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しおりを挟むヴィルベルトは、王妹の息子だったようだ。つまり、アリーとは従兄弟同士だったらしい。
「は? え? 婚約したのか?」
「そうなんだ。お互い出会った瞬間に一目惚れをしたんだ」
リュシエンヌをアリーに紹介したのは、ヴィルベルトの意趣返しのように思えた。
留学している間に図鑑を貸してくれて、何かとよくしてくれていたとリュシエンヌが話したことで、とんとん拍子で婚約してから、そんなことをしたのだ。
「急だな」
「運命を感じずにはいられなかったんだ。お互いが出会った途端、瞳の色が入れ替わるように変化したんだ」
ヴィルベルトとリュシエンヌは、お互いの家族に結婚したいと言いたかったのだが、前世の話をしてもすんなり受け入れてはもらうのは難しいだろうと婚約したいと話すことにした時にその話をしたのだ。
すると運命の人に違いないと女性陣は大いに盛り上がったのだ。そこから、婚約するまであっという間のことだった。
「っ、そんなことがあるんだな」
「僕たちも、驚いているよ」
アリーは、挙動不審になりながら、用事を思い出したとそそくさといなくなるのも、すぐだった。
ヴィルベルトは、何とも言えない顔をして、その背中を見ていた。
そんな風にそそくさといなくなったのは、彼だけではなかった。エリーセも、物凄く驚いたのだ。
「え?!」
「そんなに驚くこと?」
「あー、いや、うん。だって、急だったから」
「確かに急展開かも知れないわね」
でも、お互いの瞳の色が変わったことやらを言うと何とも言えない顔をしていた。
「それとお礼を言っていなかった。リュシエンヌのことを気にかけてくれていたようで、感謝する」
「っ、」
「?」
「おや? 聞いていないのか? 君を公爵家の養子にしたら、どうかと動いてくれていたのは、彼女の家なんだ。婚約者の遠縁だと知って動いてくれていたようだ」
「そうなんですか?」
「えっと、その、小耳に挟んだことをちょろっと両親に話しただけで、大したことは……」
「いいえ。エリーセ様のおかげです。知らずにいたとはいえ、申し訳ありません。本当にありがとうございます。こうして、自由になれて、運命の人と出会えました。全て、あなたのおかげよ」
「っ、」
照れたのか。エリーセは、気にしないでと言うだけで、そそくさといなくなった。
「?」
「気にしなくていいよ」
「ヴィルベルト様」
「ん?」
「とても、幸せだわ」
リュシエンヌの言葉にヴィルベルトも頷いていた。
「僕もだ」
こうして、二人は前世で叶えられなかったものを全て手にすることになった。
リュシエンヌの結婚式には、ジスカールでしか咲かないと言われ続けた花を使ったブーケを手にしてネーデルの教会で結婚をした。
運命の人とめぐり合って、お互いの瞳の色が変化することになった二人をその花が認めて祝福したのだと噂されることになったのも、すぐだった。
それこそ、リュシエンヌが意識すれば、その花はどこでも咲くようになったが、結婚式でそれをブーケにしてからは咲かせることはしなかった。もう目印となる花が必要なくなったことが大きかった。
リュシエンヌたちは笑顔溢れる幸せな毎日を送ることになり、いつ見かけても仲睦まじくしていて、あの花の祝福を受けたからだと言われ続けることになって、羨ましがれる人生を最愛の人と謳歌することができたのだった。
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