イケメンと婚約したい幼なじみは、私の悩みを欠片もわかっていなかったようですが、彼女の強引さのおかげで私は幸せになれました

珠宮さくら

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「マルジョリー。こちらは?」
「こちらは……」


令嬢たちが目を輝かせてグウェナエルを見ていた。グウェナエルは、ようやくマルジョリー以外にも人がいたのかと言う顔をしていた。

それに気づいたマルジョリーは苦笑しつつ、彼を紹介しようとしたのだが……。


「マルジョリー嬢!」
「……まだ、何か?」


そこに走って来たらしいリオネルがやって来た。


「私の婚約者に何か?」
「「は?」」


リオネルは、マルジョリーの前に立ちはだかって、グウェナエルにそう言ったことにマルジョリーとグウェナエルは同じことを言っていた。


「私の婚約者……?」
「ちょっと、何を」
「マルジョリー嬢は、黙っていてください」
「マルジョリー。これは?」
「元婚約者の弟です。あの、私の婚約者は、こちらにいるグウェナエル様です」
「なっ、何で、そんな酷いことを言うんですか!」
「酷い?? そちらこそ、とんでもない勘違いをしてつきまとうのはやめてください」
「でも、あなたは、兄とではなくて、私と婚約したかったんですよね?」
「どなたに聞いたのか知りませんけど、あなた父君が婚約する相手を間違えただけです」
「なら、今からでも私と婚約すればいい」


どうやら、兄より自分と婚約したがっていたと思い込んでいたようだ。


「今からって……」
「それ、私に喧嘩売ってるのかな?」


それまで黙っていたグウェナエルがにっこりとしていたが、その目が怖かった。


「婚約者の目の前で、よくそんなことが言えるよね」
「っ、どうせ、兄みたいに見た目だけで、浮気三昧してマルジョリー嬢を悲しませるに決まっている。そんな男より、私の方が……」
「決めつけるな」
「っ、」
「これまで、散々不愉快な言葉を聞いて来たが、今のが一番不愉快だ」
「グウェナエル様……?」


マルジョリーは彼が怒っている姿を見たのは初めてだった。


「そもそも、婚約者がいるというのにつきまとっている時点で、お前の兄と何が違うんだ?」
「それは、その、婚約したとは聞いていなくて」
「……そうなのか?」
「そのつもりでつきまとわれているとは思わなくて」
「マリユス様!!」
「っ、」


そこにウージェニーが現れた。しかも、ややこしいことにリオネルのことをマリユスと呼んだのだ。


「やっぱり、みんな嘘ばっかり。謹慎か解けたのですね」
「ひ、人違いだ」
「え? でも……」


グウェナエルも、よくわからない顔をしていたが、ことの成り行きを見ていた。

マルジョリーたちも、ウージェニーが婚約したがっていたのが、こっちだったのかと思い始めていた。


「頭、おかしいんじゃないか? みんながそう話しているぞ。私は、リオネルだ。マリユスは兄の名前だ」
「え? ですが、あなたが……」
「煩い! 今、大事な話をしているんだ!!」
「っ!?」


リオネルは、怒鳴りつけてウージェニーを思いっきり突き飛ばした。


「ちょっ、何をするの!」
「そんなイカれた女なんか、構っていられない」


マルジョリーは、尻もちをついたウージェニーの側に駆け寄った。先程までと打って変わって、その姿はマリユスを彷彿とさせた。

似ていないと思っていたが、似ていないことはない気がする。


「……あなた、もしかして、私が彼と婚約している時も同じことしていたんじゃない?」
「は? あなたまで変な言いがかりは……」
「そうよ。その男は、お兄さんのふりして付き合っては、本物が勘違いしてモテていると思って付き合うきっかけを作ってたのは、みんなそいつよ」


どうやら、リオネルはマリユスが浮気しまくっていると印象付けて、マルジョリーとの婚約をなしにして、自分が婚約するはずだったのを正そうとしたようだ。

それが、拗れに拗れてしまい、マルジョリーが留学したがマリユスが色々とやらかしてくれたおかげで、家を勘当されることになり、喜んでいたところにマルジョリーが戻って来た。

そこで、今度こそ本当に婚約しようとしていたようだが、マルジョリーが婚約したのを知らなかったようだ。

何ともややこしい転換にマルジョリーだけでなく、聞いていた周りも頭を抱えたくなった。


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