私が、幼なじみの婚約者で居続けた理由は好きな人がいたから……だったはずなんですけどね

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
10 / 10

10

しおりを挟む

王女とは従姉妹どうしだが、あったことのないはずなのに留学して来たヴィルジニアは、すっかり仲良くなっていた。

ルクレツィアが、王女の家庭教師になったと知って猛勉強して、ヴィルジニアは留学して来たのだ。ベレンガーリオとの婚約の話をルクレツィアが断ったのも大きかったようだ。

そして、王女は王太子と第2王子の仲を取りもつことに見事、成功していた。

王女の頭の良さに王太子と第2王子は、びっくりしていたし、王妃も、国王も、頭が良すぎたことで問題児だと思っていたと申し訳なさそうにしていたが、王女は全く気にしていなかった。

彼女のやりたいことは、王太子と第2王子と自分とそして、ヴィルジニアも加わって仲良くできれば、それでよかったのだ。

そんな王女は、ヴィルジニアという友達もできて大喜びしていた。ヴィルジニアから、絵を習うようになったのは、王女と第2王子だ。

王女の家庭教師は、絵なんかで時間を無駄にするのかと言い出して口論となり、即日解雇された。

ヴィルジニアは、隣国でコンクールを総なめするレベルになっていたが、それでもあの家庭教師には勉強が全てだったようだ。

そんなことがあったのも、すっかり忘れてをヴィルジニアの教える描き方に王女も第2王子も、楽しそうにしていた。


「こんな風に絵を描いたことないわ!」
「そうだな。絵の先生は、見たままって言うからな」


ヴィルジニアは、絵を描きながら勉強したことで、描ききった絵の中に本当に世界が広がっているように生き生きしているものを描き上げていくまでになっていた。

それを王太子とルクレツィアは、微笑ましそうに見ていた。この頃にはルクレツィアは、王太子と婚約していた。

彼は、グラツィアーニ公爵には似ていなかった。それにアンセルモにも、ベレンガーリオにも似ていなかった。


「あんなに楽しそうにしているのを見れるとは思わなかった」
「?」
「あいつは、私といるとあんな風に笑ってくれたことがないんだ」
「でしたら、まず、笑うようにしては、どうですか?」
「……私がか?」
「えぇ」
「そうか。それは、やったことがないな」


そこから、王太子が笑うようになり、王女が益々嬉しそうに笑い、第2王子もちょっと緊張しながらも笑うようになったが……。


「仲良しでいいな」
「ヴィルジニア?」
「……私、お兄様も、お兄様の婚約者も、苦手」


どうやら、ルクレツィアに断られたのは、ヴィルジニアのせいだと言い出したようだ。そのことで、ベレンガーリオは両親にも叱られ説教されたが、妹のせいにしたまま、婚約した令嬢に嫌われまいとしているようだ。


「また、やったんですね」
「また?」
「えぇ、兄として妹に恥をかかせるようなことをしたところが、気に入らなかったから断ったんです。それに妹の勉強の邪魔を毎回するし……。今回もまたヴィルジニアのせいにしたんですね」
「お姉様。いいのよ。今じゃ、両親も、お兄様の情けないところが目に余るって言っているし、何なら私を跡継ぎにしてもいいって言ってくれてるくらい、成績はお兄様を追い抜いてしまっているんだもの。……あんな情けない兄なら、いらないわ」


そう言いながら、兄の婚約者が跡継ぎじゃなくなるのが困ると嫌がらせをヴィルジニアにして来るのも、嫌だと言っていた。

そんなヴィルジニアと第2王子が婚約をした。あちらに第2王子が留学しに行って、ベレンガーリオと婚約者の令嬢はヴィルジニアの婚約者が誰なのかを聞かされていなかったらしく、罵詈雑言を浴びせかけて大変なことになったようだ。

ベレンガーリオたちの婚約は破棄となり、2人とも勘当されてしまったようだ。


「最悪ね。ヴィルジニア、大丈夫かな?」
「あいつが、側にいるんだ。大丈夫だろう」
「そうよね!」


こうして、ヴィルジニアとルクレツィアは義理の姉妹になることになった。

王女は、それを物凄く羨ましがったが、ルクレツィアの実家で養子にした子息にロックオンして、追いかけ回しているのにルクレツィアは、嫌われないだろうかと心配になってしまったが、そんなことはなかった。

ルクレツィアの両親は、王女が嫁いで来ることを大喜びして、養子となった子息も嬉しそうにしていた。

ルクレツィアは義理の妹たちができて喜び、弟妹たちが幸せになっていくのとルクレツィアが嬉しそうにしているのを見て、王太子も嬉しそうにしていた。

そんな2人は、いつ見ても仲睦まじくしていて、理想そのものだと言われるようになったが、ルクレツィアは一般的な理想がよくわからなかった。

ただ、初恋の人だったはずのティオフィロを久しぶりに見たが、ルクレツィアは誰だかわからないほど老いていた。再婚相手と息子と妻の連れ子の奔放っぷりに加えて、妻も好き勝手にする相手をするうちに信用も、信頼も、どんどん失くしていって、頼れる人がいなくなっていたようだ。

そんな王弟が、王太子やその妻であるルクレツィアや他の者に縋ろうとするのを国王が許すことはなく、守られているおかげで、ルクレツィアは幸せいっぱいの人生を送ることができたのだった。



しおりを挟む

この作品は感想を受け付けておりません。

あなたにおすすめの小説

婚約破棄を、あなたのために

月山 歩
恋愛
私はあなたが好きだけど、あなたは彼女が好きなのね。だから、婚約破棄してあげる。そうして、別れたはずが、彼は騎士となり、領主になると、褒章は私を妻にと望んだ。どうして私?彼女のことはもういいの?それともこれは、あなたの人生を台無しにした私への復讐なの?

こんな人とは頼まれても婚約したくありません!

Mayoi
恋愛
ダミアンからの辛辣な一言で始まった縁談は、いきなり終わりに向かって進み始めた。 最初から望んでいないような態度に無理に婚約する必要はないと考えたジュディスは狙い通りに破談となった。 しかし、どうしてか妹のユーニスがダミアンとの縁談を望んでしまった。 不幸な結末が予想できたが、それもユーニスの選んだこと。 ジュディスは妹の行く末を見守りつつ、自分の幸せを求めた。

公爵令嬢の婚約解消宣言

宵闇 月
恋愛
拗らせ王太子と婚約者の公爵令嬢のお話。

政略で婚約した二人は果たして幸せになれるのか

よーこ
恋愛
公爵令嬢アンジェリカには七才の時からの婚約者がいる。 その婚約者に突然呼び出され、婚約の白紙撤回を提案されてしまう。 婚約者を愛しているアンジェリカは婚約を白紙にはしたくない。 けれど相手の幸せを考えれば、婚約は撤回すべきなのかもしれない。 そう思ったアンジェリカは、本当は嫌だったけど婚約撤回に承諾した。

さっさと婚約破棄が皆のお望みです

hmp
恋愛
子爵令嬢であるセレーナ・シャープルズの下へ、縁もゆかりもない伯爵家から婚約の打診が届く。幼馴染みのアンドリュー・ローフォード公爵は縁組に反対し、相手方に婚約破棄させる方法を画策する。皆が望むならとセレーナも協力するけれど、そのうちに正式な婚約披露パーティーが決まってしまう。助けを求めた幼馴染みの横には、見知らぬ女性がいた。怒りっぽくなっていく婚約者に、会話を持たない両親、一体、私が何をしたというの。私の意思などないのに。アンドリューは私を守るとそう言ったのに。そうして追い詰められていくセレーナは、ついに婚約を発表した後、意識を失い、目覚めた彼女は声を失っていた。 完結しました。ありがとうございます。

それは報われない恋のはずだった

ララ
恋愛
異母妹に全てを奪われた。‥‥ついには命までもーー。どうせ死ぬのなら最期くらい好きにしたっていいでしょう? 私には大好きな人がいる。幼いころの初恋。決して叶うことのない無謀な恋。 それはわかっていたから恐れ多くもこの気持ちを誰にも話すことはなかった。けれど‥‥死ぬと分かった今ならばもう何も怖いものなんてないわ。 忘れてくれたってかまわない。身勝手でしょう。でも許してね。これが最初で最後だから。あなたにこれ以上迷惑をかけることはないわ。 「幼き頃からあなたのことが好きでした。私の初恋です。本当に‥‥本当に大好きでした。ありがとう。そして‥‥さよなら。」 主人公 カミラ・フォーテール 異母妹 リリア・フォーテール

【完結】伯爵令嬢は婚約を終わりにしたい〜次期公爵の幸せのために婚約破棄されることを目指して悪女になったら、なぜか溺愛されてしまったようです〜

よどら文鳥
恋愛
 伯爵令嬢のミリアナは、次期公爵レインハルトと婚約関係である。  二人は特に問題もなく、順調に親睦を深めていった。  だがある日。  王女のシャーリャはミリアナに対して、「二人の婚約を解消してほしい、レインハルトは本当は私を愛しているの」と促した。  ミリアナは最初こそ信じなかったが王女が帰った後、レインハルトとの会話で王女のことを愛していることが判明した。  レインハルトの幸せをなによりも優先して考えているミリアナは、自分自身が嫌われて婚約破棄を宣告してもらえばいいという決断をする。  ミリアナはレインハルトの前では悪女になりきることを決意。  もともとミリアナは破天荒で活発な性格である。  そのため、悪女になりきるとはいっても、むしろあまり変わっていないことにもミリアナは気がついていない。  だが、悪女になって様々な作戦でレインハルトから嫌われるような行動をするが、なぜか全て感謝されてしまう。  それどころか、レインハルトからの愛情がどんどんと深くなっていき……? ※前回の作品同様、投稿前日に思いついて書いてみた作品なので、先のプロットや展開は未定です。今作も、完結までは書くつもりです。 ※第一話のキャラがざまぁされそうな感じはありますが、今回はざまぁがメインの作品ではありません。もしかしたら、このキャラも更生していい子になっちゃったりする可能性もあります。(このあたり、現時点ではどうするか展開考えていないです)

愛する人のためにできること。

恋愛
彼があの娘を愛するというのなら、私は彼の幸せのために手を尽くしましょう。 それが、私の、生きる意味。

処理中です...