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しおりを挟む(あんな風に笑えたのね)
クレメンティアは、婚約者のアルベリックは堅物で笑うことなどない人だとずっと思っていたが、そんなことなかったようだ。彼が幼なじみのペルネティアに見せる笑顔を見て違っていたのだとわかり、その柔らかな笑顔が脳裏に焼き付いてしまい、クレメンティアは物凄いショックを受けてしまっていた。
(お似合いって、言われているだけあるわね)
そんな姿を見ることになったのは、一度や二度ではなかった。アルベリックは、クレメンティアに幼なじみには勉強を教えているだけだと言っていたが、二人と居るとどう見ても、あの二人の雰囲気が良すぎてクレメンティアの方が、お邪魔虫にしか見えなくなってしまうのだ。
周りも、クレメンティアとアルベリックが婚約する前から仲良くしている幼なじみのペルネティアの方がお似合いで、そんな二人が婚約できなくて可哀想だとクレメンティアの前でわざわざ口にする者までいるくらいだった。クレメンティアは、それを言われなくとも、わかっていることだと思っていて、痛たまれない気持ちが消えることはなかった。
(そうとわかっていたら、私だってお邪魔虫になんてのらずに婚約の話だって断っていたわよ。本当に知らなかっただけなのに。どうして、私一人が責められなきゃならないのよ!)
そう思っていたところで、ペルネティアに呼び出されて、婚約破棄をしてほしいと言われて、あぁ、ついにその話をしに来たのねと思いつつ、同時にちょっとだけ安堵を覚えた。
(でも、せめて、そのことを言う相手は、彼女じゃなくて、婚約者から聞きたかったわ)
間近で見ても、ペルネティアは可愛らしい令嬢だ。小柄で守ってあげたくなるのも無理はない。
それに比べてクレメンティアは、令嬢としては大きい方で護身術も習わされていて、自分の身は自分で守れと言われてきたこともあり、令嬢としては異例なところがあった。
影では、男女などと言われていることも知っていた。だからこそ、この婚約の話を断ったら、次はないと思っていたことも大きかった。
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