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しおりを挟むエウフェシアが、試練の話をした数時間後に姉とイオアンナに命を狙われることになったのだ。2人共、話し合ってしたのではなくて、すぐにでもマカリオス国にエウフェシアが行くとわかって、同じことに行き当たって同じ行動をしただけに過ぎなかった。
2人共、エウフェシアが死ねば来年以降もクリストフォロスの婚約者候補を探す試練が開催されると思っていた。エウフェシアさえ居なくなれば、再び自分たちが候補者の1人となって、今度こそ自分が婚約者に選ばれるに違いないという結論に至ったことで、エウフェシアを殺そうとしたのだ。
「っ!?」
エウフェシアは、眠れないだろうと思いながらもベッドに横になっていた。目を閉じている間に眠気に襲われたようだ。
ガタンという音で、目が覚めたかと思うと刃物を持った人物に襲われたのだ。
「大人しく死んで」
「っ、」
暗がりで、発せられた声は姉のものだった。
「そうよ。大人しくしていて、すぐ済むから」
「っ、!?」
もう1人はイオアンナだった。エウフェシアを信じられない力で押さえつけたのだ。
(何で!?)
エウフェシアが、試練の世界で体験したままに実行しようとしているようだった。
(昼間は、普通だったのに。どうして? 何で、殺そうとするの??)
そこに何の躊躇いも感じることはなかった。アルテミシアとイオアンナにエウフェシアに対する罪悪感なんて欠片も感じなかった。全ては、存在しているエウフェシアが悪くて、選ばれたことがそもそも間違いだと言わんばかりだった。
「あなたが、選ばれるなんて何かの間違いよ」
「本当にそれに尽きるわ」
「っ、」
エウフェシアは必死に押さえつけるイオアンナから逃れて、アルテミシアが刺し殺そうとするのを避けていたが、2人がかりで、いつまでも逃げるなんて無理だった。
「エウフェシアのせいで、とんだ赤っ恥をかいたわ。あなたが、あんなに長く試練から目覚めないから、短すぎるって目立つことになったのよ!!」
「本当にそうね。長すぎて、悪目立ちされたら、たまったものじゃないわ」
(そんなの私のせいじゃない)
なのに試練を受けて、この2人はすぐに終えたことに恥をかかされたと思っているようだ。かかせた相手は、エウフェシアだと思っているようだ。
試練を受ける前までは完璧な令嬢として、ちやほやされていた。だから、どちらかが婚約者になるものと見られていた。それは、エウフェシアも同じだったし、2人はお互いが自信に溢れていた。
なのにそうはならなかったのだ。ならないどころか。2人共にただ落とされるだけでなくて、一番負けることはないと思っていたエウフェシアに負けたことが一番堪えてしまったようだ。そんな経験をしたことがなかった2人は、人よりできて当たり前な人たちには、エウフェシアに負けたことが何より汚点として捉えたようだ。
(そんなの私に関係ないじゃない!!)
殺されそうになっているエウフェシアは、試練の世界で抵抗することは殆どしなかったが、今回は必死に抵抗していた。掴めるものは何でも掴んで、投げつけていた。
それが、イオアンナの頭にあたり、血が出始めたことにエウフェシアは焦ってしまった。今まさに殺されそうになっているのに怪我をさせたことに焦ってしまったことで、エウフェシアに隙ができてしまった。
そのせいで、エウフェシアはアルテミシアに突き飛ばされて派手に転んでしまったが、それでもエウフェシアは抵抗をやめることはしなかった。それこそ、ここで終わったらループなんてしないことを本能が知っているかのようにあがらい続けた。
(あれは、現実で起こりうることだったの……? お姉様だけでなくて、イオアンナ様まで行動に出るなんて……。2人して、私を殺そうとするなんて……)
エウフェシアは殺されそうになりながら、そんなことを考えてしまった。鬼の形相をしていて、見目麗しい令嬢たちなんて、どこにもいなかった。いるのは、人間の姿形をした化物がエウフェシアを殺そうとしているように見えた。
同じ人間だと思いたくなかったようだ。それに実の姉に殺されそうになっていることに現実逃避したいのもあったのかも知れない。
抵抗などせずに受け入れたら、すぐに死ねただろうが、そんなことエウフェシアにはできなかった。必死に生きようとしていたエウフェシアは血を流しすぎて薄れゆく意識の中で、これで自分たちはもう一度やり直せるみたいに嬉しそうに笑う2人がいた。
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「Copyright(C)2022-九頭竜坂まほろん」
※小説家になろうにて2022年11月19日昼、日間異世界恋愛ランキング38位、総合59位まで上がった作品です!
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