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しおりを挟むそれこそ、学園ではアルヴァとリネーアと姉妹のせいで、シーラまでもが遠巻きに見られ始めていた。アルヴァの婚約者の子息が、そんなことを話すわけがない。話しても、両親くらいだろう。それを広めるとしたら、リネーアの友達辺りが面白おかしく話したのだろう。リネーアの友達は噂好きな面々が集まっていた。特にその中でも、リネーアがあることないことをべらべらと話すせいで、迷惑をしていた者も多くいた。すぐに広まったのも、その仕返しかも知れない。
あの三姉妹は、母親が亡くなったのにおかしなことばかりしていて、ちっとも悲しんではいないと。
とある方がいてくれたら、そんなことなく気さくに話しかけてくれるところだろうが、彼女は留学生の言葉に激怒してしまい、近々、婚約者のいる国に留学する予定なこともあり、別で勉強することになって会えていなかった。
それこそ、留学生がいなくなっても、すぐに切り替えなかったのは、留学で危ういところでもあったのかも知れない。思い当たるとしたら、色合いのちょっとした違いが、その国は物凄く難しいのだ。それを勉強するのに四苦八苦しているのかも知れない。
その方と仲良くなったのも、シーラが、その色合いの微妙な違いに詳しかったからだった。それも、母親が教えてくれたことだった。姉が嫁いだ国のことを勉強したのだ。今の王妃も、隣国から嫁いで来られた方なため、勉強しておいて損なことにはならなかったようだ。そのために三姉妹にも教えようとしたが、シーラ以外は必要ないと言い、まともに聞いてくれたことは一度もなかった。
そのため、学園ではみんな厄介なことに巻き込まれたくないのだろう。シーラも、わざわざ巻き込む気がないため、大人しくしていた。
(いい加減、常識がないことに気づいてくれると有り難いんだけど……。無理そうね)
アルヴァは、婚約者が駄目ならばと末の妹のように友達の令嬢と出かけようと躍起になっていた。自分なら、リネーアよりも友達と簡単に出かけられると見せたかったのかも知れない。でも、それが上手くいったことはなかった。
リネーアは友達の反応がいまいちなことから、子息たちに何かと話しかけていたが、その反応もいまいちで、それならばと選んだ相手が最悪だったら、シーラの婚約者で伯爵家の令息であるラーシュ・ノルデンショルドとよく話すようになったのだ。アルヴァの婚約者とも話そうとしていたが、あちらは距離を一定にしたままで、ラーシュの反応のよさから彼に狙いを定めたようだ。
見た目だけは可愛らしいリネーアに話しかけられるのが嬉しいのか。ラーシュは嬉しそうにしていて、それを見てシーラは呆れるばかりだった。
それに呆れていたのは、シーラ以外も多かったようだが楽しそうにしている二人は全く気づいていないようだ。
(鼻の下をのばせるのは、彼くらいよね。周りから、どう見られているかがわかってないみたいだし)
シーラは、婚約者として彼に色々言い、妹にもきちんと言うが話が通じたことはなかった。
(まぁ、他の方の婚約者にちょっかいかけられるよりは、マシよね。他の人なら、話が通じなくとも、もっと言わなきゃならないけど、私の婚約者だものね)
だから、面倒くさくなってしまい、シーラは数回忠告するだけで、どちらにもやめるように言うことをしなくなった。
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