上 下
2 / 4

しおりを挟む

しょんぼりしながら、クレメンティアは両親に婚約破棄の話をした。

だが、両親はクレメンティアからその話を聞いて眉を顰めたのだ。


「それは、おかしいな」
「? 何がですか?」
「ねぇ、クレメンティア。婚約者に破棄したいと言われたことはあるの?」
「いいえ。ありません。でも、幼なじみと居るときの方が表情豊かなんです。私の前では笑うこともなくて……」
「そうか。だが、あちらの家からは、お前に息子が一目惚れしたから、どうしても婚約させてやりたいと頼みこまれているんだ」
「一目惚れ……?」


クレメンティアは、両親の話に信じられないと驚いてしまった。


(じゃあ、何で、私の前では笑ってくれないの……?)


きちんと話し合った方がいいと言われて、アルベリックと会って話すことになったのだが、彼はクレメンティアが話す前に見たことないくらい焦った顔をしていた。

どうやら、両親がアルベリックの両親の方に話していたようで、それをアルベリックは聞かされて、ここに来たようだ。


(こんな表情もできたのね)


アルベリックから言い訳でも聞かされるのか。はたまた、さっさと破棄しろと言われるのかと思ったが、アルベリックはクレメンティアの思っているようなことを言うことはなかったのだ。

それこそ、破棄など考えたこともない!と珍しく声を荒げて反論されたことにクレメンティアはびっくりしてしまって、肩が跳ね上がってしまうほどだった。

それが、アルベリックは気に入らなかったのかもしれない。眉を顰めて、クレメンティアを見ているのがわかって、そんなことを思ってしまっていた。


「そんなに私が気に入らないのか?」
「いいえ。あの、ペルネティアが、破棄したがってるって教えてくれて……」
「は? あいつが?」


するとアルベリックは、険しい顔をし始めてクレメンティアは、おろおろしてしまった。


(私は、笑顔を向けて欲しかっただけなのだけど……)


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の元恋人が復縁を望んでいるので、婚約破棄してお返しします。

coco
恋愛
「彼を返して!」 婚約者の元恋人は、復縁を望んでいる様だ。 彼も、まんざらではないらしい。 そういうことなら、婚約破棄してお返ししますね。 でも、後から要らないと言うのは無しですから。 あなたは、どんな彼でも愛せるんでしょ─?

【完結】浮気現場を目撃してしまい、婚約者の態度が冷たかった理由を理解しました

紫崎 藍華
恋愛
ネヴィルから幸せにすると誓われタバサは婚約を了承した。 だがそれは過去の話。 今は当時の情熱的な態度が嘘のように冷めた関係になっていた。 ある日、タバサはネヴィルの自宅を訪ね、浮気現場を目撃してしまう。 タバサは冷たい態度を取られている理由を理解した。

お前は要らない、ですか。そうですか、分かりました。では私は去りますね。あ、私、こう見えても人気があるので、次の相手もすぐに見つかりますよ。

四季
恋愛
お前は要らない、ですか。 そうですか、分かりました。 では私は去りますね。

愛する人の手を取るために

碧水 遥
恋愛
「何が茶会だ、ドレスだ、アクセサリーだ!!そんなちゃらちゃら遊んでいる女など、私に相応しくない!!」  わたくしは……あなたをお支えしてきたつもりでした。でも……必要なかったのですね……。

「華がない」と婚約破棄された私が、王家主催の舞踏会で人気です。

百谷シカ
恋愛
「君には『華』というものがない。そんな妻は必要ない」 いるんだかいないんだかわからない、存在感のない私。 ニネヴィー伯爵令嬢ローズマリー・ボイスは婚約を破棄された。 「無難な妻を選んだつもりが、こうも無能な娘を生むとは」 父も私を見放し、母は意気消沈。 唯一の望みは、年末に控えた王家主催の舞踏会。 第1王子フランシス殿下と第2王子ピーター殿下の花嫁選びが行われる。 高望みはしない。 でも多くの貴族が集う舞踏会にはチャンスがある……はず。 「これで結果を出せなければお前を修道院に入れて離婚する」 父は無慈悲で母は絶望。 そんな私の推薦人となったのは、ゼント伯爵ジョシュア・ロス卿だった。 「ローズマリー、君は可愛い。君は君であれば完璧なんだ」 メルー侯爵令息でもありピーター殿下の親友でもあるゼント伯爵。 彼は私に勇気をくれた。希望をくれた。 初めて私自身を見て、褒めてくれる人だった。 3ヶ月の準備期間を経て迎える王家主催の舞踏会。 華がないという理由で婚約破棄された私は、私のままだった。 でも最有力候補と噂されたレーテルカルノ伯爵令嬢と共に注目の的。 そして親友が推薦した花嫁候補にピーター殿下はとても好意的だった。 でも、私の心は…… =================== (他「エブリスタ」様に投稿)

わたしのことはお気になさらず、どうぞ、元の恋人とよりを戻してください。

ふまさ
恋愛
「あたし、気付いたの。やっぱりリッキーしかいないって。リッキーだけを愛しているって」  人気のない校舎裏。熱っぽい双眸で訴えかけたのは、子爵令嬢のパティだ。正面には、伯爵令息のリッキーがいる。 「学園に通いはじめてすぐに他の令息に熱をあげて、ぼくを捨てたのは、きみじゃないか」 「捨てたなんて……だって、子爵令嬢のあたしが、侯爵令息様に逆らえるはずないじゃない……だから、あたし」  一歩近付くパティに、リッキーが一歩、後退る。明らかな動揺が見えた。 「そ、そんな顔しても無駄だよ。きみから侯爵令息に言い寄っていたことも、その侯爵令息に最近婚約者ができたことも、ぼくだってちゃんと知ってるんだからな。あてがはずれて、仕方なくぼくのところに戻って来たんだろ?!」 「……そんな、ひどい」  しくしくと、パティは泣き出した。リッキーが、うっと怯む。 「ど、どちらにせよ、もう遅いよ。ぼくには婚約者がいる。きみだって知ってるだろ?」 「あたしが好きなら、そんなもの、解消すればいいじゃない!」  パティが叫ぶ。無茶苦茶だわ、と胸中で呟いたのは、二人からは死角になるところで聞き耳を立てていた伯爵令嬢のシャノン──リッキーの婚約者だった。  昔からパティが大好きだったリッキーもさすがに呆れているのでは、と考えていたシャノンだったが──。 「……そんなにぼくのこと、好きなの?」  予想もしないリッキーの質問に、シャノンは目を丸くした。対してパティは、目を輝かせた。 「好き! 大好き!」  リッキーは「そ、そっか……」と、満更でもない様子だ。それは、パティも感じたのだろう。 「リッキー。ねえ、どうなの? 返事は?」  パティが詰め寄る。悩んだすえのリッキーの答えは、 「……少し、考える時間がほしい」  だった。

貴方もヒロインのところに行くのね? [完]

風龍佳乃
恋愛
元気で活発だったマデリーンは アカデミーに入学すると生活が一変し てしまった 友人となったサブリナはマデリーンと 仲良くなった男性を次々と奪っていき そしてマデリーンに愛を告白した バーレンまでもがサブリナと一緒に居た マデリーンは過去に決別して 隣国へと旅立ち新しい生活を送る。 そして帰国したマデリーンは 目を引く美しい蝶になっていた

婚約者が浮気相手にプロポーズしています

おこめ
恋愛
シトリンには2歳年上の婚約者がいる。 学園を卒業してすぐに結婚する予定だったのだが、彼はシトリンではない別の女にプロポーズをしていた。 婚約者を差し置いて浮気相手にプロポーズするバカを切り捨てる話。 ご都合主義。

処理中です...