好きな人が身内や幼なじみと被って失恋が続いて、私は刷り込まれた夢を追いかけていたことを知りましたが、そのおかげで幸せです

珠宮さくら

文字の大きさ
上 下
16 / 18

16

しおりを挟む

そこから、全てが吹っ切るまで、オリーヴはすぐだった。

それこそ、刷り込まれた王子様像にしがみついていたって、自分の理想ではなかったのだ。まぁ、三度目は本当に好きだったのかもしれないが、それも刷り込まれたものだと思ったら、オリーヴは楽になれた。


「あの、前に誘ってくださっていたのに断り続けてしまって、ごめんなさい。その、今更だとは思うけど、皆様のおすすめの場所に出かけてみたいのだけど、今のおすすめはどこかしら?」


オリーヴは、それまで話しかけてくれていた令嬢たちにそんなことを言った。

令嬢たちは、きょとんとしながらも、嬉しそうに笑ってくれた。


「よければ、ご一緒しましょう。ご案内します!」
「私たち、新しいお店ができたと聞いて今から、そこに行こうと話していたところなんですよ」
「新しいお店?」
「えぇ、とっても素敵らしいらしいですわ」
「行った人たちが、褒めすぎているのかもしれませんけど」
「え? 褒めすぎることがあるの?」
「ありますわ。それとお客が多くなって、店の人たちが図に乗って、お客の身なりで態度を変えてしまうところもあるんです」
「そんなところは、すぐに潰れてしまいますけど」


令嬢たちは、散々断っていたというのに嫌な顔もせずにオリーヴを迎え入れてくれた。とても、素敵な人たちだと思ったが、話している内容にオリーヴは苦笑することが多かった。
 
そんな令嬢たちと仲良くなって、ある時こんな話になった。


「そういえば、オリーヴ様の国の王子の話を耳にしましたわ」
「え?」
「何でも、王子が好きだと噂になった令嬢と婚約したそうですが、それがその噂を故意に流したのが、その令嬢だったそうなんです」
「っ、」


それを聞いて、オリーヴはぎょっとしてしまった。今、祖国の王子は、オリーヴが幼なじみとくっつけた人しかいないのだ。間違いようがない。


「まぁ、それで婚約して、どうするつもりだったのかしらね」
「それこそ、王子に知られてしまって婚約破棄で揉めているそうですわ。何でも、その王子には本命がいらしたようなんです」
「……本命がいらっしゃるのになぜ、婚約したのかしらね」
「……」


そんな話をしていると令嬢たちの婚約者が現れた。子息たちとも、オリーヴは顔なじみになれた。その中に見慣れない子息がいた。


「まぁ、イーデン様。もう、戻られたのですね」
「戻られた……?」


オリーヴは、それに首を傾げた。どこかに行っていたようだが、その言い方に引っかかってしまった。


「あ、オリーヴ様。こちら、公爵家のイーデン様です」
「初めまして、イーデン・ヴァンスです」
「初めまして、オリーヴ・ダルトと申します」


すると他の子息たちが、オリーヴと話していた婚約者の令嬢を連れて行ってしまった。何やら急いでいたようだ。令嬢たちは、婚約者の行動に怪訝な顔をしながらも行ってしまった。

残されたのは、オリーヴとイーデンだ。


「私、実はオリーヴ嬢のいる国に留学しに行ったのですが、行っても目的が果たせなくて、戻って来たところなんです」


それを聞いて、オリーヴは顔色を悪くさせた。


「それは、何か不快な思いをされたのですか?」
「いえ、その……、単刀直入に言いますとあなたに会いたくて留学したんです」
「え? 私に?」
「はい。それが、あなたがここに留学していると聞いて、すぐに戻って来てしまいました。さっき、それで色々と誂われてしまっていたんですが、こうして話すために手助けしてもらえたのでよかった」
「……」


イーデンの言葉と態度で、好かれているのはよくわかったし、友人にも恵まれているようだ。

オリーヴは、幼なじみが嘘をついていたことやあの王子に本命がいたのにそれを邪魔してしまった罪悪感もあったが、なぜ本命がいたのにあっさりと婚約したのかに疑問しかなかった。

まぁ、結果的には余計なことをして王子の恋路を邪魔してしまったのだ。それに今更、ニコラにどんな顔して会えばいいのかも、わからなかった。

それもあり留学期間を延ばして、イーデンとの時間を増やすことにした。

それまでは、想いを寄せてくれている人と一緒に過ごすことなどしたことがなかったのだ。イーデンと話すのは、楽しくて時間を忘れることが多かった。


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

婚約者の勇者に殺された貴族令嬢。ザコ魔導士に愛されながら復讐をする。

シハ
恋愛
【全11話】 貴族令嬢のリアナは、スプリングホルム一の美男子、勇者ジェラミーと婚約をしていました。 しかし、森を散策しているとき、婚約者のジェラミーに殺されてしまいます。 ジェラミーはリアナより家柄がよい宰相の娘との結婚を望んでいたのです。 ジャラミーは宰相の娘、ナターシャと共謀し、リアナを殺害したのです。 しかし、リアナは奇跡的に蘇ります。 使用人のノエルによって生き返ったのです。 ノエルは弱い魔力をもつ魔導士でした。 魔導士のノエルは密かに人間の女性であるリアナを愛していました。 ノエルはリアナを傷つけた勇者ジェラミーに怒りをむけます。 リアナはノエルの頼りない魔法を使い、復讐を決意します。 そして、リアナとノエルはジェラミーとナターシャが婚約を発表する盛大な晩餐会に乗り込みます。 婚約破棄、復讐、溺愛の物語。

お姉様のお下がりはもう結構です。

ぽんぽこ@書籍発売中!!
恋愛
侯爵令嬢であるシャーロットには、双子の姉がいた。 慎ましやかなシャーロットとは違い、姉のアンジェリカは気に入ったモノは手に入れないと気が済まない強欲な性格の持ち主。気に入った男は家に囲い込み、毎日のように遊び呆けていた。 「王子と婚約したし、飼っていた男たちはもう要らないわ。だからシャーロットに譲ってあげる」 ある日シャーロットは、姉が屋敷で囲っていた四人の男たちを預かることになってしまう。 幼い頃から姉のお下がりをばかり受け取っていたシャーロットも、今回ばかりは怒りをあらわにする。 「お姉様、これはあんまりです!」 「これからわたくしは殿下の妻になるのよ? お古相手に構ってなんかいられないわよ」 ただでさえ今の侯爵家は経営難で家計は火の車。当主である父は姉を溺愛していて話を聞かず、シャーロットの味方になってくれる人間はいない。 しかも譲られた男たちの中にはシャーロットが一目惚れした人物もいて……。 「お前には従うが、心まで許すつもりはない」 しかしその人物であるリオンは家族を人質に取られ、侯爵家の一員であるシャーロットに激しい嫌悪感を示す。 だが姉とは正反対に真面目な彼女の生き方を見て、リオンの態度は次第に軟化していき……? 表紙:ノーコピーライトガール様より

幼い頃から母に「お父さんはね、あの星からあなたを見守っているのよ」と言い聞かされてきた私。——なんか、お父さん、生きてたんですけど!?

青猫
ファンタジー
「お父さんはね、あの星からあなたを見守っているのよ」幼い頃に母から言われた言葉は子供ながらに、「あぁ、お父さんはもういないんだな」という事を実感させる何かがあった。それから十数年後。そんな子供だったベルファド―ラは、今や王子の婚約者候補として、王子を諫め、必死に母娘二人で頑張っていた。しかし、気が強い性格は王子には好かれることは無かった。 そんな彼女は卒業式の日に王子から婚約破棄を言い渡される——。

悪役令嬢がキレる時

リオール
恋愛
この世に悪がはびこるとき ざまぁしてみせましょ 悪役令嬢の名にかけて! ======== ※主人公(ヒロイン)は口が悪いです。 あらかじめご承知おき下さい 突発で書きました。 4話完結です。

【完結】裏切ったあなたを許さない

紫崎 藍華
恋愛
ジョナスはスザンナの婚約者だ。 そのジョナスがスザンナの妹のセレナとの婚約を望んでいると親から告げられた。 それは決定事項であるため婚約は解消され、それだけなく二人の邪魔になるからと領地から追放すると告げられた。 そこにセレナの意向が働いていることは間違いなく、スザンナはセレナに人生を翻弄されるのだった。

完結 振り向いてくれない彼を諦め距離を置いたら、それは困ると言う。

音爽(ネソウ)
恋愛
好きな人ができた、だけど相手は振り向いてくれそうもない。 どうやら彼は他人に無関心らしく、どんなに彼女が尽くしても良い反応は返らない。 仕方なく諦めて離れたら怒りだし泣いて縋ってきた。 「キミがいないと色々困る」自己中が過ぎる男に彼女は……

【短編】ショボい癒やし魔法の使い方

犬野きらり
恋愛
悪役令嬢のその後、それぞれある一つの話 アリスは悪役令嬢として断罪→国外追放  何もできない令嬢だけどショボい地味な癒し魔法は使えます。 平民ならヒロイン扱い? 今更、お願いされても…私、国を出て行けって言われたので、私の物もそちらの国には入れられません。 ごめんなさい、元婚約者に普通の聖女 『頑張って』ください。

氷の貴婦人

恋愛
ソフィは幸せな結婚を目の前に控えていた。弾んでいた心を打ち砕かれたのは、結婚相手のアトレーと姉がベッドに居る姿を見た時だった。 呆然としたまま結婚式の日を迎え、その日から彼女の心は壊れていく。 感情が麻痺してしまい、すべてがかすみ越しの出来事に思える。そして、あんなに好きだったアトレーを見ると吐き気をもよおすようになった。 毒の強めなお話で、大人向けテイストです。

処理中です...