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しおりを挟むシーラは、ウェディングドレスのまま、母のお墓参りをしていた。
着替えずに寄りたいところがあると言われて、シーラは不思議に思っていたが、そういうことのようだ。
「本当は、始まる前に来たかったんだけど、終わってからの方がゆっくりできるって、母上たち女性陣のアドバイスを参考にさせてもらったんだ」
「ありがとう。凄く嬉しいわ」
夫となったマティアスや周りの計らいによって、シーラは満面の笑みを見せた。
マティアスは、シーラを大切にしてくれ、仲睦まじい姿をいたるところで目撃されて、羨ましがられるようになるのも、すぐだった。
こうして、笑顔溢れる毎日を送りながら、常識外れな人たちやその子供として生まれた男の子を見ることになったが、シーラたちが思っているようなことにはなっていなかった。
(そっくりな男の子に成長してるとは思わなかったわ。これは、関わらない方が良さそうね)
あの家で、両親を手本にした男の子は、ゲラーシーのような子息に成長していたのだ。
(それでも、跡継ぎだからと思っているのだとしたら、大変なことになりそうね)
手におえなくなって別の国に留学させて、散々なことをしたようだ。あちらの学園から苦情と抗議の山を受け取ることになり、それでも何かの誤解だと頑張っていたようだ。
そんなことで、変に頑張らずに見限ればよかったと思うが、最終的には勘当するだけで済まなくなって、爵位を返上するまでになったのも、シーラだけでなくてみんながいずれはそうなるだろうと思っていたことだった。
(血の繋がりはなくとも、男の子だからと期待していたのかも知れないわね。子育てなんて、娘たちにはしたことないのに男の子なら立派に育てられるって、どうして思ったのかしら。そこが不思議でならないわ)
シーラはそんなことを思ったが、マティアスとの子供たちが、そんな風に成長しなかったことに安堵していた。二人の子供たちはシーラに似た髪の色をしていた。
ヴァジムのところに生まれた子供たちも、娘が珍しい髪の色を受け継いで生まれたことで、ボリスとエルヴィーラはそれを大いに喜んでいた。
しかも、心配していたヴァジムの性格を子供たちは引き継がなかったことにも安堵していた。ただ、娘がエルヴィーラにそっくりなため、だいぶ手こずっているようだが……。ボリスだけが、それにデレデレしているようだ。
シーラたちの子供たちは、どちらにも似ていた。若干、マティアスの実母の従姉に似ているところがあったが、心配するほどではなかった。それにシーラは密かにホッとしていた。
(実父や姉と妹みたいな性格でなくて本当によかったわ)
こうして、シーラは生まれ育った国で、幸せいっぱいの人生を愛してやまない人たちに囲まれながら、笑顔溢れる日々を送ることができたのだった。
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