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しおりを挟むリネーアも、アルヴァのいるところといないところでは言うことも態度も真逆だった。その辺は、そっくりな姉妹だったが、妹には婚約者がいない。そのため友達と流行りの格好で出かけようとしていたようだが、みんな急に用事ができたと帰ってしまったらしく、ぷんぷんと怒って帰って来たことも、すれからすぐのことだった。
(あの、格好で出かけたのね。自慢したいから、いつも目立つ格好をしたがるけど、今日のはいつもに増して凄いわね。最近、自慢できてないからだとしても、この時期にする格好ではないわね)
シーラは、怒り狂って帰って来たリネーアの姿に呆れた顔をしていた。それに見たことない服のような気がして首を傾げた。
(珍しいわね。新調したら、すぐに着たくなるのに。いつ新調したのかしら?)
そんなことを思って姉と妹の会話をそれとなく聞いていた。
「あなたもなの? 私も、友達と出かけようとしても、反応が悪いのよね」
「お姉様もなの? もう、今日のために流行りの服を新調したのに無駄になってしまったわ」
「っ、」
(この時期に服を……? リネーアの友達なら、最新の服を新調したのも、すぐにわかったでしょうね)
みんなリネーアを見るなり、用事を思い出したのもシーラは仕方がないと思っていたが、リネーアは全くわからないようだ。アルヴァも最低ねと話していて、まるでわかっていないようだ。
どちらの友達も、なんだかんだと言っても常識はしっかりとある令嬢たちばかりということだろう。そんなことをして、家の評判まで傷つけてしまえば、婚約者がいれば彼にも彼の家にも迷惑をかけてしまう。
(そんなことも考えてないのが、姉と妹ってことよね)
その後、リネーアが友達を誘っても、みんな忙しいとはぐらかして、誰も一緒に出かけてくれないようだ。それにリネーアは、文句ばかり言っていた。
(そりゃ、そうよ。母親を亡くした令嬢が、喪に服す格好もせずに派手めな格好して、その都度、新調したものを着て出かける気満々で来たら、隣を歩いている人たちまで色々言われるに決まってるもの。そんな令嬢と歩きたくないわよ。私だって、そんな友達がいたら離れてくわ)
シーラは、そんなことを思っていた。
それこそ、三姉妹の父親も喪中が始まってまもない時期に地味な格好をさっさとやめて仕事に戻ったようだ。色々言われているはずだが、大して気にしていないように見える。それか周りに何を言われていても聞こえてないかのどちらかだろう。
(妻のことなど、どうも思っていないと示すにしても、敬意の欠片もないことしてるのよね。3人のまだ成人していない娘たちを残して死んだことにも、何とも思っていないって言っているようなものなのに)
それこそ、他の父親ならば、喪中の期間を長くして、年若い娘たちに喪中期間を短くして、良縁を求めていると示すために喪中の後半あたりで、娘たちに地味な色合いより、少し明るめな服装をさせたりするものだ。
そんなことなく、喪中期間なんて無視していいみたいな父や姉妹にシーラは、げんなりしていた。
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