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しおりを挟むシーラは、そわそわしながらエルヴィーラとボリスが戻って来るのを待っていた。
どこかに出かける気にもなれず、他愛もない話をしてはいたが、どちらも時間を気にしていた。物凄く経った気がしたが、時間を確認するとそんなにはかかっていないのだ。
(まだ、しばらくは帰っては来ないわよね)
そんなことを思っていたら、ボリスが戻って来たことにシーラは驚いてしまった。それは、エルヴィーラも同じようだ。すぐに立ち上がってボリスの側に駆け寄っていた。
「……」
「旦那様」
「あれは、駄目だ」
ボリスが殺気立って戻って来た。それは凄まじいものだった。
その怒りがよくわかると言うようにエルヴィーラは夫の両手を一応確認していた。血しぶきも、殴ったような跡もないことにホッとしていたが、そんな確認をしていることにシーラは気づいていなかった。エルヴィーラだから、わかったのだろう。
(この方をここまで怒らせるなんて、ある意味凄いと思ってしまうわ)
そんな殺気だらけでも、シーラを見るとボリスの殺気はかき消えたのだ。それどころか、ホッとしたような顔をしていた。
きっと、彼を怒らせるような人にとっては怖い人なのだろう。エルヴィーラを見ても怒りがおさまらなかったが、シーラを見ておさめたのだ。怖がらせたくないのか。向ける相手ではないと思ってのことかはわからないが。
「シーラ」
「はい」
「……あれよりマシな父親になる」
「ごほん。旦那様」
エルヴィーラがわざとらしく咳払いをした。ボリスが、思案して言い直したのは、数秒だった。
「……誇れる養父になる」
「そんな心配無用です。あれより酷い父親なんて、見つける方が難しいと思いますから」
シーラが、ついポロッと言ってしまい、あっと口をおさえた。
ボリスとエルヴィーラは、そんな言い方は……と言いながら笑っていた。
(そういえば、あの家で、こんな風に笑える相手は、お母様しかいなかったのよね)
そんなことを思い返していたシーラは、この二人が養父母になってくれることを嬉しく思い、頼もしく思えてならなかった。父親や姉妹が、シーラに何かしてきても、黙って我慢することもなくなりそうだ。
(私が知らない間に何かしてくれて終わってそうよね)
そう思ったシーラは、背筋を伸ばした。
「あの、お養父様、お養母様。これから、自慢に思っていただけるような立派な令嬢になります。よろしくお願いいたします」
二人は、そんなシーラを見て微笑んでいた。
「私もよ。あなたが、我が家に来て心からよかったと思うように全力を注ぐわ。妹が、あなたにしてあげたかったことも、私にさせてちょうだいね。娘がほしかった私にこんな素晴らしいチャンスをくれたんだもの」
エルヴィーラは、そう言ってシーラを抱きしめてくれた。
母を思い出したシーラは、泣き出した。一人でひっそりと泣くばかりで、同じように泣いてくれる人は、あの家に一人もいなかったのだ。でも、エルヴィーラはシーラを抱きしめて泣いてくれたのだ。
それが、嬉しくて仕方がなかった。
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