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しおりを挟むエリーセと同じく留学していた子息が学園に来ると聞いて、リュシエンヌは気になっていた。
あの花のことをよく知っていて、その花の側に探している女性がいると言っていたことが頭から離れなくなっていた。
もしかすると昔に会ったのは、女の子ではなくて、男の子だったのではないかと思い始めていて、ドキドキしていた。
そんな時に風が吹き荒れた。その風に髪を抑えて目を閉じた。
そして、目を開けた先に人がいたのだ。
「「っ!?」」
あちらも、目を見開いていた。金色の髪に煌めくような青い瞳をしている青年が立っていたのだ。
あちらも、リュシエンヌの姿を見て、何とも言えない顔をしたのだ。まるで、時が止まったようだった。全身の血が沸き立つようだった。お互いの何かが歓喜していた。
「「やっと会えた」」
照らし合わせたようにそう言葉にしていた。
いつの間にかリュシエンヌの瞳の色は緑から青に変化していた。
「不思議だ。さっきまで、君の瞳は緑色に見えていたのに。今は、あの花のような青い瞳をしている」
「え?」
そう言われて、リュシエンヌは彼の瞳を見つめた。
「あなたこそ、さっきまで青い瞳をしていたのに。今は緑色をしているわ」
「なら、お互いが会えたからかも知れないな。僕は、緑が好きだから」
「私は青い色が好きよ。あなたの青い瞳を思っていた。あなたに会うまで、誰を探していたかも忘れてしまっていたけど」
「僕もだ。生まれ変わって、君を見つけると言ったのに。あの花が目印だと話していたのまでは覚えていたんだ。あちらにいると思って探しに行ったのだけど、……花がどこにも咲いてなくて、どれだけ心配したか」
彼に抱きしめられてリュシエンヌは夢心地だった。
「君がいなくなっていたから、咲いていなかったのかな?」
「私の心が、何を求めていたかを忘れかけたからかも知れないわ」
あの花を目印にして、リュシエンヌは彼に探してほしいと前世言ったのを今ははっきり覚えている。
その時、一緒になることを邪魔したのも、ナディーヌによく似た者とそして王子に似た男の人と他にもいた気がする。
あの時は王太子だったが、同じような容姿をしているせいで、リュシエンヌの前世だった頃に勘違いされて、好きな子息と婚約できずに別れることになってしまったのだ。
王子と同じように身分を隠して面白がっていたのを思い出して、だから嫌悪感を覚えたのだろう。
そこから、一気に心が離れることになったのだから、よかったとしか言えない。
「そうだ。名乗っていなかった。僕は、ヴィルベルト・オラニエ」
「私は、リュシエンヌ・シュトルベルクと言います」
「リュシエンヌ。とても素敵な名前だね。今世の君の名前を知れてこの上なく嬉しいよ」
「私もです」
「リュシエンヌ。前世で果たせなかった約束を果たさせてくれ。必ず、君を幸せにする。私と結婚してくれ」
「はい。喜んで」
リュシエンヌたちは、抱きしめあって口づけをかわした。
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