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エウフェシアは死ぬたび、ループしていた。最低な人たちに囲まれながら、みんなエウフェシアが完璧すぎる姉にとってお荷物な妹としか見ていないのは、いつものことになっていた。
何をしても、何もしなくとも、みんなして最終的にエウフェシアのことを利用するのだ。利用されるのは、いつもエウフェシアだけ。全てをエウフェシアのせいにして終わる。
それを忘れることなくエウフェシアは、全て覚えながらループしていた。
(どうして、ループし続けるのよ。さっさと終わりたいわ。こんなの続ける意味があるの? やり直したいと願ったことも、望んでもいないのに。どうして、終わらないのよ)
そんなことを繰り返すうちにエウフェシアは、すっかり笑わなくなっていた。頑張る気力もなくなっていた。
姉が何かと姉妹だからとお揃いにしたがるのも、拒否した。似合う格好しかしなくとも、笑いものにされるのに変わりはなかったが、好きでもない格好をするより、断然よかった。
その分、色々と言われることにはなったが……。
「愛想笑いの一つもできないなんて、あんなのが妹なんてお可哀想に」
「あんなんだから婚約者が、やたらとアルテミシア様に相談に乗ってもらうのよね」
そんなことを言われるようになっていた。わざとエウフェシアに聞こえるように話す周りにうんざりするばかりだった。相変わらず、暇な人たちばかりしかいないようだ。
(相談ね。こっちは婚約なんてしたくなかったのに何で、毎回彼と婚約しなきゃならないのよ。どうして、私が跡継ぎのままで育てられてるんだか。嫌なら養子を取ればいいのに)
両親は、それを決してしなかった。できが悪いと言いながらも、エウフェシアよりもメルクーリ家を任せられるような養子候補がいなかったのだが、それを認めずにエウフェシアが他に行き場がなくなって哀れだからと言わんばかりの態度にもイライラしていた。
ある時、エウフェシアの婚約者となったヘシュキオスが、姉に言い寄っていると騒がれることになった。世の男たちは、みんな見目の麗しい姉のような令嬢こそ、隣に立たせたい女性なのだろう。見た目がどんなに良くとも中身というか、腹の中が真っ黒いとわかっても側に居てほしいと思う者もいるだろうが、この時のヘシュキオスは身の程知らずなことをしていると騒がれたのだ。
それもこれも、エウフェシアが婚約者のことを放置していてフォローすらしていないせいで、散々なことを言われることに耐えかねてのことのようだと思われていた。
でも、ヘシュキオスは過ぎたるものを得たように思われているのにそれで飽き足らず、手が届くところにいるのをいいことに言い寄り始めて、アルテミシアも満更ではなさそうに浮気を始めたのだ。
(それもこれも、私が何もしてないせいって言われているようだけど。それも、変よね。ループするたび、何もしないことにしてるんだもの。そもそも、お姉様が相手にしなきゃいいのに。前まで、完璧な令嬢らしいことしかしない人だった。なのに王太子も、面倒そうにしているのが時折見られるようになってるようだから、お姉様も余裕がなくなって来てるってことのようだけど、それも私のせいって、変よね)
そんなことを頑張るくらいなら、ヘシュキオスにはできなさ過ぎる勉強をしてほしいところだが、彼は勘違いを拗らせてモテていると思ったようだ。侯爵家のお金ではなくて、エウフェシアの家のお金でアルテミシアだけでなくて、他の令嬢たちとも好き勝手を始めて、浮気相手に貢いで回っているのにモテていると本気で思っているのだから、手におえない。
それを取り繕うためにアルテミシアが相手をしてやっているみたいにしているようだが、王太子と2人で過ごすことも以前よりもだいぶ減って来ているのにエウフェシアだけのせいではないはずだ。
(これも、私が婚約者としての役目や公爵家の娘としてのあれやこれやを放棄しているせいってだけではなさそうなのよね。何だか、ループするたび、酷さが浮き彫りになってきてる。なのに終わらない。どうなっているの?)
もっとも、浮気相手の令嬢たちは、好きなものを好きなだけ買ってもらえるから、ヘシュキオスの側にいるだけで浮気しているつもりは欠片もなかったようだ。側にいる間、ヘシュキオスの退屈な話を聞いてさえいればいいのだ。彼の話すことに賛同していなくとも、頷いているだけで好きなものが手に入るのだから大したことはないと思われたようだ。
(一番最初の時が、マシだったことを思い知る日が来るとは思わなかったわ。まぁ、最初から色々と勘違いしていたから、こんな人だったのよね。……物凄く残念な人がいたものだわ。そして、それが成長しても酷さがパワーアップしていくって、ある意味凄いわ)
何度も、何度も、婚約者のみならず、姉の最低な部分までも見るはめになって、エウフェシアはげんなりしていた。
酷くなっても、よくならないのだ。そんな世界のことを全部覚えている状態となっているのは、エウフェシアだけ。そんな世界に何の未練もないのに終わらない理由がわからないままだった。
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