完璧すぎる王太子に愛されていると思っていたら、自称聖女が現れて私の人生が狂わされましたが、最愛の人との再会で軌道修正を始めたようです

珠宮さくら

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ラトニケたちがその牢獄に閉じ込められ続けている間にエウリュディケとバシレイオスは、何度か生まれ変わっては、どこに生まれていようとも巡り会っていた。

時に家族みんなを失って絶望に打ちひしがれることになろうとも、兄弟姉妹を亡くそうとも、我が子に先立たれることになろうとも、再婚して家庭を築いたこともあった。

そのたび、彼女たちは自分たちのみならず、周りも幸せになるようにと必死に生きた。2人が出会うまでにどん底な人生を歩むことになっても、2人が出会ってからは違っていた。

どちらも、相手や周りを幸せにすることに全力を注いだのだ。生まれ変わり続けても、有言実行し続けた。

そんなエウリュディケたちとは違い、ラトニケたちは自分たちの何が悪いのかに行き着くことはなかった。

それこそ、まず最初にラトニケが反省しなければ他の面々は同じことを繰り返すのをやめられないというのにラトニケは、自分が悪いことをしたと欠片も思うことがなかったのだ。

そのせいで、どんなに優秀な聖女が生まれても、テネリアにいる人たちを救うことに至ることはなかった。

その国に入ることは決してできなかった。


「まだ、みんなを幸せにできていないわね」
「そうだな」
「あの国の人たちをいつになったら幸せにできるのかしらね」
「さぁ? まぁ、そのおかげで、僕らは、生まれ変わっても、こうして出会えているんだから、あのままでいいんじゃないか?」


エウリュディケとバシレイオスは、この世界に来て、やっと添い遂げることができたあとから、何度生まれ変わったことか。数えてはいなかった。

生まれ変わっても、彼らはそれまでの記憶を途中で思い出していた。思い出すたび、誓いをまっとうしようとし続けた。

みんなを幸せにするまではと思っていたが、まさかテネリアの人たちまでも幸せにするまではと置き換えられてしまっているとは思いもせず、生まれ変わるたびにそろそろみんな幸せになるから、終わるのかなとお互いがしんみりしていたら……。


「なんか、全然終わらないね」
「だな」
「これ、あなたの片割れたちのことも含まれてるんじゃない?」
「そんな気がしてきた」
「「……」」


エウリュディケたちは、無言で見つめあった。生まれ変わるたび、姿形が変わっていても中身だけが、全く変わっていなかった。


「まだ、続きそうだな」
「だね。これからも、よろしく」
「こっちこそ」


ラトニケたちが反省して出て来るまで、さらに長いことかかっただけでなくて、その後、生まれ変わるたび、幸せになる人たちをエウリュディケたちは増やしていこうとするのだが、これが大変だった。


「あちらに取り込まれていく面々が増えてくな」
「厄介ね」
「でも、ここまで来たら、負けられないよな」
「えぇ、負けられないわ。私たちが、この世界に聖女を召喚させることなく、この世界の人たちだけで、どうにかし続けると決めたんだもの。私たちがいなくなれば、また関係ない人が大事な人と引き離されてしまう」
「あんな思いをするのは、僕らだけで十分だ」


こうして、エウリュディケたちは生まれ変わり続けることになったが、もう次の人生は別々を希望すると言い出すことはなかった。冗談でも、口にすることはなかった。それこそ、言った途端、本当になりそうで怖かったのもあった。

2人がかりで、聖女を異世界から召喚しないために奮闘し続けるのだが、それを毎回エウリュディケたちはお互いの人生を悲観しすぎることもなく、人生を謳歌し続けた。

この2人こそ、生まれ変わり続けながら、聖女から更に救世主と呼ばれる存在となっていたことに本人たちは全く気づいてはいなかった。

何はともあれ、この2人が生まれ変わり続ける限り、この世界で危機的状況に陥ることはなかった。



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