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しおりを挟む幼なじみがいた頃は、2人のせいであれこれ言われていたが、逆に人が寄り付かなくなることに真逆の体験をしてしまったフランソワーズは、幼なじみも強烈だった。だが、素敵な令嬢と友達になれたと思っていた分、エディットとのことがあってからは人間不信気味になってしまった。
それは、エディットの元婚約者も同じような感じだった。同じように散々な目にあったこともあり、お互いが立ち直るために励まし合い、そんな2人が婚約するまで、数年かかった。
その頃には、ファビアンにも婚約者がいて、兄と婚約者の2人がかりでフランソワーズたちをくっつけようとしていたのには、気づいていた。
だが、くたびれていたのもあり、フランソワーズたちは色々ありすぎたのもあって、すぐに婚約するよりもお互いのことをよく知ってから婚約をしたかった。
疑っていたわけではないが、何かあった時に豹変するのだけは勘弁だとお互い思っていたのを婚約する時に打ち開けようとして、全く同じことを思っていたことを知って、大笑いしてしまった。
「私たち、似てるみたいですね」
「そうだな」
「これだけ、色々な目にあったんですから、どんなことでも乗り越えられそうですね」
「確かに。逞しくなった気がする」
そんなことを話して婚約してからは、ずっと昔から婚約していたかのように仲睦まじい姿をいたるところで目撃されることになったが、何があったかを知らない人たちには羨ましがられて、こんなことをよく聞かれた。
「仲良くいる秘訣?」
「えぇ、ぜひ、教えてください」
「結婚の誓いを婚約した時から遵守していれば、仲良くいられるわ」
フランソワーズは何も知らない若い令嬢には、そう言っていた。
何もかも知っている連中は、それにちゃちゃを入れることはなかった。入れたら、厄介と妬みだと思われるからだ。
それほどまでにフランソワーズたちの仲の良さは有名となっていて、以前は大変な目にあったのに見違えるようなことを言うのは昔はいたが、フランソワーズたちが結婚してしばらくしてからは、誰も言わなくなっていた。
こうして、フランソワーズたちは同じように散々な目に合いながらも、それに飲み込まれることなく幸せを掴みとって、握りつぶすことはなかった。
幼なじみのこともそうだが、元婚約者たちのことなど、フランソワーズたちが思い出すことはなかった。それが一番の秘訣な気がしたが、言葉にすることはなかった。
そんなしなくていい苦労ばかりをしてきた2人は、幸せいっぱいの笑顔溢れる人生を送ることができたのだった。
ちなみにエディットは、あれから元婚約者がフランソワーズと婚約したと耳にしてから、大暴れした。
「やっぱり! 怪しいと思っていたのよ!!」
だが、その言い分を両親も周りも誰も取り合うことはなかった。
その頃には、かつては美しい令嬢だったとは思えないほどとなっていて、両親も手におえなくなって修道院に入ることになっても周りを疑うかのようになってしまっていて、誰も受け入れず寂しい人生を送ることになった。
フランソワーズの幼なじみの2人は同じような目にあったことで結婚したようだが、いざとなったら相手を見捨てて自分だけ幸せになろうとするところが直ることはなかった。そのため、結婚生活は長く続くことはなかった。
再び幼なじみたちが、フランソワーズに会うことはなかった。
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