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しおりを挟むイーデンに一目惚れされていたオリーヴは、いつしか彼に惹かれるようになり、彼と婚約することになった。
ぐいぐいとアプローチされたわけではないが、いつの間にか、そうなっていた。縁とは不思議なものだ。
「ふふっ、あの2人よ」
「相変わらず、仲睦まじいわね」
「とっくに婚約してそうなのにね」
「本当よね。やっと婚約したのよね。とても不思議よね」
令嬢たちは、そんなことを言っていたが、オリーヴたちには聞こえていなかった。
どこに行くにも、2人で過ごすようになり、話しかけるのも遠慮されるようになっていた。2人で話しかけづらい雰囲気を出しているつもりはなかったが、話しかけづらくなっていたようだ。
それこそ、お互いのことしか見えておらず、聞こえていないのが良い証拠だ。恋は盲目とはよく言ったものだ。
いつの間にか、オリーヴの理想はイーデンそのものになっていた。これまでの恋した人たちは、見た目だけだった。
まぁ、三度目の王子の中身まではよく知らないが、見た目が良いだけでは駄目なことがよくわかった。
イーデンは、見た目以上に中身が素敵な子息だった。いや、見た目が残念なわけではないが、時折残念なところというか。やらかすところがある。
たとえば、オリーヴに会いたくて留学したのに入れ違いになる運の無さとかだ。彼の場合、この時だけではなくて、時折やらかすらしく、それで笑われても怒ることのないのがイーデンだ。
そんなことがあって、オリーヴの留学期間が終わることになった。イーデンは、オリーヴのところに留学しに行こうとしたが、すぐに帰って来たこともあり、再び留学は難しいとなり、イーデンは落ち込んでいた。
あちらに落ち度はないのにすぐに帰ったことで、色々あったようだ。まぁ、わからなくはない。イーデンはヴァンス公爵子息なのだ。機嫌が悪く戻ってしまったと思われたのだろう。流石に一目惚れした相手に会いに来たのにいなかったなんて、馬鹿正直には話せない。それで上手くいかなかったら、笑うに笑えない。
「イーデン、そんな顔をしていたら、オリーヴちゃんが帰りにくいわよ」
「ですが、母上」
「今生の別れではないのよ。オリーヴちゃん、いつでも、戻って来てちょうだいね」
「こらこら、そんなことを言ったら、気にするだろ」
ヴァンス公爵は、妻と息子に何とも言えない顔をして、そんなことを言ってくれていた。
オリーヴは、家族みんなが楽しそうにしているのを見て微笑ましくてたまらなくなった。そして、そんな家族を見ていると父と弟が気になってならなかった。
もう、この頃には、王子はとっくに本命の女性と幸せになっているものと思っていた。
でも、世の中、そう上手くいかなかったようだ。
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