完璧な姉とその親友より劣る私は、出来損ないだと蔑まれた世界に長居し過ぎたようです。運命の人との幸せは、来世に持ち越します

珠宮さくら

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エウフェシアと婚約した王太子は、自分でエウフェシアと婚約したいと言っておきながら、王太子はイオアンナと密会することをやめることはなかった。

アルテミシアと婚約していた頃は、エウフェシアとは挨拶程度で姉が居ないところでは、話しかけられたのは浮気うんねんの話をされた時牙、初めてだった。

それが、エウフェシアが婚約者となってからは上手く本性を隠していた頃より、王太子はエウフェシアのことを人が見ている時は気にかけてくれていた。

それも、人がいる時だけだった。エウフェシアは婚約者なんかにさせられて、王太子妃となるための勉強をするはめになって、それに終始苛ついていたかというとそうでもなかった。そこに不満はなかった。

新しいことを勉強できることが楽しくて仕方がなかった。学園を姉が卒業するまでの間のことは、もう暗記済みなせいで、もはやエウフェシアの方が姉よりも完璧な令嬢と呼ばれるに相応しいまでになっていたが、それをなぜか誰も認めたがらなかった。

ループするたび、姉妹揃って完璧な令嬢となっている状態でも、エウフェシアだけが出来損ないと呼ばれるのだ。そんなことを言う人たちより、エウフェシアの方ができているのにおかしな話だ。

でも、おかしくなっていたのは、周りだけでなくてエウフェシアもだったようだ。出来損ないと呼ばれるようなことはなくなっている状態なのにそこを追求しようとしなかったのだ。

それよりも、王太子とイオアンナのことの方を気にしていた。いつも、他に何か考えていた気がするが、すり替わるように覚えていることが限られていることにエウフェシアは気づいていなかった。


(どうして、あの2人が密会しているのが広まらないんだろう? 私が、誰かにしたら、変わるのかしら?)


だからといって、お節介なことをしようとは思わなかった。見つめ合って想い合っているだけなのは、唯一変わっていないことだが、どうしてもお人好しになれなかった。

王太子とイオアンナが、どんなに相思相愛で想い合っていたとしても、それをアシストするようなことをしたくなかったのだ。どちらにも、それ程の思い入れはない。

むしろ、散々な目に合わされてきたのだ。幸せになるより、破滅してほしいと思う方がまともなようにすら感じてしまっていた。

だが、感情的に行動することはなかった。


(お姉様も、こうして見てると可哀想よね。完璧だと散々なまでに言われて、ちやほやされていたのが、嘘みたいになってる。婚約者だった王太子の本命にはなれないんだもの。まぁ、なれないからって、ここまで堕ちていく人だとは思わなかったけれど)


だから、ループするにつれて酷くなっていっているようにエウフェシアに思えてならなかったが、色々と派手にやらかすようになっても、エウフェシアのできが悪いからだと言われ続けるのが、変わることはないままだったことも、おかしいが。

それでも、エウフェシアは公爵家から出て行こうとすることはなかったし、できなかったことを覚えてはいなかった。ヘシュキオスとの婚約に抵抗することもなかったと思っているが、本当になかったのかすらエウフェシアは覚えていなかった。

ただ、どうやったら、このループが終わるのかだけが記憶から抜けることはなかった。エウフェシアは気がおかしくなりそうになっていた。いや、もう、おかしくなっていたのかも知れないが、どこがどうおかしいのかすらわからなくなっていた。


(ループするのには理由があるはず。理由を知りたい。でも、そのために思ってもいないことをやって、誰かの肩入れしてまで、この状況から逃れたいとは思わない)


エウフェシアは、自分だけが幸せになることを望んではいなかった。散々なまでにエウフェシアは周りにされて来たのだが、それでも自分1人だけが幸せになる道を選ぼうとはしていなかった。かといって、みんなで地獄に堕ちろなんて思うこともなかった。

なぜか、不思議と自分だけが幸せになることにエウフェシアは物凄い抵抗感があった。


(私が、ここまでお人好しだとは思わなかったわ。普通なら、みんなが不幸になって自分だけの幸せのために動いてもいいはずなのに。どうしてもそう思えない。そんな行動をしたいと思わない)


そんなことを思うようになっても、ループは続いていた。エウフェシアが死ぬことに何の変わりはなかった。

それが、更に酷くなろうとも、エウフェシアは自分に何をさせたいのかとそればかりを考えていたが、それでループが終わるかも知れないことを実行することはなかった。


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