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それから、しばらくして連休の時に一度帰宅してほしいと言われてヴァジムとシーラは家に戻った。

エルヴィーラは、物凄く嬉しそうな笑顔で二人を迎えてくれたが、その目がちっとも笑っていなかったのを見過ごすことはなかった。


(この目は、あの人と対峙した時よりも、まずいわね)


シーラとヴァジムは、目配せをした。かなり怒っているとわかり、シーラは学園で作ったお菓子を手土産にして渡したら、大喜びしていくぶんよくなった。

ボリスも帰宅して、二人を見て微笑んで、更にシーラの作ったお菓子があると聞いて嬉しそうにした。

こちらは、エルヴィーラのように思い出したかのように目がピリつくこともなくて、シーラとヴァジムはホッとしていた。


「再婚相手に子供が生まれた」
「っ、もう、ですか?」
「そうよ。早く生まれわけでもなく、予定日より遅れて生まれたようだけど、もう生まれているわ」
「「……」」


それは、エルヴィーラがピリつくはずだと思ってしまった。シーラの母で、エルヴィーラの妹が亡くなって7ヶ月が過ぎた。

それなのに予定日より遅くに生まれたとなれば、とんでもない時に浮気していたのがわかってしまう。


「男の子だったそうよ」
「男の子」


(なら、父は今頃、大喜びしているわね)


シーラは、浮かれた父を見たことがなかったが、息子にデレデレしているのを想像していた。


「でも、あの男の実の子供ではなさそうよ」
「え?」


どういうことだろうとシーラとヴァジムは、わけがわからずに首を傾げていた。


「肌の色と瞳の色合いが、どちらの家系にも似てない色合いらしいわ」
「なら、その赤ん坊は……」
「再婚した女性のお相手は、あの男以外にもいたってことよ」
「……」


それを聞いて、遠い目をしてしまった。


(でも、どっちも、どっちよね。浮気していたんだもの)


そう思ったシーラは自分の息子ではないとわかったのなら、あの人がそのままにしておくわけかないと思っていた。


「それじゃ、すぐに離婚をしたんですか?」
「してないわ。再婚相手のご両親と結婚する時に何があっても離婚しないと約束して誓約書を書いて結婚したから、それを反故にできないそうよ。たとえ、女の子が生まれようとも、似ても似つかない男の子が生まれようとも、離婚はしないと書いたせいで離婚はできないわ」
「でも、相手は他の男性と浮気をしていたんですよね? 別の男との子供なのに育てるんですか?」
「それこそ、相手のご両親が娘のことをよくわかっていたようで、それでもいいからと喪が明けずに結婚する条件に色々と盛り込んでしまって、自分で自分の首を絞めただけのようになったわ」


そこまでしたのが、離婚したがることになるとは思っていなかったことにシーラは何とも言えない顔をしていた。


「……離婚もできずに別の男性との子供を育てるしかなくなったんですね」
「そういうことよ。ただですら、散々なまでに非常識なことをしてきたから、誰に愚痴ったところで理解されてないそうよ。むしろ、お似合いじゃないかと上司に言われて、職場で笑いものにされているとか」
「……」


シーラは、ざまぁみろとは思えなかった。

きっと、シーラの知らないところで、たくさんの人にそう思われているだろう。それでも、シーラは心の中ですら、実父にざまぁみろとは思えなかった。


(複雑な気分だわ。姉と妹なら、ざまぁみろって思うでしょうけど、どうにも私は思えそうにないわ)


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