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しおりを挟む「か、駆け落ち?!」
「私も驚いた」
そう言っている兄は、落ち着いているように見えてならない。あまりにも驚いていない風に見えて冗談ではないかとフランソワーズは疑っていた。
「そんな、ディアーヌはガスパールを好きだったみたいですけど、ガスパールは……」
「今回のことで、慰謝料を払うために働くか。嫌なら勘当すると言われて、どちらも嫌だと駆け落ちしたようだ」
兄の言葉に目をパチクリさせた。そんなことをするとは、フランソワーズは長い付き合いでは思いもしなかった。
「……なぜ、駆け落ちなんでしょうね」
「戻って来るためっぽいぞ」
「……というと?」
「元々好きあっているのに親の都合で婚約させられて、それを駄目にするのに奔走したら、親に激怒されて勘当されたから、駆け落ちしたってことにしたかったのではないか」
「……」
兄の言葉にフランソワーズは、再び目をパチクリさせた。誰よりも一緒にいたのは、フランソワーズだ。今の話を聞いても、ピンとくることはなかった。そんなこと思いつくような頭を持ち合わせているとは思えない。
「お兄様」
「何かな?」
「あの2人が、そんなこと思いつくわけがありません」
「うん。私も、そう思う」
「え??」
「さっきのは、噂になっているものだ」
「え?!」
どうやら、誰かが流しているようだ。なぜ、そんなことをわざわざするのかとフランソワーズは思っていたが、それで答えがわかることはなかった。
だが、その噂も、次の日からはちょっとずつ変わり続けていったのだ。その変わりっぷりにフランソワーズは、次第に何とも言えない顔になったのも、すぐのことだった。
「ねぇ、フランソワーズ。聞いた?」
「何のこと?」
どうせ、例の噂だろうなと思っていたら、同じ噂ではなかった。
「あなたの幼なじみたち、慰謝料払いたくなくて、そんなことするくらいなら逃げることにしたらしいの。だけど、その途中で幼なじみ同士がばったり遭遇して、どっちも相手の家にお金目当てに密告して、どっちもものの見事に捕まって、出稼ぎに行くことになって、間抜けよね」
「そ、そうなんだ」
フランソワーズは、色んな人から噂話を聞かされたが、これが一番2人っぽいと思って聞いていた。
まさか、幼なじみの1人としての直感がなせる技なのかは知らないが、相手を見つけたと言って、相手の家から金を貰おうとしたのは本当だったようだが、その金を貰ったのは、2人ではなくて2人を足止めした宿屋の店主だったようだ。
駆け落ちした訳ありだと思ったふりをして、親身になって寝床と食事を出して留め置いていて、すっかり安心しているところを捕まって、慰謝料を返せとばかりに出稼ぎに行くことになったようだ。
まぁ、そんなことをした幼なじみたちにフランソワーズが再び会うことはなかった。向こうは、時折関係もないのにフランソワーズのせいで、こうなったみたいに言っていたようだが、フランソワーズの方はそんな風に思い出すこともなかった。
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