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しおりを挟む王女とは従姉妹どうしだが、あったことのないはずなのに留学して来たヴィルジニアは、すっかり仲良くなっていた。
ルクレツィアが、王女の家庭教師になったと知って猛勉強して、ヴィルジニアは留学して来たのだ。ベレンガーリオとの婚約の話をルクレツィアが断ったのも大きかったようだ。
そして、王女は王太子と第2王子の仲を取りもつことに見事、成功していた。
王女の頭の良さに王太子と第2王子は、びっくりしていたし、王妃も、国王も、頭が良すぎたことで問題児だと思っていたと申し訳なさそうにしていたが、王女は全く気にしていなかった。
彼女のやりたいことは、王太子と第2王子と自分とそして、ヴィルジニアも加わって仲良くできれば、それでよかったのだ。
そんな王女は、ヴィルジニアという友達もできて大喜びしていた。ヴィルジニアから、絵を習うようになったのは、王女と第2王子だ。
王女の家庭教師は、絵なんかで時間を無駄にするのかと言い出して口論となり、即日解雇された。
ヴィルジニアは、隣国でコンクールを総なめするレベルになっていたが、それでもあの家庭教師には勉強が全てだったようだ。
そんなことがあったのも、すっかり忘れてをヴィルジニアの教える描き方に王女も第2王子も、楽しそうにしていた。
「こんな風に絵を描いたことないわ!」
「そうだな。絵の先生は、見たままって言うからな」
ヴィルジニアは、絵を描きながら勉強したことで、描ききった絵の中に本当に世界が広がっているように生き生きしているものを描き上げていくまでになっていた。
それを王太子とルクレツィアは、微笑ましそうに見ていた。この頃にはルクレツィアは、王太子と婚約していた。
彼は、グラツィアーニ公爵には似ていなかった。それにアンセルモにも、ベレンガーリオにも似ていなかった。
「あんなに楽しそうにしているのを見れるとは思わなかった」
「?」
「あいつは、私といるとあんな風に笑ってくれたことがないんだ」
「でしたら、まず、笑うようにしては、どうですか?」
「……私がか?」
「えぇ」
「そうか。それは、やったことがないな」
そこから、王太子が笑うようになり、王女が益々嬉しそうに笑い、第2王子もちょっと緊張しながらも笑うようになったが……。
「仲良しでいいな」
「ヴィルジニア?」
「……私、お兄様も、お兄様の婚約者も、苦手」
どうやら、ルクレツィアに断られたのは、ヴィルジニアのせいだと言い出したようだ。そのことで、ベレンガーリオは両親にも叱られ説教されたが、妹のせいにしたまま、婚約した令嬢に嫌われまいとしているようだ。
「また、やったんですね」
「また?」
「えぇ、兄として妹に恥をかかせるようなことをしたところが、気に入らなかったから断ったんです。それに妹の勉強の邪魔を毎回するし……。今回もまたヴィルジニアのせいにしたんですね」
「お姉様。いいのよ。今じゃ、両親も、お兄様の情けないところが目に余るって言っているし、何なら私を跡継ぎにしてもいいって言ってくれてるくらい、成績はお兄様を追い抜いてしまっているんだもの。……あんな情けない兄なら、いらないわ」
そう言いながら、兄の婚約者が跡継ぎじゃなくなるのが困ると嫌がらせをヴィルジニアにして来るのも、嫌だと言っていた。
そんなヴィルジニアと第2王子が婚約をした。あちらに第2王子が留学しに行って、ベレンガーリオと婚約者の令嬢はヴィルジニアの婚約者が誰なのかを聞かされていなかったらしく、罵詈雑言を浴びせかけて大変なことになったようだ。
ベレンガーリオたちの婚約は破棄となり、2人とも勘当されてしまったようだ。
「最悪ね。ヴィルジニア、大丈夫かな?」
「あいつが、側にいるんだ。大丈夫だろう」
「そうよね!」
こうして、ヴィルジニアとルクレツィアは義理の姉妹になることになった。
王女は、それを物凄く羨ましがったが、ルクレツィアの実家で養子にした子息にロックオンして、追いかけ回しているのにルクレツィアは、嫌われないだろうかと心配になってしまったが、そんなことはなかった。
ルクレツィアの両親は、王女が嫁いで来ることを大喜びして、養子となった子息も嬉しそうにしていた。
ルクレツィアは義理の妹たちができて喜び、弟妹たちが幸せになっていくのとルクレツィアが嬉しそうにしているのを見て、王太子も嬉しそうにしていた。
そんな2人は、いつ見ても仲睦まじくしていて、理想そのものだと言われるようになったが、ルクレツィアは一般的な理想がよくわからなかった。
ただ、初恋の人だったはずのティオフィロを久しぶりに見たが、ルクレツィアは誰だかわからないほど老いていた。再婚相手と息子と妻の連れ子の奔放っぷりに加えて、妻も好き勝手にする相手をするうちに信用も、信頼も、どんどん失くしていって、頼れる人がいなくなっていたようだ。
そんな王弟が、王太子やその妻であるルクレツィアや他の者に縋ろうとするのを国王が許すことはなく、守られているおかげで、ルクレツィアは幸せいっぱいの人生を送ることができたのだった。
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