完璧すぎる王太子に愛されていると思っていたら、自称聖女が現れて私の人生が狂わされましたが、最愛の人との再会で軌道修正を始めたようです

珠宮さくら

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馬車の中のはずなのに物凄く久しぶりに快適に良く寝た気がエウリュディケはした。自室で寝ていた時よりも、ぐっすりと眠れた。良く眠り過ぎて、一瞬どこだったかがわからなかったほどだ。


(えっと、ここは……)


「エウリュディケ? 起きたのか?」
「えぇ」
「気分は? 馬車の中だから、ゆっくり休むのは難しいだろうけど」


もうすぐ着くあたりで、エウリュディケは目が覚めた。幼なじみの膝枕で寝ていたようだ。


「そんなことないわ。久しぶりに良く寝れたわ」
「それは、良かった」


彼は起きなければ、ゆっくり寝かせたままでいようとしたようだが、起きたのならとまだ寝てていいと言うことはなかった。エウリュディケが、本当にスッキリした顔をしていたからかも知れない。


「養父たちに事情を話す。二人とも、エウリュディケのことを心配していたから、あの国のようにはならないはずだ」
「??」
「テネリアのように恩知らずな生き方をトリニアではしていない」
「……」
「何も心配することはない。僕がいる」


その言葉を聞いただけで、エウリュディケは何の心配もいらないと思えた。もとより、彼が側にいてくれれば、怖いものなどエウリュディケには何もないほどだった。


「エウリュディケ。前世で、僕を追いかけて来てくれて、ありがとう。気づかなくて、すまなかった」
「いいのよ。あなたにまた、こうして会えたんだもの。あなたが、幸せになれるのを見れるなら、それで十分よ」
「……エウリュディケ? それ、どういう意味?」
「私は、もう公爵令嬢ではないもの。あなたが、幸せになるのを知るだけでいいわ。流石に可愛い婚約者と一緒にいるところを見るとまた殺意が芽生えそうになるから、知らせだけにしてくれると嬉しいわ」
「エウリュディケ。そんなこと思っていたの?」


バシレイオスは、ムッとした顔をしてエウリュディケを見ていた。

勘当され、追放までされたのだ。今世は出会えただけで十分だとエウリュディケは思っていたが、そう思っていたのはエウリュディケだけだったようだ。

そんな話をしている間にバシレイオスの養父母の家に到着した。


「エウリュディケ。僕は、前世のように諦める気はないよ」
「……」
「君が、僕に愛想を尽かしていても離してやるつもりはない」
「バシレイオスに愛想を尽かしたことないわ。尽かされる自信はあるけど」
「そんな自信持たなくていい」


言いながら、バシレイオスはエウリュディケの手を握りしめていた。その手を二度と離すものかと言っているようだった。

エウリュディケは、それだけで泣きそうになるほど幸せだった。


(これは、本当に現実なのかしら? 都合のいい夢を見ているなんてことはないわよね……?)


ふと、そんなことをエウリュディケは思ってしまった。だが、すぐにそんなわけがないと考えることをやめた。

あまりにいっぺんに色んなことがありすぎたのと同じような日をずっと繰り返す日常をどれだけ過ごしていたのかをエウリュディケは覚えていなかった。

1ヶ月だったか。数ヶ月だったか。何だか、気が遠くなるほど、同じような日を続けていたような気がするが、エウリュディケはその日々を数えてはいなかった。

数えていたら、かなりの月日を過ごしていたことを知ることになったが、そこに長らくいた影響が全くなかったわけではなかったことに本人は気づいていなかった。


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