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オリーヴが、幽霊ではなくて、双子だと思いたくなっていたが、その通りだった。

それがわかり、ビヴァリーとアヴリルは相手が双子だと知って、取り合いをやめて、2人はすぐにその子息と婚約した。


「双子なら、取り合っていて馬鹿みたいよね」
「本当よね」


2人とも、そんなことを言ってはいたが、相手が諦めれば、すぐに決着がついたのにと内心で思っていたが、それを言葉にすることはなかった。

双子の方は、アヴリルの妹で、ビヴァリーと従姉妹同士のオリーヴのことを見て、お子ちゃま扱いして茶化した。それを聞いて、アヴリルとビヴァリーは笑っていた。


「この2人の血縁者には見えないな」
「お子ちゃますぎて、成長したところが全く想像できないな」
「っ!?」


次女たちとは10歳近く違うのだ。それなのに酷い言われようをされて、イラッとした。

それを怒るでもなく一緒に笑っているアヴリルとビヴァリーには、もっと頭にきた。

それを見て、すぐに恋からさめた。この双子のことをすぐさま、大っ嫌いになった。初恋よりは長かったが、ただ夢見ていただけの恋だった。いや、そもそも恋をしていたというより、奇妙な体験をしたことが気になっていただけかもしれない。

再び出会って、顔はいいのに残念だと思った自分をオリーヴは殴りたくなってしまった。

夢のままの方が幸せだったが、そんな人と次女と従姉が婚約したことを羨ましいと思うことは決してなかった。

ちなみにこの2人は留学して来ていたようだが、双子なことを黙っていて片方が授業に出て、もう一方は好き勝手に遊んでいた隣国では有名な子爵家の問題児だったようだ。

婚約したことで、双子だったことがバレることになり、どちらが遊び回っていたかを証明できたら、一方は留学期間の評価をしてもらえるとわかるなり、双子は罵り合いを始めた。


「きちんと授業に出ていたのは、私だ」
「ふざけるな。私だ。お前は遊び呆けていたじゃないか!」
「何を言うんだ。遊んでたのは、そっちだろ!!」


その姿は、少し前のビヴァリーとアヴリルにそっくりだった。


「なんか、見飽きた光景ね」
「本当ね。見た目がよくても、あれでは残念すぎるわね」
「でも、あの2人には、丁度よさそうよね」


令嬢たちの多くは、言い争う双子を見てそんなことを思ったようだ。

オリーヴも、それを学園で見たら、同じことを思っていたことだろう。似た者同士で、お似合いだと。

結局、双子は綺麗に半々にして授業に出ていたのはすぐにバレた。何をさせたかというとこれまでのテストを受けさせたのだ。

頭はそこそこいいらしく、授業を受けた者はスラスラと解けたのだ。逆に授業を受けていない方は全く解けずにいた。

それによって、留学期間の単位や評価は最低なものになった。そんな風にして謀っていたのだから、当たり前だ。

そんな双子と婚約した2人も赤っ恥をかくことになった。


「そもそも、ここに双子の留学生がいたなんて聞いたことなかったのよね」
「よく調べてから婚約すれば、いらぬ恥を欠かずに済んだのにね」
「まぁ、あの2人なら仕方がないのかもね」


それでもビヴァリーとアヴリルは見目のよい子息と婚約できたのだ。色々と言われるのも今だけだと思って、何を言われても、婚約破棄することはしなかった。

何より、次女と従姉は、相手より先に婚約破棄したくはなかっただけのようだが、意地の張り合いをしたまま、そのまま学園を卒業して結婚をしようとした。

でも、相手の子息の方がビヴァリーとアヴリルに辟易してしまったようだ。留学から戻って、散々なまでに親や親戚に恥さらしなことをしたと言われ、婚約者に感謝しろと言われたのだ。

そのせいで、婚約した令嬢たちは図に乗ってしまい、婚約破棄したいと言い出せなくなっていたようだ。

双子たちは、とっくに婚約者に愛想をつかしていたが、周りは合同の結婚式をしようとしていた。双子だから、その方がいっぺんに済むと思われたのだ。双子たちは、いっしょくたんにされるのが何より嫌だった。

誕生日も、一緒。双子なのだからとケーキは一つ。見た目は、そっくりでも味の好みがバラバラなのに家族みんなが好むものを買われて、それで祝われてきた。

結婚式も、そうだ。双方の新婦の意向を聞いていると埒が明かないからと間をとって、新郎の両親がテキパキと決めてしまっていた。

新婦となる方は、義父母に強く言えるわけもなく、かと言って従姉妹同士の主張が取り上げられているわけでもないため、大して喧嘩にはならなかった。

もっとも、誰のための式なのかが、公爵にはわからなくなっていたが、娘がそれでいいと言うため、口出しはしなかった。


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