完璧すぎる王太子に愛されていると思っていたら、自称聖女が現れて私の人生が狂わされましたが、最愛の人との再会で軌道修正を始めたようです

珠宮さくら

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テネリアの国では、エウリュディケがいなくなったことで、更にラトニケにみんなが夢中になっていた。面白おかしく色々言われるのが、エウリュディケになってしまっている。それどころか、目の敵にされる人物の標的にすらされてしまっているのではなかろうか。


(今頃、私のことを笑いものにしてそうね)


そんなことを思い出しつつ、笑いのネタにされていることにげんなりしていると養母は眉を顰めていた。


「そもそも、危機なんて起こってもいないのに聖女を召喚しようとするはずがありませんわ。召喚するには、各国に通達することになっているんですもの」


(通達……? そんなことするのね。知らなかった。その辺のこと、誰も教えてくれなかったわ。まぁ、テネリアでは、そんな知らせがなかったのに勝手に浸透してしまっていたけど)


それが、未だにトリニアにはなされていないらしい。他の国にも、通達があれば知らないわけがないとなり、そうなるとテネリアで聖女として騒がれている女性が本物とは思えないと言い出したのは、すぐのことだった。


(まぁ、あんな派手なメイクと髪型を学園でも平然としているようなのが、本物に見えるんだもの。あちらの人たちの頭を心配しても、よほどじゃなきゃ認めないわよね。テネリアでは、元々聖女を信じてなかったから、真逆につけ込まれた結果のようになったようだけど)


「それに人の記憶を操作する聖女なんて、聞いたこともない。それを聞く分には聖女と言うより、魔女みたいではないか」
「魔女」


(確かに。彼女の派手な化粧や髪型からしても、イケメンな王太子と婚約したかったようにしか見えない。追いかけて来た相手よりも、優良な物件を目のあたりにして、そっちにしたってところかしらね。魔女として優秀でも、そんな人が聖女になれるわけがないわよね)


前世のエウリュディケが男性だったのを追いかけて来たなら、こちらで探すよりも王太子といい感じになれたのなら、それを狙う方ことにしたのも無理はないかも知れない。

しかも、日毎に記憶がいいように改竄されていくのだ。それが全部自分の力でそうなっていると本気で思っていたのかはわからないが、それをあの女が利用しないわけがない。


(あんな気持ち悪いことになっていても、ちやほやされていることが嬉しくて仕方がなかったのかも知れないわね)


エウリュディケが、そんなことを考えていると養父が、こんなことを尋ねて来た。


「そもそも、その聖女とやらの後見人は、誰なんだ?」
「え?」
「もしかして、決まってないのか?」
「……」


エウリュディケは、聞かれて初めて、そういえばと考え始めた。誰かが後ろ盾になった話を聞いた覚えはなくて首を傾げることになった。


「いえ、あれ? その辺のことは、さっぱりです。毎日、少しづつみんなの記憶が変化していたので、その辺はよくわからない」


(しかも、都合のいいとこだけ繰り返していたし)


どうやら、エウリュディケも記憶が完全に改竄されることはなかったが、おかしいと思ってもいいところに行き着かなかったようだ。どうも、エウリュディケもその辺でおかしくなっていたようだ。もっとも、エウリュディケは悪女うんねんと責め立てられることになったせいで、余裕がなくなっていたのも関係したのかも知れない。

同じような毎日がかなり続いていたことが大きかったが、どれだけ続いていたかを把握していないエウリュディケは、その話をすることはなかった。


「聞く分には、エウリュディケのことを目の敵にして、自称聖女は王太子と婚約したかったみたいだな。後見人もいない上、各国から認められてもいないのに聖女として、王太子の婚約者にはなれないはずだ。どんなに記憶がおかしくなっていてもな」
「そうよね」


そうなのだ。エウリュディケは、色々聞くうちにその辺のおかしさにようやく気づいた。


(王太子殿下は、その辺をどうするつもりだったのかしらね)


ラトニケに後見人ができたとしても、聖女として各国が認めない限りは、彼女は自称聖女でしかないのだ。そんなのを王太子が婚約者にしたとしたら……。


(いい笑いものにされるわ)


他の国も、テネリアのように記憶を改竄されない限り、それは上手くいくことはないだろう。

エウリュディケは、そこに行き着いて内心で、ざまぁみろと思ってしまった。


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