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しおりを挟む「ちょっと、これ、前に見たことあるわ。新しいものが何もないじゃない!」
「仕方がありませんよ。他国との交流を禁じられてしまっているんです。新しいものを入荷なんてできるわけがありません」
「はぁ? なら、再開させればいいじゃない」
「そんなことできません。あなたを聖女と認めないような連中と交流したいとも思いません」
ラトニケは、フォルミオンと婚約したから、毎日着飾ることばかりをしていた。王太子妃となるための勉強なんて一切せず、贅沢三昧をしていた。
新しいものを買うことができなくなり、食べ物にも困り出して、ラトニケがどんなに不満を漏らして当たり散らしても、聖女を認めない連中と仲良くする気はないとフォルミオンや周りは同じことしか言わないのだ。
そんなことを繰り返すうちにラトニケは……。
「何なの? 気持ち悪い」
ラトニケは、ようやく異常なことになっていることに気づいたが、そこに至るまでエウリュディケを追放してから数ヶ月が経っていた。
それこそ、エウリュディケがここから追放される時も、日毎に人々の記憶が改竄されながらも、同じような日々を送っていったのだが、ラトニケはちやほやされることに忙しくて同じことを繰り返していることに気づいていなかったのだ。
他人と同じことをされていても、ラトニケは自分がされると我慢ならないタイプで、他人が同じような目に合っていようとも、どうでもいいと思うような女性だった。
そのうち、聖女なのだから助けてくれとフォルミオンや周りの人たちに縋りつかれるようになり、それが昨日と一昨日とその前と同じことを初めて言ったかのようにするテネリアの人々にラトニケは気が狂いそうになった。
「いい加減にしてよ! 聖女、聖女って、私は呼ばれて来たわけじゃないのよ!」
「は? どういうことだ?」
お腹が空いたラトニケは全部ぶちまけたが、それでも一晩経てばみんな責め立てていたことを忘れて、またラトニケに聖女なのだからと縋り付いた。
「どうなってるのよ?! 私に力があったから、あの女の立ち位置に入れ替わったんじゃないの?!」
そんなことをぼやいても、ラトニケに答えてくれる人はいなかった。みんな、ラトニケを聖女だと信じて決して疑わないのだ。
「ラトニケ。聖女なら、私たちを助けてくれ」
「だから、私は……」
同じことを繰り返す日々にラトニケは辟易してしまった。何度も、同じことを話すうちにもう、こんな日に耐えられないと思うまで、すぐにのことだった。
だから、ラトニケは終わろうとした。疲れきって終わることを選択することにしたのだ。
「これで、終われる」
ラトニケは、そう思って己が死ぬのを喜んだ。その目は、濁りきっていた。それでも、口元だけが笑みを作っていた。
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