは構わないだろ? 大丈夫。武勇伝しかないから」
「なっ、そんなのより、いかにあの国が素晴らしいかをお話します! 私なんかより、とにかく素晴らしいんですよ」
そこにいたら、自分のことを話すと思ったのか。カルメンシータは、エステファンアの腕を掴んでファラムンドとパトリシオから引き離した。
パトリシオが、じっとファラムンドのことを見ていたことにエステファンアは気づかなかった。
「……本当は、何を?」
「カルメンシータが、どうして、あそこまで懐いているかをエステファンア嬢は知らないようだ」
「え? ……あぁ、カルメンシータが言うと怒るから話していなかったな」
「怒るのか。そうか。だが、そんな怒ることか?」
「カルメンシータには、理想そのものらしいからな」
義姉として、理想そのものこそ、エステファンアのような令嬢だった。エステファンア本人には全くわからないこととは、思っていなかった。彼女の存在自体が、和むのだ。
色んな人たちから、褒めちぎられ、嫉妬され、どうにかして友達になって、自慢しようとしたりするような環境で育ったカルメンシータは、それらが全くないエステファンアが義姉となるのが、とにかく嬉しくて仕方がなかったようだ。
そして、誰に褒められるよりも、カルメンシータに褒められるのが嬉しくて仕方がなかった。本当にそう思っているのがわかるからのようだ。
そんなことかとエステファンアは思うようなことでも、カルメンシータには重要なことだったようだ。
「まぁ、両親も似たようなものだが」
パトリシオは、カルメンシータとエステファンアを見て、ポツリとそんなことを言った。
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