父は、義妹と義母の味方なのだと思っていましたが、どうも違っていたようです

珠宮さくら

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フロラの義妹のシレネは、義母と一緒になって好き勝手していた。その極めつけにフロラのところにやって来て、自分のところにきた婚約の話が気に入らないから代わってくれと義母と一緒になって言い出したのに呆れてしまった。


「代われと言われても、私には婚約者が既に居るのですが……」
「それをシレネに譲って、あなたが婚約すればいいのよ」


(そんな無茶苦茶な)


義母の言葉に絶句していたフロラにさらなる爆弾発言が投下された。


「リクニス様だって、義姉さんより私がいいって、いつも言ってくれてるから大丈夫よ。何の心配もないわ」


(いつも……?)


義妹の言葉に眉を顰めずにはいられなかった。まさか、そんなことを……?と思いつつ、父も先方がよければ構わないと言い出して、リクニスの両親も交えて話すことになったのだが……。


「シレネと婚約出来るなら、ぜひ、そうしたい。彼女こそ、私の運命の人だ」
「リクニス様」
「……」


よくよく話を聞けば、2人はフロラに隠れるように密会をして愛を育んでいたようだ。盛り上がる2人によかったわねと言っていたのは義母のみで、リクニスの両親は気に入らない顔をしていた。


「リクニス。お前、自分が何を言っているのか、ちゃんとわかっているのか?」
「え? 当たり前じゃないですか」
「そうか。では、破棄ではなく、白紙にして、婚約するといい。そうすれば、フロラ嬢に傷がつかずに済むからな」
「フロラちゃん。こんなことになってしまって、残念だわ。あなたが、我が家に来てくれるのを楽しみにしていたのに」


あちらの両親は、フロラばかりを気にかけていて義妹は面白くなさそうにしていたが、すかさずから媚びを売ろうとしても、リクニスのように上手くいっていなかった。





(はぁ、鬼のように恐ろしい方だったら、どうしよう)


義妹が嫌がった婚約相手は、噂では恐ろしい方だとか。使用人たちが怯えていて、フロラもそこで初めて知って身構えてしまっていた。

だからこそ、義妹は抵抗して、リクニスと婚約したいとわがままを押し通してまで拒んだのだとようやくわかった時には、貧乏くじを引かされたのはフロラだったのかと悲しくもあった。

ただですら、元婚約者が義妹と浮気していたことを気づかずにいたことにショックを受けているのに新しい婚約者と会うことになり緊張してしまって、ここ数日、ろくに眠れずにいた。


(ううっ、もう、帰りたい)


「フロラ嬢、ですね?」
「え?」


重低音だが、心地の良い声にそちらを見れば、目を見張る美形がいた。


(どこが、鬼なの?!)


聞けば騎士団に属していて、鬼のように恐ろしい男と騎士団内でも評判になっていたのが、独り歩きした結果、なかなか婚約者が見つからずに困っていたところを父が手頃なのが、家にいると言い出したと聞いて驚いてしまった。


(手頃なのって、義妹のこと……?)


「あなたのことですよ」
「え?」
「義理の妹さんたちのよくない噂をご存じだったんですよ。それで、あちらを上手くくっつけて、あなたと私を婚約させようとなさったんです」


(お父様の策略にまんまとはまったってわけね。そういえば……)


「大したものじゃないんだから、譲ってやれ」


そう言っていた父を思い出し、フロラは苦笑するしかない。

鬼に喩えられるルガリスは、確かに騎士団では異質な強さを誇っているようだ。


(噂だけで、女性が寄り付かないなんて、不思議だわ)


フロラも無事に婚約をして、ハッピーエンドとはならなかった。

義妹がルガリスを紹介するや目の色を変えてしまったのだ。


「元々、私に来ていた縁談でしょう? なら、今からでもやり直せるはずよね?」
「何を言い出すのよ。あなたには、リクニス様がいるでしょ?」
「あぁ、あれね。義姉さんに返すわ。だから、ルガリス様を私に頂戴」


一度は、そのわがままが通ったこともあり、父にいいでしょ?と言って、義母も同じように娘のわがままを聞いてもらえると思っていたようだが。


「馬鹿を抜かすな。そんなことするわけがないだろ」
「「なっ、!? 」」
「破棄したいなら、すればいい。だが、姉から婚約者を奪い、すぐさま捨てるようなのをここに置いておくわけにはいかない。勘当するから、どこへなりとも行くがいい。あと、その時はお前とも離縁するから、そのつもりで荷造りしておけ」


慌てふためく義母と義妹たちだった。リクニスはというとこの一連のことで、破棄したいと自分の両親に言ったら、あちらもそれなら勘当するから家から出て行けと言われたようだが、冗談だと思っていたようだ。本当に勘当されてしまい、その後、フロラにやり直そうとつきまとっていたが、
しばらくして見かけることはなくなった。

シレネたちも家からいなくなり、義母が雇っていた使用人たちの多くが居なくなって、フロラはホッとしていた。


「私も、利用されたようですね」
「なんだ? 文句があるのか? お前には、娘をくれてやるんだ。文句を言うなら、返してもらうぞ」
「いいえ。文句などありませんよ」


ルガリスに対して、父親のその物言いにフロラは、苦笑していた。

こうして、父の思惑通りに厄介な者たちが居なくなり、フロラは幸せな一生を過ごすことになるのだった。





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