世の令嬢が羨む公爵子息に一目惚れされて婚約したのですが、私の一番は中々変わりありません

珠宮さくら

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王太子がやらかしたことは、それだけではなかった。まぁ、カルメンシータが留学生してから、やらかし続けていて、今度は何をしたかなんて知りたいと思う者もいなかったが。

数日、エステファンアはショックを受けたこともあり、学園を休んでいた。両親や婚約者が、心配して休むように言ったのだ。

それでも、エステファンアは休む気はなかった。


(私のおやつが、なしになってしまう!?)


だが、色々あっての休養だからとお菓子は食べてもいいと言われて、それにホッとして部屋でゆっくりしていた。

どこまでも、おやつのためにエステファンアは忠実なままだった。まだまだ、婚約者はおやつに勝てていないが、そこに気づく者はいなかった。


「え? バウティスタ殿下が、婚約破棄をなさったのですか?」
「揉めに揉めて破棄したようだ」
「……」


エステファンアはパトリシオから、それを聞いて、ぱちくりと瞬きをしてから、何となくわかってしまった。

あの時、カルメンシータが婚約破棄したと言ったのを聞いていなくなったのだ。

これは、つまり……。


(婚約できるチャンスだと思って、破棄したってことになるのかな?)


だが、既にカルメンシータは王弟のファラムンドと婚約しているのだ。それを知らなかったとはいえ、そんなバウティスタのことなど、気にすることもなく、またダリオン国に戻ってしまっていた。

元々、ヴィティカ国の学園の単位は全て取り終えていたようで、ダリオン国で全教科の単位を取るのにカルメンシータは躍起になっているようだ。

留学生が全部を卒業を延ばさずに取るのは至難の技というか。不可能とまで言われているが、カルメンシータはやる気でいるようで、元気いっぱいだった。

そんな風に勉強三昧なところを見て、あちらの王太子のエルピディオは……。


「侍らせるだけで、見た目がよくてお飾りの王太子妃がほしかったんだ。頭はそこまでよくなくていい」
「は?」


そんなことを言われて、カルメンシータは激怒したようだ。


「それ以前にご自分の頭の良さをご存じないようですね。そんな婚約者、こっちから願い下げです。あなたのような人に私はもったいなさ過ぎます!」
「っ、何様のつもりだ!!」


王太子が激怒しているところに王弟が居合わせ、そんなカルメンシータに惚れ込んだようだ。卒業までに必要な単位を取るのも四苦八苦しているような王太子だ。そんなのに言われたくないのは当然だが、それに激怒して手を上げようとまでしていたのだ。

それに王弟が、割って入らないわけがないが、カルメンシータはやられたら、それによろけた振りして往復ビンタでしてやっていたと言うのも気に入ったようだ。

あちらでは、エルピディオよりも、カルメンシータの人気がうなぎ登りに上がっていて、王弟とお似合いだと言われて騒がれているようだ。

そんなことが、留学を延長する辺りで起こったことのようだ。カルメンシータが王太子と婚約を破棄をしてから、王弟と婚約するまでにそれなりの時間がかかったのも、エルピディオが騒ぎ立てて大事にしたようだ。

それによって、ギリギリで卒業は難しそうだということが、国王と王妃にも知られることになり、逆に留学生のカルメンシータの才女っぷりに関心して、王弟との婚約に国王たちの方が乗り気になってしまったようだ。

今は、そんな王太子を見切って、第2王子を王太子にしようとしているようだ。それにも、エルピディオは抵抗しているようだ。懲りない人のようだ。

評判が急激に落ちたのは、ダリオン国とヴィティカ国の双方の王太子だ。やることなすことが、最低最悪な2人だが、どっちもどっちだと思われていたが、それが一気に傾いたのは、今回のことだ。

ヴィティカ国の王太子であるバウティスタが、カルメンシータが婚約破棄したと聞いて、自分もしたのにカルメンシータが既に別の人と婚約していることを知って激怒して騒ぎを起こしたのだ。


「また、騙したな!!」
「そんなことはしていません」


王太子は、再びパトリシオのところに来ていた。騙したと思い込んでいる王太子は、それはもうしつこかった。

パトリシオとて、あの場で破棄を知り、その後に婚約者を紹介されたのだ。騙しようがない。

だが、そんなことを言うよりもパトリシオは、白けた目を向けながら、こう言った。


「そもそも、私の妹の婚約と殿下に関わりはないはずですが?」
「っ、それは……」
「変な言いがかりはやめてください。そもそも、殿下。あれだけ、あからさまに妹に嫌われているの気にする必要ありますか?」


パトリシオは、王太子にはっきり言うことにした。しつこさの限界を超えたのといわれもないことを言われるせいもあった。


「え? き、嫌われている??」
「えぇ、一目瞭然。誰が見ても、わかると思いますよ」
「っ!?」


パトリシオの言葉に王太子は、いや、そんなまさかと辺りをきょろきょろした。そんなはずがないと味方してくれる人を探したようだが、周りにいる者はみんな信じられない者を見る目をしていた。

それは王太子に向けるものではなくなっていた。カルメンシータが留学する前までは、見られなかった光景がそこにあった。

バウティスタは、久しぶりに周りをよく見たような顔をしていた。


「まさか、気づいていなかったのか?」
「嘘でしょ。信じられない」
「あれだな。これまで、上手くいかないことがなかったから、わからなかったのかもな」
「婚約すれば、どうにかなると? なら、そもそも、何であんなのと婚約したのかしらね」
「っ、」


バウティスタのことをひそひそと話す生徒たちの言葉に王太子は顔色を青くさせたり、赤くさせたり、実に忙しそうにしていた。やっと周りの言っていることが耳に入るようになったらしい。

パトリシオは、そんな王太子に冷めた目を向けるだけだった。


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