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しおりを挟む(ヴィクトワール視点)
私には、わざとらしい妹がいる。何をしても、演技しているかのようにしていて、媚を売るのがとにかく上手い。
「お姉様」
あの子に呼ばれるたび、ゾワゾワするものがあった。
リュシエンヌが生まれてから、妹を中心に世界が動きだした。私が何をしても、あの子が中心のままなのだ。
ただ、にこにことしているだけのリュシエンヌのどこがそんなにいいのか。時折、媚びるようなことをしているのを見て、私はイライラしてならなかった。
何をしても、わざとらしいのだ。みんなそんなのに騙されているのだ。
「私は騙されたりしないわ」
リュシエンヌのように人生を台無しにされたくない。だから、私は私らしさを損なわないように気をつけ続けた。そうしたら、見ている人がいた。
「私が、婚約?」
「そうよ」
「っ、」
ルノレネイユ侯爵家の子息であるリシャールと婚約することになり、自分はやはり妹よりも上なのだと思って機嫌が良かった。
教えてくれた両親は、いまいち腑に落ちない顔をしていたが、きっとルノレネイユ侯爵ではなくて、もっと上の子息や王太子と婚約できると思っていたのだろう。
でも、仕方がない。両親が、仕方がなく妥協したのだ。サヴィニー伯爵家の長女として、文句なんか言ったりしなかった。両親が不満そうにしているのを見れて十分だった。
なのにリュシエンヌは、これ見よがしにキュヴィエ公爵家の子息と婚約したのだ。信じられなかった。姉を立てようとする気持ちすら、持ち合わせていないのだ。
いつも、姉を尊敬しているかのように装っていて、本心ではそんなこと思っていないのがわかる。
両親は、物凄く喜んでいた。でも、それもリュシエンヌを不快な目に合わせないためだろう。両親に気を遣わせて何をしているのやら。
これだから、駄目なのだ。そんなのが、キュヴィエ公爵家の子息と婚約したままでいいわけがない。
だから、テオドールとコンスタンスがやたらと一緒にいるのを見かけたから、破棄は間近だと思った。でも、浮気していると言うのも、あれだからオブラートに包んで伝えてやった。
感謝してほしいくらいだ。妹が、見苦しい破棄をしないようにしたのだ。
なのに蓋を開けたら、妹はプロポーズされていた。わけがわからなかった。
そして、破棄になったのは、私だった。
「信じられない。私が、破棄になったのに。自分だけ幸せになるなんて、許せない」
イライラしながら、帰宅して父にリュシエンヌのことをどうにかしてもらおうとした。でも、両親はリュシエンヌの味方だった。
周りもそう。みんな、みんなリュシエンヌに騙されている。
「私は、騙されないわよ」
リュシエンヌが、幸せになるのが許せなかった。許せるはずがない。だから、絶対に何が何でも邪魔してやる。そう固く違った。
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