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しおりを挟むジュリアの見せたメッセージカードをじっと見つめていたエドガールは……。
「ジュリア。懐かしいな。これが、どうかしたか?」
「……お見舞いの品が届いた時に添えられていたものです」
「え?」
ジュリアは、ずっと気になっていた。それが、彼の直筆だと気づいていたのだ。
果物はサンドリーヌの元婚約者の贈ったものなのに間違いないが、そのメッセージカードが取り替えられていたのだ。
「これ、あの令嬢が持っていたものではないかと思っているんです」
「は? なぜ、あの女が?」
「……」
ジュリアは、数年前に今回のように見舞いの品を贈ろうとしたことがなかったかと尋ねた。
するとエドガールは眉を顰めて、こんなことを言った。
「確かに贈ったが、あー、あの時のものは気に入らなかったのだろう?」
「気に入るも何も、私のところには何も届いておりません」
「え?」
「……」
そう。学園に入り立ての頃に風邪を引いて寝込んだ時があった。それが良くなってからエドガールに直接ではないが見舞いの品を贈ったかのように共通の知り合いに言われたが、家に戻って確認しても何も届いていなくてジュリアは首を傾げたことがあった。
共通の知り合いは間に入って困った顔をしていて、そこからエドガールのことが気になり出したのだが蓋を開ければ、その時は即行動してくれていたのだ。
そこから、ジュリアは彼を意識し始めたのだ。共通の知り合いから、あれこれ聞かれるうちにそういう子息がいると思って、意識するうちに気になり出したことを思い出した。
全ては、そこからだったのだ。
「あの令嬢のミドルネームが、ジュリアというようですよ」
「は?」
そう、彼女はエドガールがいいなと思っている令嬢が寝込んだと知って贈りものをしようとしていたところにたまたま居合わせて、自分宛てだと思い込んだようだ。
贈るように言われたのに。それを見ていたからとそのまま貰って行くと言われた店員の方は、どう反応していいかわからなかっただろうが、届ける手間を省けると思って、そのまま渡してしまったようなのだ。
エドガールも、店に確認しなかったわけではないが、渡したと思っていて受け取りのサインまで確認しなかったようだ。それこそ、ずさん過ぎたのだ。名前のみで、ファミリーネームを書かなかったのに店員はチップで誤魔化されてしまったのだ。
そこから、サンドリーヌは密かにエドガールが自分のことを想ってくれていると思い込んだのだ。見舞いの品だというのに。そんなことを欠片も気にすることなく、今回はそれまで大事にしていたメッセージカードを使ってまで、誤魔化すことに利用したのだ。
それを聞いていたエドガールは頭を抱えた。ジュリアも、メッセージカードを確認してから、あれこれと調べてようやく、そこに行き着いたのだ。
そう、そこから始まっていたのだ。
(そう、勘違いは数年前から続いていた。私が気になり出したきっかけとなったのも、そこからだった。……私の名前を知って、目の敵にしてきたのもあったのよね。あちらは、ミドルネームで、普段誰からも呼ばれていないというのに。どうして、自分のことだと思っていたのかしらね)
ジュリアは、そのせいでやたらと睨まれていたことを知ることになり、色々とげんなりしてしまっていた。
そのせいで、疲れた顔をしていた。病み上がりなだけではなかったのだ。
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