17 / 18
17
しおりを挟むイーデンに一目惚れされていたオリーヴは、いつしか彼に惹かれるようになり、彼と婚約することになった。
ぐいぐいとアプローチされたわけではないが、いつの間にか、そうなっていた。縁とは不思議なものだ。
「ふふっ、あの2人よ」
「相変わらず、仲睦まじいわね」
「とっくに婚約してそうなのにね」
「本当よね。やっと婚約したのよね。とても不思議よね」
令嬢たちは、そんなことを言っていたが、オリーヴたちには聞こえていなかった。
どこに行くにも、2人で過ごすようになり、話しかけるのも遠慮されるようになっていた。2人で話しかけづらい雰囲気を出しているつもりはなかったが、話しかけづらくなっていたようだ。
それこそ、お互いのことしか見えておらず、聞こえていないのが良い証拠だ。恋は盲目とはよく言ったものだ。
いつの間にか、オリーヴの理想はイーデンそのものになっていた。これまでの恋した人たちは、見た目だけだった。
まぁ、三度目の王子の中身まではよく知らないが、見た目が良いだけでは駄目なことがよくわかった。
イーデンは、見た目以上に中身が素敵な子息だった。いや、見た目が残念なわけではないが、時折残念なところというか。やらかすところがある。
たとえば、オリーヴに会いたくて留学したのに入れ違いになる運の無さとかだ。彼の場合、この時だけではなくて、時折やらかすらしく、それで笑われても怒ることのないのがイーデンだ。
そんなことがあって、オリーヴの留学期間が終わることになった。イーデンは、オリーヴのところに留学しに行こうとしたが、すぐに帰って来たこともあり、再び留学は難しいとなり、イーデンは落ち込んでいた。
あちらに落ち度はないのにすぐに帰ったことで、色々あったようだ。まぁ、わからなくはない。イーデンはヴァンス公爵子息なのだ。機嫌が悪く戻ってしまったと思われたのだろう。流石に一目惚れした相手に会いに来たのにいなかったなんて、馬鹿正直には話せない。それで上手くいかなかったら、笑うに笑えない。
「イーデン、そんな顔をしていたら、オリーヴちゃんが帰りにくいわよ」
「ですが、母上」
「今生の別れではないのよ。オリーヴちゃん、いつでも、戻って来てちょうだいね」
「こらこら、そんなことを言ったら、気にするだろ」
ヴァンス公爵は、妻と息子に何とも言えない顔をして、そんなことを言ってくれていた。
オリーヴは、家族みんなが楽しそうにしているのを見て微笑ましくてたまらなくなった。そして、そんな家族を見ていると父と弟が気になってならなかった。
もう、この頃には、王子はとっくに本命の女性と幸せになっているものと思っていた。
でも、世の中、そう上手くいかなかったようだ。
101
お気に入りに追加
212
あなたにおすすめの小説
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
婚約者の勇者に殺された貴族令嬢。ザコ魔導士に愛されながら復讐をする。
シハ
恋愛
【全11話】
貴族令嬢のリアナは、スプリングホルム一の美男子、勇者ジェラミーと婚約をしていました。
しかし、森を散策しているとき、婚約者のジェラミーに殺されてしまいます。
ジェラミーはリアナより家柄がよい宰相の娘との結婚を望んでいたのです。
ジャラミーは宰相の娘、ナターシャと共謀し、リアナを殺害したのです。
しかし、リアナは奇跡的に蘇ります。
使用人のノエルによって生き返ったのです。
ノエルは弱い魔力をもつ魔導士でした。
魔導士のノエルは密かに人間の女性であるリアナを愛していました。
ノエルはリアナを傷つけた勇者ジェラミーに怒りをむけます。
リアナはノエルの頼りない魔法を使い、復讐を決意します。
そして、リアナとノエルはジェラミーとナターシャが婚約を発表する盛大な晩餐会に乗り込みます。
婚約破棄、復讐、溺愛の物語。
お姉様のお下がりはもう結構です。
ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。
慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。
「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」
ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。
幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。
「お姉様、これはあんまりです!」
「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」
ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。
しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。
「お前には従うが、心まで許すつもりはない」
しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。
だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……?
表紙:ノーコピーライトガール様より
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/fantasy.png?id=6ceb1e9b892a4a252212)
幼い頃から母に「お父さんはね、あの星からあなたを見守っているのよ」と言い聞かされてきた私。——なんか、お父さん、生きてたんですけど!?
青猫
ファンタジー
「お父さんはね、あの星からあなたを見守っているのよ」幼い頃に母から言われた言葉は子供ながらに、「あぁ、お父さんはもういないんだな」という事を実感させる何かがあった。それから十数年後。そんな子供だったベルファド―ラは、今や王子の婚約者候補として、王子を諫め、必死に母娘二人で頑張っていた。しかし、気が強い性格は王子には好かれることは無かった。
そんな彼女は卒業式の日に王子から婚約破棄を言い渡される——。
悪役令嬢がキレる時
リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき
ざまぁしてみせましょ
悪役令嬢の名にかけて!
========
※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。
あらかじめご承知おき下さい
突発で書きました。
4話完結です。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【完結】裏切ったあなたを許さない
紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。
そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。
それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。
そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。
音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。
どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。
仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。
「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
【短編】ショボい癒やし魔法の使い方
犬野きらり
恋愛
悪役令嬢のその後、それぞれある一つの話
アリスは悪役令嬢として断罪→国外追放
何もできない令嬢だけどショボい地味な癒し魔法は使えます。
平民ならヒロイン扱い?
今更、お願いされても…私、国を出て行けって言われたので、私の物もそちらの国には入れられません。
ごめんなさい、元婚約者に普通の聖女
『頑張って』ください。
![](https://www.alphapolis.co.jp/v2/img/books/no_image/novel/love.png?id=38b9f51b5677c41b0416)
氷の貴婦人
羊
恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。
呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。
感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。
毒の強めなお話で、大人向けテイストです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる