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しおりを挟む「フランソワーズ様。その方々を紹介してくださらない?」
「……えっと」
このタイミングかとフランソワーズは思ったがしないわけにはいかない。フランソワーズが間に入らないといけないのはわかるが、できればしたくない。
ちらっと兄の方を見ると、関わりたくなさそうな顔をしていた。逆の立場なら、同じ気持ちだから巻き込む気はなかった。
なのに幼なじみたちは、フランソワーズの心情など欠片も汲み取ることも、エディットの意味するところを知ろうともしなかった。隣から兄の無言の頑張れってオーラを感じるが、それにイラッとしかけている。そんな無言の応援をするなら、いなくてもいい。
まぁ、いつも他人の気持ちなんてわかったことがない幼なじみたちだが、学園で見慣れないせいと余裕がなさすぎて、フランソワーズのせいにして済ませようとして、こんなことを言ったようだ。更に言うとは思っていたことを言った。
「は? 今は、こいつと話しているんだ。邪魔しないでくれ!」
「そうよ!」
こいつって言葉にフランソワーズは、イラッとしたが笑顔で頼まれたことをやることにした。そうしなければ、すすまない。フランソワーズが、やるしかない。幼なじみの馬鹿っぷりに付き合っていられない。
「2人共、こちらエディット様。あちらの令嬢が、ディアーヌで。ガスパール、彼女があなたの婚約者よ」
「は?」
「え?」
幼なじみは間抜けな顔をしていた。聞いていたようでよかった。そうでなかったら、理解するまで言い続けないと駄目になるところだった。
そうならないだけでも、珍しい。昨日の今日だから、余裕なさすぎて、こうはならない気がしたが、そんなことなくて本当に良かった。
だが、そんないつものことをエディットは知らない。
「あら、元婚約者よ。留学しに来たけど、挨拶だけして帰ることにしたの。昨日も、2人が喧嘩しているのを見たわ。それに今のも、そうだけど。ありえない。何で、フランソワーズ様のせいみたいにできるの? 信じられないわ」
「っ、」
ガスパールは、あーいやーそのーと言っているだけで、視線が助けを求めるものになっていたが、フランソワーズは助ける気はなかった。
ディアーヌは、元婚約者と聞いて嬉しそうにしていた。
「そう。ガスパールの魅力がわからないのね。残念な人ね」
「わからなくて結構よ。それこそ、あなただって婚約しているのでしょ? 幼なじみを庇ってる暇ないんじゃない?」
「は? そんなこと、あなたに関係ないでしょ!」
「確かにそうね。それより、一々、怒鳴らないでくれる? この距離だから、そんなことしなくても聞こえるわ」
「何ですって!? 一々、癪にさわる女ね!」
エディットとディアーヌは、とことん合わないようだ。留学をするのをやめて帰る気でいるエディットは、ディアーヌに負けていなかった。
フランソワーズは、ヒートアップしていく2人を見て、ガスパールを見た。おろおろするばかりで、止めるに止められずにいた。その情けないことといったらなかった。
きっと、ディアーヌと言い争っていた勢いで怒鳴ったが、よくよく見たらエディットが美人だと気づいて強く言えなくなったのかもしれない。そもそも美人なのに自分の婚約者にはありえないなんて思っていたに違いない。とことん、間の悪い男だ。そもそも、余計なことをしてばかりいるのも美人な令嬢によくしていた。本人はそれで株をあげていると思っているようだが、そんなことはない。真逆なことをしていた。
ガスパールは、そういう幼なじみだ。これを機に縁が切れたらいいとすら思えていた。
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