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(所作や仕草だけで、こんなにも男の子っぽく見えるのね。気をつけないと。それにしても、無意識に私がやることなすこと、みんなお兄様より男っぽいって、どうなんだろ)


そこに気づいてしまったエウリュディケは、必死になって自分の方が幼なじみよりも、生物学上は女性なのだからと礼儀作法を徹底的に身につくように。身にしみるように意識的に取り組んだ。

それまで、散々兄に嫌味を言われても、両親に嘆かれてもエウリュディケはそのままでいたが、自覚してからは自分が納得ができるまでとことんやった。す

バシレイオスよりも女性らしくなるまで、かなりかかった。もう生まれる前から身にしみていた分を洗い流してリセットするかのごとく頑張った。それが、エウリュディケは内心で悔しくて仕方がなかったが、そんなことを周りには内緒だ。周りにはバレバレなはずだが、あまりにお転婆が過ぎてエウリュディケは公爵家の令嬢として評判を貶めかねないという理由から、あまり社交界に顔を出していなかったこともあり、男の子っぽいところがあってお転婆が過ぎるところがあることまでは広まっていなかったことも良かったようだ。

エウリュディケの方は元気がありあまっていたが、両親たちがやきもきしている間にそのうち落ち着くことになって、完璧な淑女となってから社交界に出たため、そちらの方のイメージがまんま公爵家の令嬢となり、周りにとっては理想そのものの令嬢が現れることになったわけだ。そのことに両親が、心の底からホッとしていたことをエウリュディケは知らなかった。

そんなことに両親がホッとしていることに気づかずにいたが、幼なじみのところに通っていることでエウリュディケは自分を保てているところが、大半を占め始めていることにも、本人は全く気づいてはいなかった。


「風邪一つ引いたことないって、エウリュディケらしいね」
「らしいって何よ?」
「僕なんて、季節がかわるどころか。月がかわるごとに風邪引いてるのに」
「……それ、引きすぎじゃない?」
「そうかな? まぁ、前まで治るとすぐに風邪引いてたような感じだったけど」
「それだと年中、風邪引いたままってことじゃない?」
「うん。そうだね。毎回、違う症状なのに同じ風邪薬ばっかり飲んでたから、治りが遅かったのかも知れないけど」
「は? 何、それ」
「まぁ、仕方がないよ。強い薬だと身体が弱るし、飲める風邪薬がそれしかなかっただけだから」
「……」


(それ、飲んでた意味はあるのかしらね)


バシレイオスのぼやきにエウリュディケは内心でそんなことを思ってしまった。


(部屋から、ほとんど出ないで温度も一定に保たれてるはずなのに。風邪ひくってことは、これは私が出入りしてたせいなんじゃ……?)


エウリュディケは、そんなことを彼と話したことがあった。それこそ、エウリュディケがちょっと熱が出ても寝込むなんてことはしたことがないが、エウリュディケにとって大したことないくらいでも、バシレイオスにとっては致命的になるくらい彼は病弱すぎたようだ。それこそ、風邪一つ引いたことがないとエウリュディケは思っていても、熱が出た時点で、それが風邪の引き始めだとは思っていなかったのだ。

なにせ、そんなことで寝込んだことはエウリュディケには一度としてなかった。熱が出ていても、寝込むなんてことも具合が悪くて気分を悪くすることもなかった。食事も普通にできたし、頭痛で気分を悪くさせることもなかった。ただ、平熱より高いだけで、エウリュディケは至って元気だったのだ。

それでも、見舞いに行く回数を減らさずになんてことない他愛ない話を彼とすることが、エウリュディケにはたまらなく大事な時間だった。それは彼も同じだったようだ。

それを周りが理解しきれているかは微妙なものがあったが。


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