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しおりを挟む「我慢の限界を超える……?」
「その、聞いているのかはわからないが、君の実父が再婚したんだ」
「……は?」
シーラは、マティアスの言葉に反応が遅れた。
(再婚……? え? 結婚したの??)
ヴァジムの方が、驚きを言葉にしていた。
「叔父上が……? まだ、喪が明けるまで数ヶ月あるはずだが」
「それが、シーラ嬢が侯爵家の養子になって、すぐに再婚をしたんだ」
「「……」」
シーラだけでなくて、ヴァジムも、絶句していた。
ダヴィットは、それを聞いてはいるが、隣にいるアウギュスタの顔を見てにこにことしたままだった。
「しかも、その、再婚相手が妊娠してたのよ」
「その子は、父の……?」
「認めていた」
「っ、アルヴァとリネーアは?」
「再婚相手に色んなものを買ってもらって懐いていた。そうなって、以前のように私と出かけたいと騒ぐようになって、もう支えるなんて私には無理だと思って破棄したんだ」
「……」
王女が、我慢の限界なんか、とっくに超えていたと言うのが理解できた。
シーラは、父や姉のことで申し訳ない気持ちになってマティアスに謝罪していた。
「シーラ嬢が、謝ることではないよ。それこそ、喪に服す格好もせずに出かけようとしていたのを見た時に合わないと思っていたんだ。それだけではない。君が散々なことをしているのを見ていたのに母君が病気になって、残念なことになったんだ。そんな時に破棄になっては大変だろうと思って気を遣っていたんだが、わかってもらえていなかったことに驚いているけど、君は何も悪くないよ」
マティアスは、時期を見てとずっと思ってくれていたのだ。
(それなのにお姉様は、気づいてもいなかったのよね。お姉様には、勿体なさすぎる方だと常々思っていたのよね)
「どっかの誰かは、気なんか遣わずに好き勝手してたけどね。リネーアとラーシュも、婚約が破棄になったのよ」
「え? 妹も……?」
(私から、婚約者を奪って、そんなに経ってはいないのに)
それこそ、タイミングを見計らって動かないとさらにラーシュの家が大変なことになるだけだ。それなのに悪化させるだけのことをこの時期にするとはとシーラだけでなくて、ヴァジムも驚いた顔をしていた。
王太子は、あまり驚いていないから、知っていたのかも知れない。いや、王女がいるのが嬉しくて、それどころではないのかも知れないが。
「ラーシュの母親が、リネーアの父親が再婚したことに腹を立てたのよ。妻は床にふしている時に浮気していたんだもの。それに憤慨するなら、息子とリネーアを婚約させるタイミングにも気を配るべきだったのだけどね。ラーシュは、父親に喪に服す期間の令嬢と破棄を2回して、婚約までした。元々、喪が明けたら、跡継ぎを替えて勘当すると話していたのにその母親であり妻が、また凝りもせずに当主である夫に話もせずにさっさと破棄させたのよ。それで、離婚することも早まって息子と一緒に追い出されたわ」
「……」
それを聞いて、何とも言えない顔をしたのは、それを知っている以外の面々だった。
(あの夫人は、相変わらずだったみたいね)
シーラは、遠い目をしていた。タイミングなんてことは、頭にないのだ。やりたいと思ったことは、即行動してしまう。それで、散々痛い目にあっているはずなのに凝りてはいないのだ。
きっと、その性格は直らないだろう。直す気もないようだが。
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