完璧すぎる王太子に愛されていると思っていたら、自称聖女が現れて私の人生が狂わされましたが、最愛の人との再会で軌道修正を始めたようです

珠宮さくら

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エウリュディケは学園に通うようになり、長期休暇で久々にゆっくりできる日だった。婚約者も、多忙な人なこともあり、どこかに出かけても気が休まらないことの方が多い。何せ2人とも容姿がただですら目立ってしまうのだ。そのため、どこにいても2人だと目立ってしまうせいで、周りの期待する完璧でいなくてはならず疲れるのだ。

それを理解して、エウリュディケが家でのんびりできるように計らってくれたようだ。多分、婚約者もなんだかんだ言っても、人の子だ。どんなに完璧でも、四六時中見られ続けていたら疲れるはずだ。


(隙がないから、いまいちわかりにくいけど。そこも、ムカつくのよね)


婚約者にそんなことを思っていた。これが彼女の通常運転だ。

丁度、家族も出かけていてエウリュディケは、本当に気を休めるのに丁度良かった。

バシレイオスが養子となって数年が経っていたが、そこに何の前触れもなく現れたのだ。エウリュディケに会いに公爵家に寄ってくれたのだ。

エウリュディケが夢を見たことを手紙にした後のことで、彼はエウリュディケが最後に会った時よりも、見違えるほど元気になっていた。一瞬、誰なのかがわからなかったほどだった。


(凄い見違えるほどだわ)


エウリュディケは元気になった幼なじみに感激していた。

そして、お忍びでバシレイオス・マノスと一緒に公爵家に来た人物を見てエウリュディケは、珍しくきょとんとした年相応よりも、幼い顔をしてしまったが、他の家族がいない時でよかった。

お忍びで公爵家に幼なじみと一緒にやって来たのは、隣国の第二王子のアンティフィロスだった。ここに家族がいたら、騒ぎ立てていたのは間違いないだろう。そうならなくて良かった。


(とんでもない人と友達になったみたいね)


エウリュディケが思ったことは色々とあったはずだが、そんな些細なことだった。

アンティフィロスも、エウリュディケが内心でそんなことを思っていることにとっくに気づいているような人だと思う。

ただの直感だが、エウリュディケは自分の婚約した王太子よりも、お腹の黒さはエウリュディケと引けを取らない人物だと思えてならなかった。味方になってくれるなら大歓迎だが、敵対することになったら全力で逃げたいタイプに違いない。


「彼の育ての両親と弟くんに会ってみたくてね。バシレイオスを見限ってくれたおかげで、彼と友人になれたんだから、その辺のお礼もしたくて」
「……」


なんてことなさげにそんなことを言った。初対面のはずだが、なぜだか随分昔からの知り合いのようにエウリュディケの前で寛いでいるように見える。


(幼なじみが、この人と友達になれて良かったと思っていいのよね……?)


何とも言えない顔をして、エウリュディケは幼なじみを見てしまった。

バシレイオスは何とも言えない顔をしていた。そんな顔を見るのは、エウリュディケは初めてで目をパチクリとさせてしまった。


(初めて見る顔だわ。弟くんの時に困ってる時とも違う気がする)


何だか幼なじみが物凄く遠くに行ってしまった気がして、エウリュディケはそんなバシレイオスのことを眺めていた。


「殿下」
「っと、失礼。つい本音が。建前は、こっちの学園に通うか悩んでいてね。バシレイオスの弟が、僕たちが仲良くしていると耳にしたようで、彼の実の両親も同じように跡継ぎの息子の方が優秀だって騒ぐから、バシレイオスに比べて大したことないって直に言ってやりたくてね」
「殿下。何度も言っていますが、そこで張り合うことはないと思います」
「でも、本当のことだろ? エウリュディケ嬢、こいつと私は上位争いをしているんだよ。今のところ、僕の方が負けてるくらいだ。それなのにこの調子なんだ。嫌味だと思わないか?」


そこまで聞いて、エウリュディケはあることに気づいた。


「え? それって、バシレイオスは学園に通っているんですか?」
「おや? 知らなかったのか?」
「えぇ、存じませんでした」


(そんなこと手紙には一言もなかった。聖女のことを書いてからは聖女に関してのことばかりだった。自分のことを教えてくれてなかったのは、相変わらずの生活を送っているからだと思っていたのに。……まぁ、ここに来れるほどだから、それなりに元気になったんだろうとは思っていたけど)


じっとエウリュディケは、幼なじみを見つめた。するとバシレイオスは、エウリュディケの視線に気づいてわたわたしていた。


「あ、いや、その……」
「バシレイオス。学園生活は、楽しい?」
「え? あ、うん。それなりに楽しいよ」
「それは……」


(ここにいた時より?)


そう聞きたくなったが、言葉を紡げなくてエウリュディケは俯くことしかできなかった。


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