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しおりを挟むリュシエンヌが婚約したと知ってからのアリーは、荒れに荒れることになった。
幼なじみのエリーセが見かねて何かと気にかけているうちにエーヴァウトが、婚約を解消しようと彼女に告げることになったのも、割とすぐのことだった。
「え? 何で?」
「殿下のことをそれだけ気にかけているんだ。それが答えだと思う。解消すれば、誰も何も言わないでわかってくれるさ」
「いや、え? ちょっと待って。私たちは、ただの幼なじみだって、前から言ってるよね?」
「それは、建前だろ。もう、わかっている」
エリーセは、いや何もわかってないと言いたかったが、アリーが何に荒れていて、それに加担してしまったことで何かと気にかけているだけにすぎないエリーセは、誤解なのだと言えなかったのだ。言ってしまえば、全部を話さないといけなくなってしまう。
周りも、何かとエリーセがアリーを支えようとしているように見えたようだ。彼の母親も、エリーセなら安心だと言い出してしまい、二人は本人たちが困惑している間に婚約することになってしまっていた。
「……信じられない」
「それは、こっちの台詞だ」
婚約してから、二人は何かと喧嘩するようになった。
それでも、周りは勘違いと誤解をしたままとなり、婚約を破棄することはできないままとなった。
「相変わらず、仲の悪いふりをなさっているようね」
「何で、そんなふりをなさっているのかしら?」
他の令嬢の言葉にリュシエンヌは、素朴な疑問を口にした。
「照れ隠しじゃないかしらね」
「それに長年、幼なじみを理由にして何かとこそこそ会っていらしたのをバレていないと思っているのかもしれないわ」
「そうそう。何でも、図書館の学習室で、密会していたって話を聞いたわ。本当なの?」
「みたいよ」
リュシエンヌは、それを聞いて目をパチクリさせた。自分もしていたが、留学する前によく利用していたのだろうと思っていた。それこそ、通りで慣れているわけだとすら思って苦笑してしまっていた。
それこそ、ここにも誤解があった。リュシエンヌとの密会を別の方向に操作した人物がいたのだが、その話をしている面々が気づくことはなかったのだ。
それをしていたのは、ヴィルベルトだった。
前世で、相思相愛なのに邪魔をした面々のことを思い出して、きっちり仕返しをしたのだ。
それこそ、今世のことでリュシエンヌがされたことにも仕返しをしたかったが、ジスカールではヴィルベルトが何かせずとも大変なことになっていて、何かせずとも散々なことになっているのだ。
リュシエンヌの生みの親は、リュシエンヌを養子に出して後悔することになったようだ。跡継ぎを探し回ったが、親戚からは素気なくされることになり、立ち行かなくなって爵位を返上して田舎に引っ込んだのだ。
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