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シーラが修道院に入ったと耳にするよりも、急に静かになったことにあれやこれやと話がなされた。学園では、急に静かになったことに何事かと思う者の方が多かった。

よく知る者たちは……。


「やっと静かになったわね」
「本当よね」
「妹さんも、可哀想よね。あんなのが姉で」


カルニカは、すっかり学園で有名になっていた。名前ではなくて、残念な姉を持つ妹という感じで覚えられていた。

あとは、クラナ侯爵家の令嬢と言われていたりした。幸いなことに名前で騒がれなかったから、まだ良かったのかも知れないが、その婚約者も同じように言われていたのもあってなのか。2人とも、元気がないようにプリシャには見えた。

最初は、幼なじみだけだったが、1人になると何やら落ち込んで見えてならなかった。婚約者が側にいると落ち込んでいられないからかも知れない。


「その婚約者も、一緒になって迷惑かけたと謝罪して回っているのを見てたけど、浮気しているようになんて全く見えなかったわ」


学園を卒業するまで、まだ日がだいぶあるのもあり、カルニカたちはこの後、穏便に過ごすために謝罪していた。


「そうよね。こんなことになっても、婚約者に付き添って、寄り添ってくれる素敵な婚約者がいるなんて嬉しいものよね」
「それも、あんな風に騒ぎ立てるから、お互いに周りに迷惑かけているから、婚約を解消までしようとしたそうよ」


それを聞いて、知らない者は物凄く驚いていた。

プリシャも、それを初めて知った時に驚いたほどだ。とても仲良くしているのにお姉さんの勘違いで、台無しになってしまうのかと思うと自分のことのように心が痛んだ。

だから、それを話すのが聞こえるとその時が思い出されて、何とも言えない顔をしてしまっていた。


「そんなことになりそうだったの?」
「それをお互いのご両親が、2人が思い合っているのがわかるからって、解消させなかったらしいわ」


カルニカたちは、そんな風に言われて、解消しようとまでしたことも知れ渡って、温かい目で見られるようになっていた。それだけでなく、2人を励ますようなことを言う者が圧倒的に多かった。

そのうち、カルニカとジテンドラたちは、プリシャですら見かけるたび、仲睦まじそうにしているのを見かけるようになった。

やはり周りの言っている通り、先に婚約した妹を姉は妬んでいたのだろうかとプリシャも思い始めた。幼なじみが元気がないように見えたのも、疲れ果てていただけかも知れない。その辺りのことをカルニカと話せていなかった。プリシャは、避けられているようだった。

それも無理もないとプリシャは思っていた。姉が、散々やらかしてプリシャのせいにしたのだ。謝罪してくれたから、プリシャはあまり気にしていないのだが、向こうはまだ許せていないのかも知れない。

そのため、幼なじみと一緒にいることはあまりなくなっていた。プリシャは、別の方と仲良くしていて、そちらに気が引けてプリシャの側に来ないのもあるのかも知れない。カルニカにも紹介したいところだが、それも上手くいっていなかった。

だが、あまり無理にことをすすめることはプリシャはしたくなかった。カルニカは、同じ家にいたのだから、あの姉と顔を合わせるたびにやりあっていたなら、疲れないわけがない。そんな風にプリシャは思うようになっていた。

見かけるたび、幼なじみたちが仲良さそうにしているのを見て、婚約が台無しにならなくてよかったと思うようになったのはプリシャだけでなかった。

学園では殆どの者がそう思っていた。でも、それこそ、シーラのことを言えない勘違いに巻き込まれることになるとは、この時のプリシャだけでなく、カルニカとジテンドラ以外、勘違いしていることを知らなかった。

プリシャが、感じていたのを他の人にあれこれ話をしていたら、少しはかわっていたかもしれない。

だが、生憎とそんなことをするプリシャではなかった。他の人にあれこれと言われるのを聞くことがほとんどだった。

幼なじみが婚約者と一緒になって、シーラと口論して喧嘩ばかりしている間にプリシャにも、新しい友達ができていた。その友達のことをカルニカには、まだ話せていなかった。

プリシャとしては、せっかくだからとみんなで仲良くなれたらいいと思っていたが、それは甘い考えだったことを痛感したのは、それからしばらくたってからだった。


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