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しおりを挟む「お父様。急に帰って来いなんて、どうしたの? もしかして、ゲラーシー様と婚約できるの?!」
「婚約だと? お前、侯爵家の養子となった令嬢に迷惑をかけているそうだな?」
「迷惑なんてかけていないわ! あの女が、ゲラーシー様のことを誑かしていたのを認めさせようとしているだけよ!」
ナタリアの言葉に眉を顰めていた。
「誑かす? 隣国で、散々なことをして来たことは耳にしている。彼は、留年するそうだ」
「りゅ、留年?! そんな、留学生にまでなったのに何かの間違いよ!」
ナタリアは、そんなわけないと言っていたが、父親は冷めた目をしていた。
「留学してはいたが、その間に殆ど授業に出ていなかったそうだ。最低限の授業のみで、あとは街で遊び回っていた」
「そんなはずないわ。お父様、何かの間違いよ」
ナタリアは、ゲラーシーが勘違いされていると思って、誤解を解こうとしていた。
「これは、王弟殿下も認めた。あちらの学園で、失礼な態度を取って、身分を偽り、つり合わないからと親切に交流しようとした生徒たちや先生方まで遠ざけていたこともない。その令嬢は、お世話係を先生から任されて話しかけていたそうだ。たった数回の親切で、感謝するのはわかる。だが、その令嬢の母親の葬儀に喪服をあつらえてまで出席までしたそうではないか」
父親の言葉にナタリアは、目をパチクリさせた。
「あつらえた……? でも、学生は、制服で出席するものでしょう?」
「そうだ。その令嬢も、他の姉妹も、学園生たちはみんな制服だったのに彼一人があつらえた喪服で出席して、そのせいで姉妹の婚約していない末の妹の婚約者ではないかと憶測まで飛び交ったそうだ」
「っ、」
ナタリアは、ゲラーシーがそんなことをしたとは信じられない顔をしていたが、そんな格好をして出席したら、どうなるかなんて簡単に予想できたことだろう。
「その上、あちらで試験も受けずに戻って来て、何をしようとしていたと思う? その令嬢の婚約を解消させて、自分が婚約するのにどうしたらよいかと画策するために戻って来ていたそうではないか。それをその令嬢に好き勝手していたのを暴露されたからと今度は、あることないことを広めて、お前だけが学園で信じているそうではないか」
「それは、だって、ゲラーシー様がそんなことをしているとは思わなくて……」
「これまでずっと散々していただろうが。全く、そんなのと婚約したいと言い張って、どれだけ迷惑していると思っているんだ? 今回のことで、お前を誰かと婚約させるのは諦めた。学園を卒業したら、修道院に入れ」
「っ、そんな! お父様、あんまりです!」
「あんまりだと?! 学園の卒業まで待ってやるんだ。本来なら、すぐにでも勘当したいが、侯爵家の当主は、お前がきちんとその令嬢に謝罪して、今後一切関わらなければ許すとまで言ってくれているんだ。さっさと戻って、その令嬢に詫びろ!」
「っ、」
「その後の態度で、他に貰い手が現れれば修道院には行かせはしなくて済むんだがな。散々なことをしているのを学園で見られているようだから、期待なんてしない方がいいだろう」
ナタリアは、悔しくて仕方がなかった。それでも、婚約さえできれば、修道院に行かずに済むと思っていた。
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