上 下
53 / 57

53

しおりを挟む

シーラは、ウェディングドレスのまま、母のお墓参りをしていた。

着替えずに寄りたいところがあると言われて、シーラは不思議に思っていたが、そういうことのようだ。


「本当は、始まる前に来たかったんだけど、終わってからの方がゆっくりできるって、母上たち女性陣のアドバイスを参考にさせてもらったんだ」
「ありがとう。凄く嬉しいわ」


夫となったマティアスや周りの計らいによって、シーラは満面の笑みを見せた。

マティアスは、シーラを大切にしてくれ、仲睦まじい姿をいたるところで目撃されて、羨ましがられるようになるのも、すぐだった。

こうして、笑顔溢れる毎日を送りながら、常識外れな人たちやその子供として生まれた男の子を見ることになったが、シーラたちが思っているようなことにはなっていなかった。


(そっくりな男の子に成長してるとは思わなかったわ。これは、関わらない方が良さそうね)


あの家で、両親を手本にした男の子は、ゲラーシーのような子息に成長していたのだ。


(それでも、跡継ぎだからと思っているのだとしたら、大変なことになりそうね)


手におえなくなって別の国に留学させて、散々なことをしたようだ。あちらの学園から苦情と抗議の山を受け取ることになり、それでも何かの誤解だと頑張っていたようだ。

そんなことで、変に頑張らずに見限ればよかったと思うが、最終的には勘当するだけで済まなくなって、爵位を返上するまでになったのも、シーラだけでなくてみんながいずれはそうなるだろうと思っていたことだった。


(血の繋がりはなくとも、男の子だからと期待していたのかも知れないわね。子育てなんて、娘たちにはしたことないのに男の子なら立派に育てられるって、どうして思ったのかしら。そこが不思議でならないわ)


シーラはそんなことを思ったが、マティアスとの子供たちが、そんな風に成長しなかったことに安堵していた。二人の子供たちはシーラに似た髪の色をしていた。

ヴァジムのところに生まれた子供たちも、娘が珍しい髪の色を受け継いで生まれたことで、ボリスとエルヴィーラはそれを大いに喜んでいた。

しかも、心配していたヴァジムの性格を子供たちは引き継がなかったことにも安堵していた。ただ、娘がエルヴィーラにそっくりなため、だいぶ手こずっているようだが……。ボリスだけが、それにデレデレしているようだ。

シーラたちの子供たちは、どちらにも似ていた。若干、マティアスの実母の従姉に似ているところがあったが、心配するほどではなかった。それにシーラは密かにホッとしていた。


(実父や姉と妹みたいな性格でなくて本当によかったわ)


こうして、シーラは生まれ育った国で、幸せいっぱいの人生を愛してやまない人たちに囲まれながら、笑顔溢れる日々を送ることができたのだった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

運命の番?棄てたのは貴方です

ひよこ1号
恋愛
竜人族の侯爵令嬢エデュラには愛する番が居た。二人は幼い頃に出会い、婚約していたが、番である第一王子エリンギルは、新たに番と名乗り出たリリアーデと婚約する。邪魔になったエデュラとの婚約を解消し、番を引き裂いた大罪人として追放するが……。一方で幼い頃に出会った侯爵令嬢を忘れられない帝国の皇子は、男爵令息と身分を偽り竜人国へと留学していた。 番との運命の出会いと別離の物語。番でない人々の貫く愛。 ※自己設定満載ですので気を付けてください。 ※性描写はないですが、一線を越える個所もあります ※多少の残酷表現あります。 以上2点からセルフレイティング

[完結]婚約破棄してください。そして私にもう関わらないで

みちこ
恋愛
妹ばかり溺愛する両親、妹は思い通りにならないと泣いて私の事を責める 婚約者も妹の味方、そんな私の味方になってくれる人はお兄様と伯父さんと伯母さんとお祖父様とお祖母様 私を愛してくれる人の為にももう自由になります

婚約者の妹が結婚式に乗り込んで来たのですが〜どうやら、私の婚約者は妹と浮気していたようです〜

あーもんど
恋愛
結婚式の途中……誓いのキスをする直前で、見知らぬ女性が会場に乗り込んできた。 そして、その女性は『そこの芋女!さっさと“お兄様”から、離れなさい!ブスのくせにお兄様と結婚しようだなんて、図々しいにも程があるわ!』と私を罵り、 『それに私達は体の相性も抜群なんだから!』とまさかの浮気を暴露! そして、結婚式は中止。婚約ももちろん破談。 ────婚約者様、お覚悟よろしいですね? ※本作はメモの中に眠っていた作品をリメイクしたものです。クオリティは高くありません。 ※第二章から人が死ぬ描写がありますので閲覧注意です。

妹がいなくなった

アズやっこ
恋愛
妹が突然家から居なくなった。 メイドが慌ててバタバタと騒いでいる。 お父様とお母様の泣き声が聞こえる。 「うるさくて寝ていられないわ」 妹は我が家の宝。 お父様とお母様は妹しか見えない。ドレスも宝石も妹にだけ買い与える。 妹を探しに出掛けたけど…。見つかるかしら?

初夜に前世を思い出した悪役令嬢は復讐方法を探します。

豆狸
恋愛
「すまない、間違えたんだ」 「はあ?」 初夜の床で新妻の名前を元カノ、しかも新妻の異母妹、しかも新妻と婚約破棄をする原因となった略奪者の名前と間違えた? 脳に蛆でも湧いてんじゃないですかぁ? なろう様でも公開中です。

姉から奪うことしかできない妹は、ザマァされました

饕餮
ファンタジー
わたくしは、オフィリア。ジョンパルト伯爵家の長女です。 わたくしには双子の妹がいるのですが、使用人を含めた全員が妹を溺愛するあまり、我儘に育ちました。 しかもわたくしと色違いのものを両親から与えられているにもかかわらず、なぜかわたくしのものを欲しがるのです。 末っ子故に甘やかされ、泣いて喚いて駄々をこね、暴れるという貴族女性としてはあるまじき行為をずっとしてきたからなのか、手に入らないものはないと考えているようです。 そんなあざといどころかあさましい性根を持つ妹ですから、いつの間にか両親も兄も、使用人たちですらも絆されてしまい、たとえ嘘であったとしても妹の言葉を鵜呑みにするようになってしまいました。 それから数年が経ち、学園に入学できる年齢になりました。が、そこで兄と妹は―― n番煎じのよくある妹が姉からものを奪うことしかしない系の話です。 全15話。 ※カクヨムでも公開しています

婚約破棄をされた悪役令嬢は、すべてを見捨てることにした

アルト
ファンタジー
今から七年前。 婚約者である王太子の都合により、ありもしない罪を着せられ、国外追放に処された一人の令嬢がいた。偽りの悪業の経歴を押し付けられ、人里に彼女の居場所はどこにもなかった。 そして彼女は、『魔の森』と呼ばれる魔窟へと足を踏み入れる。 そして現在。 『魔の森』に住まうとある女性を訪ねてとある集団が彼女の勧誘にと向かっていた。 彼らの正体は女神からの神託を受け、結成された魔王討伐パーティー。神託により指名された最後の一人の勧誘にと足を運んでいたのだが——。

【完結】私と婚約破棄して恋人と結婚する? ならば即刻我が家から出ていって頂きます

水月 潮
恋愛
ソフィア・リシャール侯爵令嬢にはビクター・ダリオ子爵令息という婚約者がいる。 ビクターは両親が亡くなっており、ダリオ子爵家は早々にビクターの叔父に乗っ取られていた。 ソフィアの母とビクターの母は友人で、彼女が生前書いた”ビクターのことを託す”手紙が届き、亡き友人の願いによりソフィアの母はビクターを引き取り、ソフィアの婚約者にすることにした。 しかし、ソフィアとビクターの結婚式の三ヶ月前、ビクターはブリジット・サルー男爵令嬢をリシャール侯爵邸に連れてきて、彼女と結婚するからソフィアと婚約破棄すると告げる。 ※設定は緩いです。物語としてお楽しみ頂けたらと思います。 *HOTランキング1位到達(2021.8.17) ありがとうございます(*≧∀≦*)

処理中です...